第12話 痛い目
「それでは、やってみましょう。」
財布と買った飲み物で試してみる。
財布を手にもって、ペットボトルに手を向けて…。
「はっ!」
…なにも起きない。
「なんででしょう。能力は保存されているのですが…」
「同じものじゃないといけないとか?財布は財布と交換、みたいに。」
「なるほど。確かに、財布のお金と何かしらを交換しなかったのにも納得できます。」
「それなら良かった。」
「ええ。相手が持ってる財布を交換するだけでいいですからね。」
気が楽になった。正直、こんな風になるとは思わなかった。脅しとはねぇ…。
「嫌な社会だな。」
8時。レストラン。
「それで、なんの要件でしょう。」
「何って、何かわかってだろぉ?」
「お金、ですか。」
「そうだよぉ。キミの住所とか、顔とか、ネットにばらされたくないよねぇ?」
「ええ。ですが、ちゃんとぼくの財布かどうか確認してからでお願いします。」
「チッ。まぁいいよぉ。ほら。」
「確かに僕のです。」
「ご注文は?」
「コーヒーを…2つで。あと、リンゴジュースも。」
「そろそろ、お金をお願いしてもいいかなぁ?」
「ああ。そうでしたね。」
財布から、500円を出す。
「はい。」
「…はぁ?舐めてンのか。こんなはした金なんかで足りると思ってンのかよぉ!」
案の定、怒った。
「静かにしてください。他の人に迷惑です。」
「チビは黙ってろぉ!」
「これでは迷惑になってしまいます。それでは仕方ありません。僕たちは先に。あ、財布。返していただいて、ありがとうございました。」
「えっ?あっあれ?なんで?あれぇ?」
「ああ、あと。最近、値上がったみたいで。支払い頑張ってくださいね。」
「お待たせしましたー。コーヒー2つ。リンゴジュースです。レシートですー。」
「600円…。足りないぃ?!」
うなだれて、頭を抱える様子を見ながら、レストランを出た。
「良かったのか?」
「いいんです。おそらく何回か同じようなことしてるでしょうし。一発痛い目みた方がいいです。」
いい性格してんな。コイツ。
「まぁ、スカッとしたし、いいか!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます