20話 もう1人の行方
ベルナデットと夢であった日から数日経った日曜日。
あれ以来、ベルナデットとは会っていない。
最後に会った時、彼女は『もう1人を見つけるまでまたね』と言ってひらひらと手を振っていた。
「…、クエストか何かかよ」
同じ学校の同級生だと言うそのもう1人を見つけないとベルナデットには会えない、などと言うどこぞのロールプレイングゲームみたいな課題を課せられた恵斗はため息をついた。
一体誰だ…?
色々家で考え込んでも仕方ない。
日曜日だが、何か分かるかも知れない。
恵斗は学校に行ってみる事にした。
目立つであろう碧髪を隠すために帽子を深々と被り、部屋を出て階段を降りる。
「先生、ちょっと学校に行って来る」
台所を除くと、安曇が施設に暮らす女の子たちと一緒にお菓子を作っている様子が見えた。
甘い香りがする。
「あら。気をつけてね」
日曜日なのに学校に行くと言う恵斗を、安曇は深く詮索はして来なかった。
「恵斗にいちゃんいってらっしゃーい」
女の子たちは顔や手に小麦粉を付けていた。
チラッと行って早く帰ろう。
そしてお菓子を貰おう、と恵斗は決意した。
校門の前に着いた恵斗は、辺りを見渡す。
日曜日ではあったが、運動部や吹奏楽部が部活動をしているようだ。
校庭から部活中らしい生徒たちの声がするし、校舎からは楽器の音が聞こえて来た。
「さて…」
恵斗は帽子をもう一度念入りに被り、一歩学校内に足を踏み入れた。
「あれ、恵斗!何してんだ?」
「あっ…!」
声の方に顔を向けると、隣のクラスの
同じ小学校出身の悠吾は、数少ない恵斗の友達である。
彼はサッカー部に所属している。
きっと部活の休憩中か何かなのだろう。
ちなみに恵斗はと言うと、れっきとした帰宅部である。
「よ、よぉ悠吾」
恵斗は不自然に目を逸らしながら返事をした。
いくら仲のいい悠吾とは言え、この髪の色がバレたら色々まずい。と言うか面倒くさい。
「…何でこっち向かないんだよ?て言うかお前、何だよその帽子」
挙動不審な恵斗の様子がやはり不自然に思えたのだろうか?悠吾がずいっと近づいて来た。
「な、ななななんでもない!!じゃあな!!」
ごめん悠吾!
恵斗は心で謝りながら校舎に向かって走った。
「あっ!!待てよ恵斗!!」
後ろから悠吾の声がしたが、止まる事はなかった。
結果、悠吾を無事に撒いたのはいいものの帰宅部の体力はたかが知れている。
完全にへばった恵斗は校舎の片隅で座り込み、壁と一体化しそうになっていた。
「くそっ…悠吾のやつ、」
悪態を悠吾についていた時、それは起こった。
「え…、」
ふと下を見下ろした恵斗は、自分の胸元が青く光っている事に気がついた。
何で今これが光っているんだ?
胸元から取り出した首飾りの先にある瓶の中の欠片が、青白い光を放っている。
「何でだ…?」
恵斗は辺りにある建物を見渡した。
左側が今寄りかかっていた校舎、右側に体育館がある。
恵斗はもう一度校舎に近づいてみる。
中庭に入った時にそれは起こった。
「………!」
胸元の欠片の光は、中庭に入った途端に突然フッと消えてしまったのだ。
「消えた……!」
恵斗は驚きの声を上げた。
試しに元いた場所に引き返してると、また欠片は青く光り出した。
「…………」
一体何でだ、と思いながら欠片を見ていた恵斗の背中越しに声がした。
「何だそれ?」
「うわああああああっ!!!」
突然急に後ろから聞こえて来た悠吾の声に驚いた恵斗は、飛び跳ねそうになりながら叫んでしまった。
心臓が飛び出るかと思った。
本当にびっくりさせないで欲しい。
「ゆっ、悠吾!!」
「お前なあ、帰宅部の分際で現役サッカー部のこの俺を撒けると思ってたのか?残念でしたー!」
べーっとおちゃらけながら目の前の悠吾は舌を出している。
恵斗は悠吾に一発軽い蹴りを入れた。
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