幕間


男「今日は地理と歴史だ。ウェオン王国編をやる」

ヤユ「うおお~ウェオン出身のわたしだからね! ちゃんと自分の国のことは知りたい!」

男「えーと、そうだな……、まず抑えておくべきことは……ヤユが住んでいるこの国この地域。ウェオン王国キュロイナ半島――ってことになるわけだが」

ヤユ「うんうん」

男「この国は王室……王様が頂点に立っていて、人口は確か5000万人くらいだったか……世界の中でも中くらいの大きさを誇る国家だな。周囲にはこれといった大国はないから、この地域で一番強くていわゆる地域大国……ってことになる。だが、この国はかなり首都……フララーガに人が集まっていて、その規模は世界で三番目だ」

ヤユ「それってすごいの?」

男「ああ、すごい。それにウェオン王国は世界の歴史に残るような数々の偉人を輩出しているんだ。呪言遣いだと〝天面戦役〟で竜討伐を成し遂げた『星握のオルザウルザ』が最も有名か……彼女は星をも握りつぶすと言われ、無比無類の強さの持ち主だったそうだ」

ヤユ「星を……す、すごい……! どういうことなの……!」

男「分からん。とにかくヤバイ奴だったってことは確かだ。とはいってももう500年以上も昔の人物だがな。あとは……『蒼き雲海のボンボルト』とか『剣境 迷杯のジョルキイ』『伏せり高きのジャーノッド』……と言ったところか」

ヤユ「あー、ジャーノッド、って知ってるよ!! すごく頭がよかった人でしょ。私のお母さんがね、いっつも私にジャーノッド卿くらい賢くなりなさいって口癖みたいに言ってたんだ! 私は勉強より運動の方が好きなんだけどね!」

男「ジャーノッドは魔法の理論研究、構築において歴史の時計の針を千年は進めたと言われるくらいの功績を残した人間だな。彼が発見した魔礎のゆらぎ、そこから再現してみせた呪言の数は百や二百ではきかない。ただ、なぜか夜にしか活動できなかったと言われている」

ヤユ「え……それってなんでなの?」

男「知らん」

ヤユ「気になるなあ!」






**


・星握のオルザウルザ

「土地狂い」「弱い者の味方ではなく強い者の敵」「竜ほろぼし」……彼女を形容する言葉は砂塵の数あれど、そのどれもが本質とは離れていて正鵠を射ているとは言い難い。

やはりオルザウルザのことを真に正しく表現するならば、彼女は『星をも握りつぶせる者』だろう。

……その逸話が真実であれば、の話だが。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る