第4話 裏切り者

…空気が重たい。

結局、家の中に連れられて、話を聞くことに。

先生と向かい合って座る。隣には、さっきの女性がべったりとくっついて座っている。

「先生、大丈夫ですか…?」

「うっとうしいことこの上ないです。この人のこと、引き剥がしてくれませんか?」

「ひどいわ~。会ったばっかりなのに~。」

「こんな茶番をしに来たのですか?」

先生の声に力が入っている。

重い沈黙が響く。スっと離れていく。

「ごめんなさい。少しおふざけが過ぎたわ。」


「…誰の差し金ですか。」

差し金?何か悪い組織にでも入っていたのか?

…もうこんなことぐらいしか考えられない。

今この場で、俺が一番何も知らない。

俺はこの二人の世界を、聞いていることしか出来ない。

「ねぇ、何でいなくなったの?」

「質問に答えなさい」

「…誰からなんて、自分でわかるでしょ?わざわざ答えるまでもない。」

急に女性の声が低くなる。怒っている?

「では、何で学校にいたのですか?貴方は教員ではない。なのに、あの時私は、学校にいるのが普通だと思ってしまった。貴方を知っているのに貴方と認識できなかった。…何をしたんですか?」

…また何を言ってるのかわからない。

この女性を知っているのに、その場でだけ誰だかわからない?そんなことあるわけないだろ…。

「先生、疲れてるんですよ、きっと。」

つい、口が滑る。

「ほら、その現象もきっと、眠くて~とか、疲れてて~、とかですって!」

「夢野さん。この子何?何で口挟んでくるの?私たちだけの世界が戻ってきたところだったのに!邪魔なんだよ!」

「…!ご、ごめんなさい!」

こわすぎ。漏れちゃうって。だから、にらまないで。

「…そうだ。邪魔した罰、やらないと。」

ヒィ。俺、死んだ。

「立って。」

「はいぃ!」

「ついてきて。あ、そうだ。夢野さんもきて?」

家を出る。何か、RPGやってるみたいな並び方。

「こっちよ。先生の家の隣にいくから。」

…先生の家のとなり?

「ここで、夢野さんの『夢』、叶えてるの。」

俺への罰なのに、先生の夢叶えてる?

言ってることが理解できない。

「言ってることがわかんないでしょ~。」

「へ!?」

「いっとくけど、貴方よりも夢野さんのこと、いっぱい知ってるんだから。」

この人、緊張感ねぇな。こっちはビクビクなのに。

「はい、ついた~。じゃ、『見せてあげるね』。君への罰。そして、先生の夢を叶えるためにしていた、先生がしていた、実験も。」


ガチャ。


扉が開く。

目の前には、狂ったように暴れまわる、クラスメイトが数人、閉じ込められている。

「…え?」

そこには、今日話しかけてきてくれた、仲の良かったクラスメイトもいた。

「君が先生と仲良くしてるのが悪いんだよ~。」

「あと、適正のないこの子達もね。」

どういうことだ?

適正?

考えがまとまらない。

状況が把握できない。

目の前の光景から、目が話せない。視ているだけで、吐きそうなのに、目が離れない。


「何をしている!」

せんせいのこえ。

「この実験の手順は教えたはずだぞ!なんでこんな駄作が出来るんだ!」

せん…せ?

「とことん使えねぇな!」

「ご、ごめんなさい。夢野さん!許して!やめて!やめてください…お願いします!」

あれ…?泣いてる?

あんなに堂々としてたのに?

「はぁ…。お前も後で、アッチいきだから。」

女性の顔が絶望の色を見せる。


もう、しゃべらなくなった。


先生は、苛立ちを、ぼくにぶつけた。



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