49.王位継承権の次点繰り上げ
第二王子エルネスト自身はただのアホだし、特に実害はない。王族である権限を振り回すくらいだけど、それは第一王子アルフォンスが封じた。いわゆる、王位継承権の剥奪よ。容疑は眉を顰めるくらい大量に並んでいて、どれも小さすぎて罪に問えないものばかり。
大量にあるから、総合で継承権剥奪となった。国王陛下は単に読むのが面倒だったんじゃないかしら。巻物になった罪状書を赤絨毯の上に投げ出し、言われるまま一番下に署名したらしい。と言うのも、私はその場にいなかった。当然よね、シルに監禁されてるんだもの。
「シル、庭に出たいわ」
「そうだね、たまには日に当たった方が健康のためだ」
腕を伸ばして微笑むから仕方なく私も腕を差し出す。当然のように抱き上げられ、伸ばした腕で彼の首を引き寄せた。お姫様抱っこで庭を散策する。あら? 歩かなくても散策っていうのかしら。
「歩きたいわ」
「どうしてもかい?」
「ええ」
目を見てしっかり返事をするのが大切よ。ここであなたしか見えてないのと示すことで、私の要求が通りやすくなるから。しばらく見つめ合った後、シルは私の足を芝の上に下ろしてくれた。室内用の靴だけどいいわ。するりと腕を組むシルに応じながら、庭の景色を楽しんだ。
あの薔薇の下は骨がはみ出してるわね。埋め方が甘いわ。指摘すると庭師が次の栄養にされてしまうので、ロザリーに目で指示した。彼女はすぐに走り、庭師と藁で根元を隠し始める。何も知らなければ、薔薇の根元の保護に見えるはず。
「それで次期国王は第一王子殿下に決まったの?」
「俺が継がないと宣言した以上、次点繰り上げだ」
継承権を持つ公爵家は他にもある。だが直系の第一王子が存命なら、外の血筋を入れる必要はない。そう普通はそうでしょ?
国王陛下が王太子を指定しなかった理由は、シルが第一王位継承権を持っていたからよ。他国では、国王陛下が結婚前に愛した女性の子がシルヴァンだと言われているらしい。そんなの、計算が合わないからあり得なかった。
ルーベル公爵家はこの事実を否定せず、だけど肯定もしなかった。ただ黙して微笑む公爵夫妻の意味ありげな態度に、噂はさらに飛び火して加速した。シルを産んだ母君は儚くなられて、正妃に殺されないよう成人まで公爵家に預けた説もあった。
王位継承権一位のシルが完全に辞退を表明したことで、第一王子アルフォンスが繰り上がり当選ね。第二王子の勢力は、ルーベル公爵家襲撃事件で大きく削がされた。シモン侯爵であるお父様がシルヴァンとの結婚を決めた理由……絶対に継承権に関係してるはず。
ダイアモンド鉱山で売られたのかと思ったけど、ある意味ほっとした。そうよね、私の価値がそんなに高いわけがないから、詐欺になっちゃうもの。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます