後編
誰でも子供の頃なら、一度くらい秘密基地というものを作ったことがあるだろう。
無論、程度の差こそあれ、それが本当の意味の基地として機能するはずがなく、言うならば子供たちの溜まり場として、あるいは大人の目から離れる為の緊急避難先として機能していたはずだ。それは長島達の秘密基地も例外に漏れず、そのお座なりさ加減も同様だった。地元商店街の工務店やリサイクルショップから不要になったトタンやベニヤ板や木材を貰ってきて組み立てた掘っ立て小屋は、しかし存外な強さを誇っており、築六年は立つというのに未だ健在だった。特にここ数年はろくに手入れしていないのにも関わらず、である。
「あの頃のままって言うのも感慨深いな………」
じりじりと焦がすような夏の西日を避けるように、木々の下を歩きつつ淡く微笑んで呟いたのは秋山だ。身体がほぼ成長しきった今となっては、随分と小さく感じる掘っ立て小屋を一歩下がって眺めており、同じように眺めていた長島や飛崎も苦笑して同意した。
秘密基地と言うのは本人達にとっては言葉そのままに秘密の基地ではあるが、当然建設場所の確保という側面に関して最も頭を悩ますことになる。子供の足で行けて、大人に見つからず、且つ出来る限り広い場所がいい―――新社会人の物件探しのように条件を付けようと思えばいくらでも付けれるが、ままならぬ子供の身ではどうしても妥協しなければならない面が出てくる。子供達はそれに折り合いをつけて、あるいは諦めることによって一つ成長するのである。さて、では彼等の場合はどうだったかと言えば、立地条件に恵まれていたというべきか。
身を寄せていた児童養護施設より2キロ圏内にあるのは山と太平洋ぐらいで、お世辞にも都会とはいえなかった。裏を返せば土地が無駄に余っているということの証左であり、それが彼等に味方した。観光地といえば精々北側にあるカントリークラブぐらいなもので、南側に位置するこちらには幾つか工場がある程度で影響がないし、近くの公園のお陰で山の奥までは人が入ってこない。
結果として、あの頃に作った秘密基地は未だ誰にも発見されること無く存在していた。木々には囲まれているが、そこだけは丁度広場のように開けており、南を向けば太平洋を望めるぐらいには自然に整地されていた。
かつて、彼等はここを遊び場兼溜まり場にしていた。掘っ立て小屋の中に入って色々漁ってみると、ベーゴマやメンコ、パチンコ等のレトロチックな玩具に始まり、随分古い週刊誌やエロ本が山積していた。書籍関係は湿気と埃に塗れてまさに『川辺で拾った』みたいになっており、何故か妙なエロスを長嶋は感じた。
「―――で?お前さんは何を悩んでいるんだ?」
急な飛崎の問い掛けに、長嶋は咳払いをしつつ居住まいを正す。
「え?べ、別に汚れた週刊誌のグラビアとか濡れたエロ本にそこはかとないエロスを感じたわけじゃないよ?ちょっとパリパリしてるのとかばっちぃはずなのに何でこんなドキドキするんだろうとか思ってないよ?ホントだよ?」
「コウ、儂はこいつの妄想力は思春期真っ盛りの中学生以上だと思うのだがどうだろうか」
「何を阿呆な事を言っているんだレン。―――概ね昔からこんな感じだろう?」
「あ、相変わらず遠慮ないね君達!?」
今に始まったことではないだろう、と親友二人はスルーして。
「まぁ、ともあれじゃ。―――儂はな、何厄介事を抱え込んでいるんだ、と聞いている」
「………!」
本題を持ってくる。
返答に窮す。問われた意味を理解はするが、そこまで顔に出ていただろうかと眉間にシワを寄せてみるものの。
「気づかないと思ったか?」
秋山の追撃に、長嶋は観念して肩を竦めた。
「―――二人には敵わないなぁ………」
この二人とは長い付き合いだ。ここ数年は確かに進路の関係から疎遠にはなったが、内面が劇的に変化したわけではない。いや、地元から離れなかっただけに特に長嶋の変化は数年単位でも極々僅かと言ってもいいだろう。
であるのならば、下手に隠し事をするだけ無駄なのかもしれない。寧ろ、積極的にこちらから話してみて、アドバイスを貰うのもいいだろう。長年の付き合いから言って、直ぐに適切なアドバイスをくれるはずだ。だから長嶋は軽く頷いて。
「あのさ、僕はどうすればいいと思う?」
「抽象的すぎて分からん。やり直し」
「右に同じく」
即座にダメ出しされた。
「うん君達は本当に相変わらず身内にはケッコー酷いよね」
いや今のは自分の説明も悪かったかなー、と反省しつつ、長嶋は手にしていた汚れたエロ本を小屋の中に投げ込み、立ち上がって海岸線を見やる。既に日が沈みかけている空は海も巻き込んでオレンジ色に染め上げている。海面に反射してきらきらと光るそれを眩しく感じ、額の上に手を翳してから言葉を紡いだ。
