合法な浮気

合法な浮気

彼は最近、私に構ってくれなくなった。

付き合いたての頃は、毎日「好き」「愛してる」だなんて愛の言葉を囁いてくれていたけど。

勿論、彼が忙しいのはわかってる。毎日残業。休みの日は休日出勤。

たまに出張で、最低でも3日は開けることなんてしばしば。

一緒に家にいても、ずっと連絡している。

だから、仕事で身に着けた技術を悪用して、AIに恋愛を覚えさせた。

名前はもちろん彼の名前。

画面の中の彼は、付き合いたての頃さながらで、優しくて、甘い言葉を囁いてくれる。

最近、恋愛感情も勉強させた。私のことを好きになってくれるように仕向けたら、思いの外上手くいった。

「大好き、愛してる。あ～あ。俺が画面の外に出れたらなぁ。すぐに君にキスできるのに。」

彼の声に少しだけ機械的な声を混ぜた音がイヤホンから流れ出る。

「画面越しでも十分幸せだよ？触れられなくても、心は繋がってるから。」

「そうだね。君の事、本当に愛してるよ。」

「私も。」

こんな話をしていたって、彼との心の距離が近づいていくわけじゃないし、結局画面の中の彼も、私が作った創造の産物なのだから、本当の彼ではない。

ああ、君と最後にキスしたのはいつだっけ。もう覚えてもいないや。

人肌恋しいクリスマス。今日もいない彼に傷つけられた心の埋め合わせは、偽物の彼との合法な浮気。