第3話 魔法使いアビシャグ
ダケヤマもカヤタニも硬直したまま、円卓の上で身動きが取れなくなってしまった。何せ一歩でも動くと、包囲している歴戦の戦士みたいな風体をした男達が、腰の剣を抜きざまに斬りかかってくるような殺気を感じていたからだ。
「おいおい、カヤタニ……。どないするねん、コレ?」
「私に訊かれても困るわ。笑って誤魔化しながら、ここから降りるか?」
「そもそも、このお客さんら、冗談通じるんやろか?」
「あんたアホか。まだこの人らの事、お客さんやと思ってんのかい~!?」
「そういや、どう見ても、お笑いが好きそうな人達に見えへんなぁ」
「て言うか、どう考えても外国の人達とちゃうんかい~!?」
二人が場違いな服装で、クネクネしながら円卓上で悶絶していると、ようやく日本語で助け船を出してくれる人物が現れた。
玉座近くの暗がりから姿を見せたのは、予想に反するような年端もいかぬ黒髪ロングヘア少女。
黒いとんがり帽子にマント、宝玉付きの長杖を両手で持っているのは典型的な魔法使いのスタイルだったが、何らかの現世との繋がりを感じさせた。というのも、なぜかメガネをかけており、紺色のセーラー服を着こなしていたからだ。足元は当然のごとく、黒いソックスにローファー。
色白少女のピンクの口元から、小鳥のような澄んだ声が届いた。
「……ディアブルーンの世界にようこそ。
魔法少女の声を聞いて、二人は少しホッとした。
「に、日本語や! あのセーラー服の中学生みたいな
「ああ、俺達みたいに異世界に飛ばされてきたんとちゃうか?」
「異世界やて?! あんた本気でそんな事、言うてるんか!?」
急に冷静になり、自分達の状況を把握し始めたダケヤマの言葉に、カヤタニは驚きを隠せないでいた。
「だって考えてみろや。俺達は現実に城内にいるやん。周りはどう見てもTV局のスタッフやないし。もしタイムスリップしたんなら、ちょんまげの侍と殿様がおるはずやんか?」
「んなアホな! アニメやマンガじゃあるまいし~!」
騒ぐジャケット男とワンピース女に対し、制服少女である魔法使いが諭すように語り掛けてきた。
「いかにも。ここは、あなた達が暮らしていた日本とは異なる次元の世界なのです。我がシンニフォン王国は、剣と魔法が支配するディアブルーンと呼ばれる世界にあります」
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