第4話 円卓の騎士団
ローティーンくらいのメガネ魔女から、この異世界の名前を知らされた時、カヤタニの後ろにいるダケヤマはちょっと首を傾げた。
「ディアブルーン……? どっかで聞いた事、あるような……」
「ほんまかいな? 海外旅行でさえ、一度も行った事のない男が!」
「やかましい! お前も経験ないくせに!」
「芸人目指すために上京してドン底の生活味わってンのに、どこにそんな金があるんじゃ!?」
「何言うとるねん! 工場の倉庫バイトの俺よりマシやろうが!? そう言うても病院勤めやろ?!」
「病院っつーても、個人眼科の非常勤で、幾ら貰えると思うてんねん! 雀の涙じゃあ! 鳩の鼻水じゃあ! 高円寺のボロアパートの家賃払ったら、スタバに行く金も残らんわ」
「チョット待て。雀の涙は知ってるけど、鳩の鼻水は知らんなぁ……。それにスタバよりドトールやろ」
「ダケヤマ~、あんたどこに喰らい付いてンねん! 海外旅行の話はどうなったねん?!」
「え~、海外旅行と申しますと、僕らの時代はやっぱハワイに憧れましたね。高校の頃に知り合いからマカダミアナッツチョコの土産を貰いましたわ。チョコを舐め取って、ナッツだけにしてビー玉のように転がして遊びましたねぇ。やっぱハワイはすごい、アーモンドチョコとは全然違うンやって……」
「そう言えばあんた、マカダミアナッツを鼻の穴に入れて取れなくなった末に耳鼻科に駆け込んだらしいなぁ? 鼻血も出して、ほんまアホやで~」
「そんな話バラすなや~。学校で、お前におすそ分けしたハワイ土産のナッツは、たぶんそれやで~」
「ぐええええ! 何も知らずに食うてしもうたやないかい~!」
円卓の騎士の内、リーダー格と思われる髪の薄くなった騎士が、両腕の拳を卓上に叩き付けた。ついにキレて立ち上がったのだ。
「お前達、いい加減にしろ! 王女様の御前であることを忘れるな!」
続いて向かい側に座る、立派なカイゼル髭を蓄えた青の鎧騎士が立ち上がる。
「左様である! 無断で騎士の円卓上に、二人して乗るとは何事だ! 名誉ある騎士の象徴を土足で踏み荒らした無礼は、万死に値する!」
次は隣に座っている、長い栗色の髪を編みあげた美しい女性騎士の出番だった。
「そうね……。この王国では騎士の名誉が何よりも尊重されるのよ。あなた達には罪を償って貰う他、ないんじゃないのかな~」
その隣にいる山のような巨人の騎士は、腰の剣の柄に手をかけ、血気盛んに叫んだ。
「そうだ、そうだ! 名誉ある騎士の円卓を汚した罪は重罪である!」
更に隣の一番若く神経質そうな騎士は、赤く染め上げた鎧をピクリとも動かさず、腕組みしたまま無言を貫く。
「……………………」
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