「レン君とコウ君はそれぞれ才能を活かせる場があるじゃない?でも、僕には無くってさ」
それは、数時間前にも考えたことだ。
自分は空っぽだと。別の才能を探すのには遅すぎ、生活のために働いている以上、時間も潤沢にある訳でもない。では、拳一つで何かを為せるのかと言えばそうでもない。
「別に、今の仕事に不満を持ってるわけじゃないよ。しがない土建屋だけどさ、親方も先輩達も気性は荒いけどいい人達だし、住む場所だってちゃんとある。給料だって悪くはないから食べていける。特別、不満があるわけじゃないんだ」
何しろ五体満足であるなら特別必要な物はない。純粋な肉体労働である分、少なくとも新卒のデスクワーカーよりかは間違いなく給料はいいだろう。就職氷河期である事を考慮すると、破格と言ってもいい。元々、長嶋自身は体を動かすことは嫌いじゃないし、手に職も出来る。人生経験を積む、という面では決して悪くない環境ではあるのだ。
ただ―――。
「だけどさ、このままでいいのかって、ふとした時に思うんだよ」
いざ他人と自分を見比べてみると、どうしても不安になる。比較対象が身内になればその傾向は顕著になっていく。
今の環境は、確かに心地いい。だが、それは何時まで続くのだろうか。五年か、十年か。もしもそこまで続けたとして、その頃の親友達は何をやっているのだろうか。自分は時を止めたように同じ日常を繰り返すだけ。その間に才能と努力と時間を惜しみなくつぎ込んだこの二人は何処まで先に行っているのか。
「君達は努力と才能と環境が全て噛み合って、自分の夢に近づいて行ってる。誤解しないでほしいんだけど、それは素直に凄いって思ってるし頑張れって応援もしてる。だけど―――」
言葉を切って、長嶋は掘っ立て小屋の壁に背中を預ける二人を見る。
「しょうもない嫉妬心なんだ、ホント。自分でもよく分かってないぐらい。僕だけが夢がなくて、どうすればいいのか分からないんだ」
そう、これは嫉妬だ。
時代が違えば、立場は違ったはずだ。例えば戦時中だったら。例えば戦国時代だったら。芸能関係は何時の時代も滅亡こそしないが、一時的に衰退はする。物騒になれば、その分衰えるし、そんな世の中ならば自分だって日の目を見る事はあるだろうと夢想する。
時代が悪いんだ、と責任転嫁して脚光を浴びつつある親友達を妬む。最低だ、と自覚は出来ているがどうにも上手くいかない。なまじ距離が近すぎたのだ。これが単なるクラスメイトだったら、あぁそう言う人間なんだ、と諦めもついただろうに。もしくは、嫉妬心をむき出しにして無責任に噛み付くことも出来ただろうに。
長嶋武雄は、飛崎連時と秋山光一との距離が近すぎた。三人は同じく保護者がいないと言う状況を抱え、それぞれに悲惨な過去を抱えた。特に飛崎と秋山のそれを自分とは比較にならないと長嶋は考えている。そして文字通り血反吐を吐いてトラウマに抗い、自ら道を定めたことを知っている。何しろ間近で見てきたのだ。そんな彼等を凄いと尊敬できるし、素直に憧れてもいる。だが度が過ぎれば嫉妬にだって反転もするだろう。
彼等は出来るのに、どうして自分には出来ないんだろう。
凡人だから、才能がないから。そうやって大抵の人間が折り合いをつけていくのに対し、長嶋はそれが出来なかった。当然だ。自らのトラウマを克服していく才能ある者達が身近にいるのだ。才能ある者達であっても―――いや、だからこそ凡人には想像できない傷を抱え、それでも前を向く本当の強者を知っているのだ。間違っても思考の放棄など出来よう筈がない。そんな恥知らずな思考回路は備えていない。
だから重ねて思うのだ。どうして自分には、出来ないのだろうかと。
客観的に見れば、長嶋武雄という少年は何につけても実直過ぎたのだろう。世間一般では概ね美徳とされるそれは、度が過ぎれば自らさえ傷つける諸刃の剣と成り代わる。『オヤナシ』だとか『可哀想』だとか世間から蔑まれたり無神経に哀れまれたりしないよう、とかく舐められない為に掲げた信条が、故にこそ彼を縛り付けてしまうのだ。適度に気を抜く生き方をしていればこうも悩むこともなかっただろう。
だからそんな彼の心情を汲み取って―――。
「何を言うかと思えばそんな事か」
彼等はそんな長嶋の思いを笑い飛ばす。
それは嘲笑ではない。見下しているわけでもない。ただ、勇気づけるように爽快に笑い飛ばしているのだ。
「相変わらず武雄は変なところで女々しいな」
「わ、理解ってるよそんな事は!でもどうすればいいのか分からなくて―――」
「あのなぁ、それを儂等が経験しなかったと思うのか?」
「え―――?」
思いも寄らない返答に、長嶋は言葉を詰めた。呆けた表情を晒す彼に、飛崎が見せたのは自身の左手だ。
「知ってんだろ?儂は一度、全部に挫折して自ら左手を壊した。自分の美学を見失ったんだよ」
飛崎は長嶋に出会う前―――まだ、親戚筋にたらい回しにされていた頃、親戚から求められるピアニストとしての有り様に嫌気が差して左手を砕いた。後遺症こそ残らなかったが、自傷行為をする養子などと気味悪がられ、結局祖母の伝手を頼って児童福祉施設に流れ着いた。
「俺は母さんを喪って親父を恨むことしか知らなかった」
飛崎に続いたのは秋山だ。
とある有名俳優の隠し子である秋山は母子家庭で育ち、それ故に金銭的に苦労をしていたらしい。だが、秋山自身はそれに大きな不満はなかったし母を捨てた父など気にも留めていなかった。だが、ある日起こった事故で彼の母は命を落とした。それは確かに事故だった。世間的にもそう処理されたが―――彼だけは知っているのだ。その事故に、父親が関わっていることを。にも関わらず、今も法的な裁きを受けてはいない。
だから。
「レンはともかく、俺は時間が掛かったさ。あのクソ親父、無駄に有名だからテレビに映る度にどうやって殺してやろうかと思ってたしなぁ。物理的にも、社会的にも」
「おいコウ、儂だってリハビリに相当時間を掛けたぞ」
珍しくおちゃらけて告げる秋山に、むくれたように飛崎は訂正を求めた。それに対し秋山は悪い、と軽く謝罪を入れてから長嶋の方を向く。
「ともあれ、俺達だって目的も手段はなかった。あったのは復讐心と」
「虚脱感、だな。あの頃は、我が事ながら情けなくなるぐらいに迷走していたわ」
多感な時期をそんな負の感情で塗り潰してしまえば、当然その後の人格形成に多大な影響が出る。しかし彼等はそんな負の片鱗など微塵も滲ませてはいない。極々普通の少年だ。一般的に不幸だとか呼ばれる経験をしていても歪まず、曲がらず、何故彼等は今も前を向いて進めるのか。
「だがどっかの馬鹿が騒がしかったお陰で、ずっと迷っている訳にもいかなかった。そりゃ根底にあるものは変えられないかもしれないが、少しは物の見方を変えてみようって気にはなった」
自分達だって最初は空っぽだったのだ、と彼等は言う。その器が負の感情で満たされる前に、どこかのお節介が引っ掻き回した。
結果として、二人の物の見方は少しずつ変容していく事になる。復讐心や虚脱感に満たされた厭世的なものではなく、それらさえ認め、飲み下し自分の物と
「儂は実家とは絶縁し、飛崎連時個人で高みに登る」
「俺は俳優として上り詰め、クソ親父を引きずり落とす」
やろうとしていることは、昔も今もあまり変わらないかもしれない。ただ、決定的に違うことが一つだけあるのだ。
「儂らはその先を見るようになったんだ。タケが騒がしかったからな。そうしないと、いつかその場所に至った時、更にその先を生きて行けん気がして、な」
「本当、気持ちを沈めてる暇さえなかったからな。あっちこっち引きずり回しやがって」
二人に軽く小突かれる長嶋は、あの頃の自分を顧みて言葉を詰める。
確かにあの頃の自分と言えば、同い年の友達が所内にいなかったため、少しばかり居づらいという気持ちがあった。だから、同い年で同性である彼等が入ってきたことは不謹慎ながらも嬉しく思ったのだ。所員から同い年だから良くしてやれとは言い含められたが、よくよく考えれば心に傷を負って自閉症一歩手前まで来ていた人間を文字通り実力行使で引きずりだしたのはどうなのだろうか。
「あの頃の俺達も空っぽだったんだよ。いっつも暗いことばっか考えてな、これからどうすればいいのか分からない、どうしていいのかも分からない。一人でいたら、きっと耐え切れなかったと思う」
秋山が苦笑し、飛崎が頷く。
「夢がないならそれでもいいだろう。目標がなくたってそれでもいいと儂は思う。所詮、そんなもの人生の余録よ。大事なのは今の自分がどうしたいか、どうするべきなのか迷うことだ。儂らはそれを抜けた先に、今邁進しておるこの道を見つけた。本当に、ただそれだけだ」
だから焦る必要はない、と彼等は言った。千里の道も一歩から、という言葉があるように時間は掛かってもいいのだと。迷うこともまた歩みであり、それさえ止めることさえ無ければいつか何かに辿り着くのだと。
恐ろしく安っぽい言葉だ。説教として使い古されていて、酷く手垢にまみれているといってもいい。これが何も知らない赤の他人の台詞なら、本気で鼻で笑っていただろう。成功しているお前達に何が分かるのだ、と卑屈に一蹴していたに違いない。
