第13話 薄氷のステージ3

 カヤタニは気を取り直して、すっくと立ち上がると、すぐさま連続攻撃に移ったのだ。


「いかん、フォーメーション2や! いくで! ダケヤマぁ!」


「いよおおっし!」


『コント! 彼女の手料理!』


「あ~、バイト頑張りすぎてメッチャ腹減ったわ~。何か食わせてくれや、カヤタニ」


「ちょうどええわ。アンタが帰ってくるのを、ずっと待ってたんやで。ほな、ちょっと用意するから、リビングで待っといてな」


「そうか、でも早よしてや~。マジでお腹ペコペコなんや、コレが~」


「分かった、分かった、大人しくココで待っててな。すぐできるから」


「頼むわ~。そんな大層なモンいらんねん。すぐ美味しい、すごく美味しい、みたいなモンでええから」


「うっさいなぁ~。せっかくの彼女の手料理なのに、そんなにガッつかんでもええやん」


「ええい! 俺は空腹で、ちょっとイラついてんねん。さっさとキッチンから持ってきてや。もうできてるんやろ?」


「ハイハイ、じゃあゴハンよそってくるから、とりあえず漬け物でも食べといて~」


「そうや、何でもええねん、腹に入れば……。あ~、やっと米の飯きたか」


「ゴメンやけど、今こんな漬け物しかないねん。はい、ホルマリン漬け!」


「そうや、そうや。この解剖された魚のホルマリン漬け、俺メッチャ好きやねん。この鼻を突くような薬品臭と死臭が最高にゴハンに合うねん……って俺を殺す気か! こんなモン、合う訳ないやろ、ゴハンに!」


「あ~、ゴメン。奇形豚のホルマリン漬けもあったわ」


「だから、そんなモンいらんわ! 気色の悪いモンばっかりテーブルに並べんといて! マジでメッチャ気持ち悪いやんか! 一気に食欲が失せてしもうたわ! 何がホルマリンのお漬け物やねん! いくら俺でも食えるか、こんなモン!」


「え~、ひどい言い草やな。理系女リケジョの彼女が作った自信作やのに~」


「ええから、普通のモン持ってこいや! まだ何かあるやろ?」


「分かったから。今、肉をお鍋で煮てるから、それ持ってくるわ」


「何や、肉があったんか。最初から、それを出せば良かったんやがな」


「はいどうぞ。熱いから気を付けてな」


「すまんのう、イイ色した肉やなあ。結構高かったんちゃう?」


「それほどでも~」


「……何やこれ? かぶりついたら、口の周りが真っ赤になってしもうたで?」


「そらそうや。朱肉やもん」


「朱肉!! お前さっきから俺に、何ちゅうモン食わせるんや! 一体何がしたいねん!?」




「……ぷぷっ!」


 笑い上戸のダイナゴンが顔を真っ赤にしてプルプル震えている。両手で口を塞ぐが、無頼庵ブライアンに睨まれてしまったようだ。


 せめてもの救いは、ゼノビア姫がボ〜ッと話に耳を傾けている事だったが、笑い声が周囲から聞こえてくる気配はない。


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