第7話 挨拶

…さて。

「君の名前は?」

『ない』

「ないの?」

うーん、困った。呼び方ないとなぁ。

『なんとでも』『呼ぶがいい』

「難しいなぁ。なんて呼ばれたい?」

本人の意志は大事だよな。うん。決して無責任ではない。けっして。

『瞳』

「ひとみ?」

本の登場人物だけど、いいのかな。

『いいよ』

「いいの?…てか、なんでわかった!?」

「てちのちすちみちに?」

なんて?

『このこと』『聞いてない』『?』

「うん。」

『無責任』『な』『奴め』

「ホントにね。」

はじめての共通点。

『じゃあ、』『始める』『よ?』

「…へ?」

『寝て』

「眠くないよ?」

『寝て』『今』『すぐに』『すぐに』

「は、はい」

この強引さは、地球様と一緒だな。

『失礼』

ゴメン。



…なんかフワフワする。この感じ、さっきみたいな、なんというか…。

「久しぶりー!でもないかー!てか、早かったねー!」

あ!地球!

「呼び捨てとは、距離近づけるの早いねー。このたらしめ。」

「…!…?」

「ああ、喋れないんだね。ごめんねー!ここ、喋れないんだー!」

不便だ。

「やっと着きましたか。」

ん?あれ?

「わたしです。ひとみです。」

ああ。…って、聞き取れる?!

「はい。こっちだと伝わるみたいです。」

そりゃ良かった。

「では、本題に入ります。…地球様。ちゃんと、相棒に説明してください。」

「えー。説明はキミがしてって言ったジャーン。」

「ちゃんと説明しろ。」

「ひぃ。ゴメンって…」

強い。

「えーと、キミに『星の子』だってことは言ったよね。」

うん。世界の均衡がなんとか、みたいな。

「そーそー。…んで、その均衡を保つってのが重要でね、あの変な男がいってたみたいだけど、他の国にもいるんだよね、『星の子』。」

へー。知ってる。

「この均衡って、軍事的なことだけじゃないんだ。」

え?戦争とか起きそうな感じするけど…。

「まぁ、それも大きいんだけどー、もっと大変なこと、あるんだー。…『星の子』ってね、世界の常識を外れちゃうんだ。物理法則とかにも、ね。」

そりゃ大変だ。…でも、特段必死になんなくても、その人たちが寿命で死んだりすれば、勝手に終結する話じゃないか?

「それには、時間がありすぎる。」

時間?

「そー。『星の子』って存在自体が、地球に微弱な影響力があるの。『星の子』が出現して数年、着実に世界は変化している。」

…そう、なのか?あんまり感じたことないけど。

「それは日本には『星の子』がいないからだね。」

それじゃあ、他の国だと…

「うん。隠しているだけで、影響について、またその中心である『星の子』について躍起になって調べているよ。」



「だから、キミが呼んだんだ。」



「まるで異世界と化していくこの世界を、正しいものにしてほしいんだ。」



…深刻な内容だ。

自分は、世界を背負ってしまったのだ。


でも、俺がどうやって?

なにも能力とか、物理法則を変えるなにかとか持ってるようには思えないけど…

「それは心配ないよー!もう与えてあるからね。」

「地球様、それをちゃんと教えなければいけないんじゃないですか?」

ごもっとも。

「確かに…。他の『星の子』は自分で違和感に気づいてたからね。すっぽり抜けてたー!」

こんなのが母なる地球とは…


「じゃあ、言うよ。ビックリしないでね…。キミの持つ力は…」

「『1度体験した現象を再現する』力だよ。」






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