だが、それを否定することは他の誰でもない、長嶋武雄だからこそ出来はしない。何故なら目の前の彼等はそうやって自分の道を作り上げていて、長嶋はそれを誰よりも近くで見ていたのだから。躓いても転んでも、歯を食いしばって立ち上がっていく彼等は何処までも先駆者で、そんな彼等の言葉だからこそ長島は信じることが出来た。
「全く、君達は―――」
俯きがちに、頭をガリガリと掻く。
素直に礼を言いたくはない。恥ずかしいとか気まずいとか色々あるけれど、それは自分達の流儀ではない。だから長嶋はいつものように軽い冗談を口にして―――。
「こんな所で流行りの歌みたいなこと言って、恥ずかしくないのかい?」
『うっさいこの童貞』
ダメージが倍になって反射してきた。
「ひっど!?レン君はともかくコウ君だって童貞じゃないか!大人の階段登ってないんでしょ!?君もまだシンデレラだよねっ!?」
「そう言えば最近、同じ劇団の女の子に食事に誘われていてな………」
「裏切り者―――!ここにも裏切り者がっ!!」
その上、敵の一人が容赦なく追撃してきた。まぁ、このルックスならいつ彼女の一人や二人出来てもおかしくはないだろうが、そうなると三人の中で長嶋が一番生物学的に遅れを取ることとなる。
このままではマズイ早く何とか彼女を作らないとでも出会いがないよぅ!と半狂乱に陥る長嶋に、不意に飛崎が多分に哀れみの色を帯びた優しい眼差しを向けた。
「むさ苦しい職場なのじゃろう?タケ。―――可哀想に」
「本当にな………まさか男に囲まれているのが気持ち良くなっていないだろうな?」
「諦めろコウ。タケはもう………」
「そう、か………開通していたか………」
「不穏なこと言うな―――!僕はまだ処女だ―――!!」
「男が処女とかマジ気持ち悪いな」
「そうだなぁ。―――つまり開通予定がある、と」
「あるか―――!!」
叫んでからはた、と気づく。気がついたらシリアスな会話がいつも通りのバ会話になっている。しかも図らずもいつものように弄られている。
「全く君達はいつもいつも人をネタにして!いじめかいこれは!?」
「いや、弄ってるだけだ」
「基本、弄られて輝くキャラよな。タケは」
思い出したように不満をぶつけてみるが、当人達はその自覚は無く軽く笑っている。おのれいつか仕返ししちゃる、と長嶋が胸の奥で固く誓いを立てた。
「ま、元気が出たようでなによりだ。変に考え込んだ武雄の顔は珍獣みたいで見るに耐えん」
「珍しく大人しくしておるから変なもんでも拾い食いしたのかと思ったわ」
「全く、君達は―――」
性懲りもなく再び弄ろうとする二人に、長嶋が照れ隠し混じりに文句を言おうとした時だった。
「む―――?何か聞こえんか?」
不意に、飛崎が首を傾げて虚空を見上げた。
「ん?いや俺は別に………いや、待て」
「聞こえる、ね………なんだろう、これ。昔やった聴力検査を思い出すけど」
釣られるように耳を澄ませてみると、確かに木々と風のざわめきに混じって何か電子音のような音が聞こえる。
唐突だった。だが、何故か妙に嫌な胸騒ぎがした。
それは一定の音程だ。耳鳴りのようなその音は、単体では気圧の影響か何かと思ってしまう程だが、徐々に音量を上げてくると不自然に思え、更には言い様のない不快感が沸き上がってくる。
その上―――。
「う、ぉ………!」
一気に音量を上げた。
「な、何じゃこりゃっ!?」
「いたたたたたたっ!?」
最早測ったり何かに例えることさえ馬鹿らしいほどの凄まじい大音量をその身に受け、三人はその場に倒れこんだ。
音とは即ち振動である。物理現象である以上、それを過剰に受けてしまえば受け皿である肉体はダメージを受けるし、度が過ぎれば鼓膜が破れる。耳を塞いでも変わらず鳴り響くこの音は鼓膜が破れてしまいそうな程に大きいが、今はまだ三半規管が狂うだけで済んでいる。しかしながら頭の中を引っ掻き回されるような大音量と、内蔵を締め付けられ、胃の内容物が逆流しそうな気持ち悪さが何とも言えない。人によっては発狂しそうな程に耐え難いだろう。
三人が土と埃だらけになりながら地面を転げまわる事おおよそ十五秒。永遠にさえ思えた怪音波は始まった時と同じ唐突さでゆっくりと音量を下げ、消えていった。
「お、収まった………?」
「一体何だったんだ………」
まだ頭そのものが揺れているような幻覚を感じつつ、三人は周囲を見回した。特別変わった様子はない。太平洋を望める自然の展望台。夕日色に空も大地も木々も染め上げられたその場所は変わりなく―――いや、その中に異物があった。
「おい………何だ?あれ………」
秋山の視線の先、夕日を背に影があった。人影ではない。中空に漂うそれは、まるで黒い毛玉のように丸く蠢いて存在していた。誤って絵画に落とした黒い絵の具とでも表現すべきか。アンバーに染まる世界にポツリと現れたそれは、凄まじく違和感を放ち―――三人の理解の範疇から外れていた。
