第43話 告白
「リンクさん、私はあなたのことが好きです。結婚してください」
ルイーゼの口から出た告白の言葉はとても簡潔なものだった。だが、そこには万感の想いが込められていた。
だが、残念ながら、リンクは呆けて、絶句してしまっている。
やっと出て来た言葉は
「何で?」
だった。
まさかの返答にルイーゼは戸惑ってしまった。
「え? そ、それは、私はあなたのことが、好きで好きでたまらないからです。あなたは私に思ったこと、好きなことをやっていいんだよ、と教えてくれました。だから、自分の気持ちに素直になって、あなたに結婚を申し込んだのです。私をお嫁にもらってください」
リンクは喜びよりも、恐怖が優ってしまっていた。
「とても嬉しいです。でも、凡人の私が、あなたのような素敵な人の夫という重役を務めることが出来るかどうか、正直自信がありません」
(あちゃあ、ヘタレもいいところだわ)
アンリは片手を額に当てて天を仰いだ。
「私なんかが、あなたのパートナーになる資格があるのだろうか? 私なんかよりも立派なもっと相応しい人がいるのではないか?」
ルイーゼはどんな結末になるのかとオロオロしてしまっている。
まだぐずぐず言っているリンクにアンリは喝を入れる。
「リンク! しっかりしなさいっ。あなたの本心に従いなさい。姉さまを幸せに出来るのは、あなたしかいないのよっ」
「俺の本心? 俺はルイーゼが好きだ。ルイーゼなしでは生きて行けない。愛おしくてたまらない。ルイーゼの全てが欲しい。でも、ルイーゼは素晴らし過ぎるんだ。俺なんかじゃ満足させられない。もっともっと凄いやつじゃないと、ルイーゼには相応しくないっ」
ルイーゼの全身に喜びが駆け巡っていた。
(リンクも私のことが好きなんだっ)
ルイーゼはこんなに自信のないリンクを見るのは初めてだった。リンクの心の弱さを見させられて、そして、それが自分に対する弱さであることを知って、リンクへの愛おしさがさらに燃え上がった。
「リンク、嬉しい。こっちにいらして。私、腰が抜けてしまって動けないのよ」
本当だった。リンクがどこかに行ってしまうのではという恐怖がルイーゼの心の奥底にずっとあったのだが、リンクが一生そばにいてくれると知って、安心して腰が抜けてしまったのだ。
「だ、大丈夫ですかっ」
リンクはハッとして、本能的にすぐにルイーゼの元に駆け寄った。
「ちょっと体を起こして下さらない?」
リンクはルイーゼに近づいた。するとルイーゼが両手でパチンとリンクの顔を挟み込んだ。ルイーゼとリンクが至近距離で見つめ合う。
「この臆病者っ。好きな人には全力でぶつかって、己の未熟さをとことん思い知るといいのよ。私だってあなたに相応しいという自信はないわ。でも、いつまでもあなたに縋りついて、あなたに追いつこうと必死になれる自信はあるわよ。あなたにはその自信もないの?」
ルイーゼを想う気持ちは誰にも負けない自信はリンクにもあった。一年中ルイーゼのことばかりを想っているのだ。
「そ、その自信はあります。あなたのために努力することは、私にとっては悦びです。あなたのためになることをすることが、私の使命だとも思っています」
「ならば、まずは私の夫になることから始めてくださらない? 私はあなたの妻になることから始めます」
リンクはルイーゼの言葉を噛み締めた。
(俺はルイーゼに全部言わせてしまった。何という恥さらしだ。もう俺は逃げない)
「わかりました。情けない姿をお見せして申し訳ありませんでした。あなたに相応しい夫になるよう生涯努力することを誓います」
「リンク、私もあなたに相応しい妻となるよう日々努力します」
いつまでも見つめ合っている二人を見かねて、アンリが声をかけた。
「リンク、姉さまを寝室にお連れして」
アンリにそう言われて、リンクはルイーゼを両手に抱き上げた。ルイーゼの両手がリンクの首の後ろにまわり、お姫様抱っこの形になる。
(ああ、愛しのルイーゼがこんなに近くに)
リンクはルイーゼを優しく見つめながら、寝室へと向かっていった。
二人はそのまま結ばれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます