第3話「エルマとの出会い」



そんなときエルマに出会った。


彼女は五歳で親を亡くし、教会が運営する孤児院に引き取られた。彼女は同じ境遇の子供たちを励まし、誰かが熱を出すと献身的に看病していた。


僕はエルマが幼いときから彼女をずっと見守ってきた。


でも彼女に光魔法を与えるかどうかは迷っていた。


光魔法が彼女を幸せにするとは限らないから。


エルマが十歳のとき孤児院の子が何人も流行り病にかかった。


しかし孤児院には全員を医者にみせる金はなく、彼らは死を待つだけだった。


そのときエルマは病気の友達を助けたいと神に願ったんだ。


僕は迷ったけどエルマに光魔法を授けた。


孤児院の子供たちは全員治ったけど、教会にエルマの力が知られてしまった。


彼女はすぐに聖女として認められ、あれよあれよと言う間に王太子の婚約者になった。


無邪気な笑顔がチャームポイントだったエルマは王太子妃教育が進むほど笑わなくなり、表情が消えていった。


そんな彼女を見ているのは辛かった。


それでも彼女は泣き言一つ言わずに王太子妃教育に励み、教会に言われるまま貴族の治療を続けた。


エルマは貧しい人たちの治療を望んだが、教会に却下された。


教会はエルマが患者を治療する見返りに貴族から多額の治療費を得て私腹を肥やしていた。なのにエルマには一銭もやらない。


教会の人間だけでなく城の人間のエルマに対する扱いも酷かった。


特に王太子がしたことは許せない。


奴はエルマの顔を見るたび「グズ」「ブス」「陰気」「地味な髪の色」と悪口を言いエルマを虐めた!


エルマの髪と目の色は僕と同じなので腹が立った。


それにエルマはブスじゃない! キュートでとってもチャーミングな子なんだ! 


歴代の国王や王太子は、愛していなくても聖女に敬意を持って接していた。


だけどあの王太子は違う。


結婚前からあれでは先が思いやられる。


あんな奴がいずれ国王になるのか。あんな奴が国王として統治する国なんか守りたくない。


王太子、あいつだけは絶対に泣かす!


それには「竜神」という肩書きが邪魔だった。


酒場やギルドで不良が気に入らない奴を殴っているのが羨ましかった。


「ああ、いっそ神を辞めて不良になれたら……」


思いっきり王太子に復讐できるのに。


『嫌ならやめちゃえばいいの〜〜』

『ルー様、最近つまらなそうなの〜〜』


妖精たちに愚痴を聞かれていた。


「そうだね嫌なら神など辞めてしまおう。

 そして不良になろう!」


僕はそのとき神を辞めて不良になると決めた。


その時から僕は人を欺くことをなんとも思わなくなっていた。


不良だから人間をペテンにかけて国を破滅させることもある。


人間にリウマチと痛風になる呪いをかけることもある。


不良って楽しい〜〜!






もしよければ★から評価してもらえると嬉しいです!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る