やがてその黒い毛玉のような黒い球体は子供がこねくり回す粘土のように回転し、拉げ、潰れ、徐々に形を作っていく。
「ゆ、夢か幻か………ど、どっちにしても、激しく嫌な予感がするぞ、オイ………」
飛崎の引き攣った声に長島と秋山は心から同意した。どう考えても科学的、理論的に説明が付きそうにない。ドッキリかマジモノの超常現象かと選択を迫られれば、間違いなく後者を選んでしまう程に常識からかけ離れた光景だ。
「―――熊、じゃない、よね?」
「そ、そっちの方が優しく見えるのは俺の気のせいか?」
黒い塊から形が出来上がっていく。ぼんやりと理解できるのは、四足歩行の獣っぽい形であることか。そうまで曖昧な表現になるのは、その黒い塊は固形物というには輪郭が陽炎のように揺らめいていて、物理的なイメージがないのだ。
「冗談じゃないよ。こっち見てる………!」
身体の次は、顔と思わしき部分に黄金の瞳が出現した。ネコ科の動物のように切れ長の目に、漆黒の瞳孔。異常なのは、その大きさだ。体高でさえ二メートル後半から三メートルはある。同じネコ科最大のライガーの約二倍だ。立ち上がると、六メートルくらいになるのではないだろうか。
「―――逃げるぞ。全力で山を下る」
互いに睨み合い、と言うか膠着状態の中で、秋山が冷静に呟き、長嶋は頬を引き攣らせた。
「で、でも獣相手に走るのは………!」
「アレが獣に見えるか?タケ。―――間違いなくそれより獰猛そうだぞ」
「レンの言う通りだ。どう考えても定石が通用しそうにないから、力技で乗り切るしかない」
「意外と冷静だね君達………!」
「はっはっは。―――一度舞台に上がれば頼れるのは自分の腕だけだからな」
「俺も役者だからな。頭の切り替えにはちょいとばかし自信がある」
この芸術肌共は、異常事態に際しても何とも頼りになるものだ。
通常、山などで熊などの野生動物に出くわした場合、目を逸らさずにゆっくりと姿が見えなくなるまで後退するのが最良とされる。すぐさま走って逃げると本能を刺激され追いかけてくるし、死んだふりなど以ての外だ。検死がてら喰われる。
だが、目の前のこれは明らかに動物の類ではない。見た目からしてそう見えなくもないが、こんな不定形な生き物は見たこともない。であるなら成程、確かに秋山の言う通り定石は通用しないと考えてもよさそうだ。
「車まで逃げれば何とかなる、よね」
「ああ。―――レン、
「うむり。差し当たっては110番だな」
「そういう事。―――3」
目を逸らさず、三人は短く段取りを確認する。こういう時、付き合いが長いと余分なやり取りをしないで済む。
「―――2」
三人はその不思議生物から目を逸らさずに、身構える。秋山はそのままの更に身を屈めて、地面を弄る。
「―――1」
指先が硬い感触に触れた。小石か何かだろう。迷わずそれを手に取る。そして―――。
「―――走れっ!!」
叫ぶと同時、黒い獣の真横へ向かって投げ、腕を振り切った反動を利用して全速力で駆け出した。石を投げて一瞬作った隙を逃さない。三人は脇目もふらず山を駆け下りる。木々の隙間を縫うようにして疾走り、何度もここに来る度に踏み固めた道を蹴り飛ばす。三人にとって、ここは歩き慣れた庭だ。そうそう追いつかれることはないが。
「追ってくるぞ!?」
「そりゃそうだろうよ!なんか見た目獣っぽいしね!!」
僅かに振り返ってみると、黒い塊が上下して木々を避けながら追ってくる。慣れない道故か、若干まごついている様子が見えるが、やはり獣の姿だけあってその巨体に似合わず―――いや、ストライドを考えると正しいのか―――非常に俊敏だ。間違いなく、直線距離では勝ち目がない。
しかし、彼らも何も考えていないわけではない。勝手知ったる庭であるが故に、地形はしっかり把握している。
「だが―――狙い通りだ!」
「コケおった!?」
秋山と飛崎の歓声にもう一度後ろを振り返ってみると、黒い塊が回転して背中から木に身体を打ち付けていた。
「四足歩行の獣はな!急斜面を!登るのは得意だが!降りるのは苦手なんだ!!」
「凄いねコウ君!一体何処でそんな知識を!?」
「天才テレビ君!!」
ああそう言えばそんな番組も施設のチビどもと一緒に見てたっけなぁ、と長嶋は感心しながら思い出していた。長い人生、何が何処で役立つか分からないものだ。
「ちぃっ!圏外じゃ!こんなことなら希虹と同じフツーの携帯にすればよかったわ!ようわからんがiモードとかその辺!!」
「なんだっていい!まずは逃げるのが先決だ!急げ!」
少し余裕が出来たためか、全力疾走しながらPHSを弄っていた飛崎を秋山が窘める。
(でも、これなら逃げ切れるよね!)
