第3話「笑える」
「公金横領や貴族令嬢への卑劣な虐めを行ったエルマを王太子である俺の婚約者にしておくわけにはいかない!
よってエルマとの婚約を破棄する!
そして聖女アイリーを新たな婚約者とする!」
会場内に再びどよめきが起こる。
だがすぐにどよめきは歓声へと変わった。
古くからの貴族ほど平民のエルマが王太子の婚約者であることに反感を持っていたからな。
「王太子殿下との婚約破棄承知いたしました。
お二人のご婚約を心よりお祝い申し上げます」
王太子の婚約者の地位も失ってもエルマは眉一つ動かさなかった。
聖女の職と王太子の婚約者の地位を同時に失ったんだぞ?
奴はなんで落ち着いていられるんだ?
「エルマ、貴様の犯した罪は万死に値する!」
「死」という言葉にさすがのエルマも眉をピクリと動かした。
いいぞ、もっと動揺しろ!
俺は貴様と婚約したせいで「王太子の婚約者は平民の孤児」と馬鹿にされてきたんだ。
こんなことぐらいでは溜飲が下がらない!
「だが心優しいアイリーは貴様の死を望んでいない!
アイリーは己を虐げていた貴様の減刑を願っている!」
「私は竜神ルーペアト様の加護を得て聖女の地位を賜った身。
無益な殺生は望みません。
エルマ様どうか生きて罪を償ってください」
アイリーが瞳に涙をためながらそう言うと会場のあちこちから、
「アイリー様はなんと優しい」
「まるで天使のようだ」
という声が上がった。
いいぞ、もっとアイリーを褒め称えろ!
「ハッ……竜神の加護ね、笑える」
エルマの口が動いたような気がしたが俺には彼女が何を言ったのか聞き取れなかった。
「聖女アイリーの願いを聞き届けエルマの罪を減じ国外追放処分とする!」
奴のことは「元聖女の体を好きにしたい」という隣国の物好きの商人に売る予定だ。
こんな美人でもブスでもない胸がぺったんこの平民の孤児のどこに価値があるのかわからないが、欲しいと言うならくれてやる。
小遣いのたしにくらいなるだろう。俺のお小遣いに貢献できたことを感謝するがいい。
「エルマを拘束し隣国との国境まで連行せよ!」
「承知いたしました!」
俺が衛兵に命じると、エルマはその場で拘束された。
「いい気味だ」
「平民が調子に乗るからよ」
「これからは平民の泥臭いにおいを嗅がなくてすみますわね」
「平民がパーティに参加すること自体、前々から気に入らなかったんだ」
客がエルマに聞こえるように奴の悪口を言った。
いいぞもっと言ってやれ、エルマの心を折るんだ。
☆
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