21話 手がかり

「はー…本当に青緑になってる。初音ミクと同じ色じゃん!」


逃げても仕方ないし、近いうちに知られるだろうと言う事に気がついた恵斗は悠吾に髪の話だけをした。


「朝起きたらこうなってたのか…こんな事ってあるんだなあ…突然変異か?」


「言っとくけど、本当に染めてないからな」


そんな事を言っても普通なら信じないだろうに、意外にも悠吾はあっさりと信じてくれた。


「分かってるよ。そんなキャラじゃないしなお前」


全く疑わずに信じてくれた事が、恵斗は少し嬉しかった。


「俺は信じるけどさ、明日からどうすんだ?間違いなく先生とか他の奴らには色々言われるぞ」


「そうだった……」


一時的にだけど、黒く染めるしかないかないのだろうか。

けどそれも染髪には変わりないし、気休めにしかならない。

とにかく、今は色々考えても仕方ない。


「…髪は何とかする」


今は髪よりも欠片の光だ。

目の前の体育館を恵斗は見上げる。

体育館に近づくと、欠片の光が強くなった。


「……………」


体育館の中でどこかの部が部活動をしているようだ。

ボールが弾む音や人の声が聞こえる。


「悠吾…体育館ってどこの部が使っているかわかるか?」


「え?確かバレー部とバスケ部かな」


悠吾はしばらく考えてから答えてくれた。


バレー部とバスケ部か。

知り合いはいない。

休憩が終わるから部活に戻ると言う悠吾と解散したあと、恵斗は体育館に行く事にした。





体育館に行くと、悠吾の言う通りバレー部とバスケ部が部活をしていた。

欠片はまだ光り続けている。


「この中にいるのか……」


帽子をかぶり直して、恵斗が中に足を踏み入れようとした時。


「こら!部外者は立ち入り禁止だぞ!」


恵斗に気がついたバレー部の顧問の先生からお叱りの言葉を頂いてしまった。

顧問の声を聞いたバレー部員たちが全員こっちを向く。

視線が痛すぎる。


「あっ……、す、すいません!」


焦った恵斗は足早に体育館から退却した。

仕方ない。

別の方法で明日の月曜日に探そう。


けど、収穫はあった。


ターゲットである2人目は、ベルナデットの言う通りうちの中学の生徒で間違いない。


そして、バレー部かバスケ部の2年生である。

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