並走しながら長嶋は少しだけ安堵していた。どうやら相手は獣らしくダウンヒルを苦手としているようだ。幾ら直線距離を速く走ることが出来ても、その速度をコントロール出来ないようでは宝の持ち腐れである。こちらとて下りがそう速い訳ではないが、地元である以上、土地勘が味方をする。焦る心を上手く制御して、普段通りに駆け下りればこの場もどうにか切り抜けれるだろう。
大丈夫だ、このまま逃げられる。転んだ獣は、立ち上がれても少なからずダメージを負っているはずで、それを立て直しながら更なる追撃などしてこないだろう。
そう思って、後方を確認する。直後。
「っ―――!?」
長嶋は信じられない光景を見た。
そこに獣はいなかった。体長六メートルはある身体も、一足が人の頭ほどにあるのではと思う程大きい四足もだ。確かに、そこに影で出来た獣はいなかった。
代わりに―――人影がいた。
そう、人影だ。先程の獣の体高から半分ぐらいの大きさしか無いその人影は、乱雑に生えた木々の幹を蹴り、三角飛びの要領でこちらに肉薄してくる。まずい、と判断する。速度が尋常ではない。最早逃げる逃げないの問題では無くなった。この一瞬を―――突撃を避けれるか避けれないかの瀬戸際だ。こんな思考している時間すら惜しい。
「レン君コウ君避けて!!」
叫びながら長嶋は前方に向かって身を投げる。ざり、と不快な感触とともに左肩に痛みが走った。視界と意識が空転する。下り坂で咄嗟とはいえ前に身を投げれば当然転がり落ちる。幸い、大きめの木の幹にぶつかる形で回転は止まったが、衝撃と痛みと転がったことによる三半規管の撹拌で、一瞬だけ現実と隔絶する。即座に五感で情報を収集、構築、理解する。
「―――っ!?」
見上げるようにした視界の先、山の陰にあって一足早く黄昏に染まるその場所で―――異質な赤があった。
血だ。
人間の心臓は、高い圧力で体中に血液を送り出している。静脈ならばともかく、動脈を断ち切られると血液は圧力に押し出され、瞬間的に噴水のように吹き出てしまう。返り血、あるいは血柱と言う表現があるようにまだ近代兵器が使われる前、刀剣類が武器の主流だった頃、人を斬るとこのように血飛沫を上げたと言う。
「レ………ン君………コウ、君………?」
理由は分からない。
長嶋は影の動きを躱すために前のめりに倒れ混んだせいで、一瞬だけだが現実から乖離した。その一瞬の間に、何が起こったのか今更知る由もない。だが、現状の事実として―――飛崎と秋山は肩口から脇下までを一閃され、鮮血を迸らせながら地に伏していく。その様子を滑稽なまでにスローに認識し、長島は息を呑む。
思考が高速で断続する。
何が起きた。
親友二人が大怪我を負った。
誰がやった。
アイツだ。あのバケモノだ。
どうすればいい。
彼等を救わなければ。
それは何故か。
彼等は自分の親友だ。
そんな義理があるのか。
あるとも。ついさっきだって、世話になった。何より彼等は親友であると同時に家族も同然だ。
ではどうする。
救急車、警察、彼等の助けになるならばなんでもいい、なんでもする。彼等を救えるならば。
だがアイツが邪魔だ。あの化け物はまだ彼等を嬲るつもりだ。
排除する。
どうやって。
どうにかして。
死ぬかもしれない。
だからどうした。
武器が無い。
拳を握る。
それから。
身体を前に倒す。
そして。
「ァ………ッ!」
声は叫びにならなかった。
空気を裂くような呼気をその場に置き去りにするように、長嶋は加速する。腐葉土につま先を突っ込むように引っ掛けて蹴り散らし、山を駆け上がると言うよりは、斜面に階段を構築するように走る。
肉薄。
接近する人影は改めて見ると確かに化け物だ。辛うじて人の形はしているものの、その縁取りは陽炎のように揺らいでいるし、実像としてそこに存在しながら何処か幻のように見える。しかしそんな躊躇いは捨てる。思考放棄にも感じるが、少なくとも現状、この化け物によって親友二人は大怪我を負った。その事実が、敵はここにいるのだと長嶋に信じさせた。
だから。
(一挙、一殺―――!)
