第五話 魔素だまりと猫
洞窟もだいぶ上層になってきた気がする。最初の頃はそこかしこに貝や水たまりがあったのに、だんだん少なくなってきた。
それに広間や通路も、広くなってきてるな。もしかしたら、他の魔物や人間も出入りする場所なのかも。
「ミュアッ!」
少し開けた場所に、魔素だまりを見つけた。俺が入った魔素だまりと、雰囲気が違うな……。
《魔素だまり 黄》
色の違いで何か変わるのだろうか? 天の声さんの補足説明は特に無いけど。
まぁ、魔素だまりってことで間違いないなら入っても問題ないか。
今回はスズネに入ってもらおう。ささ、お入り。
「ミュア~♪」
躊躇することもなく、スズネは魔素だまりの中に飛び込んだ。
俺のときと同じように、魔素がスズネの中に入っていく。
これでスキルポイントや進化ポイントをたくさん獲得したはずだ。スズネはどんな風に進化するんだろう?
「ミュミュ~!」
魔素の光が消えて、終わったよ~というような鳴き声。うん、ちょっと大きくなって……ないな。
あれ? 進化しないの? スズネの進化ツリーどうなってるの?
《個体名 スズネ の 進化ツリー を 表示》
あ、これってスズネの分も見れるんだ。
宙に映し出された進化の一覧を見ると、俺とだいぶ違うな。
俺は進化の種類が多く、少ない進化ポイントでどんどん進化できる。
対してスズネは、進化に必要な進化ポイントが膨大だ。魔素だまり一個分のポイントじゃ全然足りない。
それに進化条件も、設定されている。多くは特定のスキルを獲得して、指定のスキルレベル以上にしていること。
あと、成体になる条件もあるのか。これは先が長いなぁ。
とりあえず、スキルの獲得はどうなってるんだ?
《個体名 スズネ の スキルパネル を 表示》
天の声が聞こえて、宙の映像がスキルパネルに切り替わる。
あれ……あんまり技や魔法といったスキルは覚えてないんだな。一体何のスキルを獲得しているんだ?
攻撃力上昇……素早さ上昇……攻撃力上昇……防御力上昇……HP上昇……。
なるほど、常時能力が上昇するパッシブスキルを中心に獲得してるのか。見た目やレベルのわりに、やけに強いと思ったんだよ。
技はソードウィップだけ覚えてるみたいだ。しっぽを刃物みたいに使ってたのは、この技か。
「ミュア~!」
俺の頭――鳥の魔物に喰われて、凹んだままになってるところ――に、スズネは前足を置いた。鳴き声とともに、キラキラした光を放つ。
すると俺の頭の凹みが、ぷるんと元に戻った。
おおお!! これって回復魔法!?
今の魔素だまりのスキルポイントで獲得したのかな。ありがとう、スズネ。
「ミュッ!」
誇らしそうにしながら、スズネはすり寄って甘えてきた。
よーしよし、いっぱい撫でてあげるからな~。
スキルパネルを確認すると、残りのスキルポイントは貯めてるみたいだ。
必要なスキルが出てきたときに、選んで覚えるように残してるんだな。貯蓄ができるなんて、スズネは賢いなぁ。
「ミュアッ!?」
夢中でじゃれてたら、急に大きな揺れが起きた。地震なのか!?
パラパラと天井から岩が崩れて砂や小石が落ちてくる。これ、結構危険なんじゃ……。
俺は体を伸ばして、ドーム状にスズネを包み込んだ。
「ミュ……? ミュ……?」
不安そうにスズネが俺を見上げる。大丈夫だよ、俺が守ってあげるからな。
揺れはしばらく続いた。天井からは結構大き目な石も落ちてくる。
スライムの体が石をうまく跳ね返してくれるので、ダメージはそこまででもない。スズネを守るように体を変形させて、正解だったな。
「ミュウミュウミュウミュウ」
揺れが収まると、スズネは心配そうに俺の周りをウロウロしてケガの確認をしてきた。
そんなに怖かったのかな……うん、怖かったかも。すごい揺れだったからね。
でも、もう大丈夫だよ。
「ミュウ……」
まだ落ち着かないのか、スズネは俺にしがみついて動かなくなってしまった。
鳥の魔物と戦ったときはあんなに勇ましかったのに。強くてもまだまだ子猫なんだなぁ。
俺はスズネが落ち着くまで、休憩することにした。
●●●あとがき●●●
本日二話目の更新です。
三話目の更新は夜を予定しています。
■■■■
スズネ
「ミュウミュウ……」
ヒロアキ
(そんなに地震が怖かったのか?よしよし)
スズネ
「ミュウミュウ……ミュウミュウ……」
ヒロアキ
(あぁ……そんなに頭押し付けて……またスライムの体の中に入っちゃうよ〜)
スズネ
「ミュウ……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます