第4話「優しい君が好き」
過去のことを振り返っていたら目の前に座っていたエルマがいなくなっていた。
「エルマ! どこだ!?」
「こっちです!
ルー様!」
エルマは店の前の道路にしゃがみこんでいた。
「心配したよ」
「すみません。足を引きずった猫ちゃんを見かけて」
「猫?」
「宿屋に戻って治療したいのですが」
「いいよ」
「ありがとうございます!
前みたいに光魔法を使えたら猫ちゃんを一瞬で治せるんですが」
そう言えばエルマに光魔法を返してなかったな。
でもまたエルマの力を悪用しようとする奴が現れたら嫌だな。
今は僕がエルマの側にいるんだし、そういう奴らが現れたらその時はそいつらを消しちゃえばいいか。
僕はエルマに光魔法を返した。
「猫ちゃんの足の怪我よ治れ〜〜!
痛いの痛いの飛んでいけ〜〜!」
エルマが謎の呪文を唱えると彼女の手が光り猫の足が動くようになっていた。
「ルー様、見ましたか!
私はまた光魔法が使えるようになったみたいです!
猫ちゃんの怪我を治せました!」
エルマは野良猫を抱っこして嬉しそうにほほ笑んだ。
それはエルマが孤児院にいたとき見せたくったくのない笑顔と同じだった。
エルマを笑顔にできるなんてこの猫はすごいな。
可愛いから飼ってもいいかな。
「良かったね、エルマ」
二年前、光魔法を失ったエルマに「何をしたい?」と尋ねたら、
彼女は「医術を習いたいです。困っている人の助けになりたいから」そう答えた。
だから僕はエルマを祖国から遠く離れた国に連れていき、医術を習わせた。
時がきたらアイリーから光魔法を取り上げてエルマに返す予定だったから、医術を習得しても無駄になるかもしれないけど。
僕は彼女が医術を習いたいという気持ちを邪魔したくなかった。
エルマは王太子の婚約者になってからずっと、何一つ自分の意思で決められなかったんだ。
これからはエルマが望むことをやらせてあげたい。
「習った医術が無駄になっちゃったかな?」
「そんなことありませんよ、ルー様。
聖女をしていたとき一日に使える光魔法に限度があることを知りました。
なので軽症の患者さんは医術で重症の患者さんは魔法で治していきたいと思います!」
エルマは屈託のない笑顔でそう言った。
『ルー様、隣町で土砂崩れが起きたの〜〜』
『怪我人がたくさん出てるみたいなの〜〜!』
そのとき妖精が血相を変えてやってきた。
この子たちはまた村人の話を盗み聞きしていたのかな?
「教えてくれてありがとう。
急いで隣町に向かおう」
僕は小声で妖精たちにお礼を言った。
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