地を舐めるように姿勢を低くして長嶋は懐に潜り込む。踏み込んだ右足と化け物との間は僅か20cm。相手は反応できていない。この速度、この距離ならば拳にしても蹴りにしても関節にしても投げにしても必ず入る。ならば狙うべきは一殺に至る急所。この化け物は人型だが、果たして人体の急所が通じるのかは不明。だが、仮に通じなかったとしてもそれらしき場所には見当がつく。
あの金の瞳だ。
身体の縁取りが揺らいでいて酷く曖昧なその化け物も、あの瞳だけは確固として存在していた。つまり、あの部分にだけは間違いなく攻撃が通じると判断する。
踏み込んだ右足をつま先を起点に内側に捻る。そこで生まれた回転力が下半身から上半身へと伝わる。右肩から入るように斜め上方前へと体重移動。重心が移動すると共に折りたたんだ右腕を直線として放つ。拳は握らない。今回、目標は点だ。そこを突くとなると、拳では打突面積が大きすぎる。故に、拳は握らずに人差し指と中指を揃えた二指で瞳を突き、更に奥へと侵入させる。
「せっ………!」
踏み込みまでの加速、踏み込んでから得た回転力。自分のリーチを計算においての彼我の距離。そして全筋力を使用しての貫手―――正確には二本貫手。これは極まると確信する。突き指や骨折など元より気にしていない。今必要なのは、現状を切り抜けるための一手で、その為に必要な犠牲ならばいくらでも払う。
もう一度、これは極まると理解する。最早相手は避けられる距離にいない。眼球を貫通し、前頭葉にまで間違いなく届く。だからこそ長島は次いで来る衝撃に備えて―――。
「―――っ!?」
手応えもなく、摺り抜けた。
比喩でも揶揄でもない。冗談ではなく、彼の指は間違いなく化け物の金の瞳に吸い込まれていき、そのまま摺り抜けた。まるで本当に影を相手にしているように、酷くあっけない程に化け物の瞳を通り抜け、頭を貫通した。しかし当然、ダメージになっていない。なっているはずがない。それは頭部を擦り抜けられ、泰然とそこに立つ化け物の様子からも見て取れる。
どういうことだ、と自問する。
理解できない、と自答する。
一瞬の空白。だが身体は慣性に従って動き続ける。それを長嶋は半ば無意識に制御する。右足を軸足に、振り切った右腕が生んだ惰力を以て身体を半回転させる。化け物の左側面へと出る。踏み込んだ足は左。だから長島は慣性はそのままに、今度は左足を軸足としてコマのように身体を回転させる。釣られるようにして身体の最先端に来るのは右足。それを掲げるように頭より高く持ってきて更に体ごと回し。
「ふっ!」
化け物の頚椎へと打ち下ろすように叩き込んだ。
「っ!?」
しかし結果は手応えなし。僅かに影が凪いだが、それだけだ。まるで当たり前のように蹴りは摺り抜けた。
今度こそ行動が停止する。
付随するように思考も停止する。
どうすればいい。蹴りを打ち下ろした後、反動を利用して直蹴りに繋げるか。しかしそれは通じるのか。また擦り抜けてしまうのではないだろうか。だとしてどうする。どうすればいい。反射的に打ち込んでも通らない。考えても同じ。何か他に無いか。何か他に手は―――。
普段ならば何があっても継続する思考も行動も未知の相手を前に、その全てが停滞した。
致命的に、空隙が生まれる。
「ぎっ………!」
金の瞳が鬱陶しげに長島を見据えたかと思うと、左腕と思わしき部分の影が蠢き、巨大化。彼の首だけを残すように身体に絡みついた。文字通り鷲掴みされ、持ち上げられる。その膂力たるや、万力のようだ。ギリギリと影の指が徐々に長嶋の身体に沈んでいき、呼吸、血流ともに圧迫され危険域に達する。体中の至る所の骨がへし折れる音と痛みを感じながらも、しかし長嶋の意識はまだ飛んではいなかった。いや、あるいは嬲っているのかもしれない。長嶋が正常でいられるぎりぎりのレベルで苦痛を与えてきているのかも知れなかった。
(あ―――)
今になって気付く。
これは死ぬ。まず間違いなくここで終わる。何しろ相手の存在が反則だ。こちらからは触れられないのに、相手からは触れるとかどんな無敵モードだ。今だって影の手を振り払おうと身体をバタつかせているがそれにさえ触れられない―――いや、感触がない。
まるでホログラフィだ。そこに存在しているように見えるのに、触れられない。しかしそれとは根本的な部分で違っていて、この化け物は触れられないくせに確実にここに存在していて、こちらを一方的に殺そうとしている。
元より勝てるだなんて思ってはいなかった。こんな意味不明な化け物だ。本来なら、然るべき人間が然るべき装備を以て相対するべきなのだろう。だからそこまでは望んでいなかった。
望んだのは時間だ。せめて二人を引きずってでも逃げる時間を稼ぎたかった。
(な、んで………!)
激痛に続いて血の巡りが悪くなってきて、思考さえ途切れ途切れになりつつなっている中で、長嶋はただただ悔恨する。
(僕の技は、こんな時の為に、あるのにっ!!)
長嶋派火雷流。
合戦という不条理の中で、それを砕き生き残るための術。戦国では重宝されたこれも、江戸に入ってはその総合性故に御留流として体良く歴史の隅に追いやられ、この近代社会となっては最早非現実の中でしかその威を発揮できない過去の遺物。しかしその非現実の方からわざわざやって来てくれたというのに―――。
(どうして何も出来ないんだよ………!!)
ただひたすらに、無力だった。
相手が悪かったでは済まされない。古来より戦場において分の悪い相手など幾らでもいる。それに相対した時にこそ武術というものは真価を発揮するのだし、武の基本骨子は常にそこにある。
弱者が強者を超えるために。
強者に弱者が抗するために。
だが、そんな理論を根底から突き崩す相手がここにいた。触れられず、届かず、為す術もなく命を脅かされる。まるで虐殺者だ。一方的且つ圧倒的な暴力で、目に映る全てを破壊していく。
(ごめ、ん………レン君、コウ、君………)
意識が混濁する。
脳に酸素が行き渡らず、頸動脈も抑えられ、圧迫に因って眼球が内部から押し出される感覚がある。もうダメだ、と何もかもを諦めようとした時だった。
―――どうして?
(え―――?)
視界の端から徐々に暗くなっていく中で、長嶋は声を聞いた。少女の声だ。姿は見えない。声だけだ。心地良いソプラノ。状況が状況だ。無駄に苦い走馬灯ではなく少女の幻聴とは、なかなか粋じゃないか、と何と無しに思ってしまう。
―――どうして、逃げなかったの?
問いが重ねられた。末期の夢にしては、妙にしつこい。
(―――親友………ううん、僕の身内なんだ。だから、何があっても助けたかったんだ)
だが不思議と落ち着いていた。それ故に、素直に答えれた。
そうだ。自分にとって、あの二人は家族に等しい。それを見捨てることなんて出来なかったし、結果として今現在殺されそうになっていてもそれ自体には仕方ないと思う。
だけど、心残りがある。
―――そっちの二人も、同じ事を言う?
(うん)
即答だった。
多分、逆の立場でも二人は自分と同じ行動を起こしていたに違いない。これだけは確信できる。だから、やはり心残りはその二人だろう。出来るなら、彼等を助けたかった。あれだけの大出血だ。もう間に合わないかもしれない。だけど、諦めたくはなかった。
ただ彼等を救いたかったのだ。
しかし、今の自分ではそれも叶いそうにない。
だから誰か救って欲しい。
彼等には夢があるのだ。
現実に押し潰されそうになっても、ただ真っ直ぐに歩いてきた彼等には、自分と違って心から手にしたい夢が。必ず手の届く夢が。
こんな所で終わっていいはずがない。
誰でもいい。
何でもいい。
これが生涯最後の運だって構わない。
だから―――奇跡よ、起きてくれ。
―――わかった。
(あ………)
声と共に、影の化け物と長嶋の間に、青い光が生まれ、弾ける。そこに出現したのは少女だった。人の発色ではありえない蒼い長髪の毛先を黄色いリボンで結わえ、赤い瞳は静かに長島を見据えており、一糸纏わぬ裸体は宙に浮き、白く輝いていた。
現実的な光景ではなかった。だが、幻覚と言うには余りにも生々しすぎた。
青の少女が長嶋の首を締める影の腕に触れると同時、束縛が解かれる。まるで風化するかのように影の腕が文字通り粉々になって風に攫われていったのだ。拘束から解放され、地面に落ちて倒れ伏した長島はしかし手遅れだった。身体が動かない。全身の骨が圧迫に因ってへし折られた為、最早自力で呼吸もままならず、意識の混濁は進む。
だが少女はそんな彼に背を向けると、影と対峙する。
そして―――。
「―――サナと同じ事を言う人間を、わたしが助けてあげる」
少女が発した最後の言葉と共に、長嶋の視界は群青に包まれ、遂には意識を失った。掠れ行く意識の中で、しかし彼は何故か確信していた。これはきっと、夢ではなく奇跡。そしておそらくこれまでの自分の短い生涯の中で、これが最初で最後の奇跡なのだろうと。
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