第2話「いつにもまして表情がない」
俺はパーティに国中の貴族を招待し、その場所でアイリーとの婚約を発表することにした。
パーティでエルマから聖女の地位を剥奪。アイリーを新たな聖女として任命し、そのあとアイリーとの婚約を発表する計画だ。
王太子である俺にそこまでの権限はないが王である父の許可はとってある。
アイリーに僕の髪と瞳の色と同じ藤色のドレスとアクセサリーを贈り、僕はアイリーの瞳の色である青のジュストコールをまとった。
アイリーをエスコートしてパーティ会場に入ると招待客の目が俺たちに釘付けになった。
「素敵」「まるで一対の人形のようだ」「美男美女でお似合いですな」なんて声も聞こえる。いいぞ、もっと称賛してくれ。
美しい見た目を褒め称えられるのも心地よいが俺にはやることがある。
「聖女エルマはいるか!
いるならすぐにここに来い!」
先に入場していたエルマを呼びつけた。
しばらくしてエルマが俺の前にやってきた。
エルマは濃い緑色の流行遅れのドレスをまとっていた。平民のエルマにはお似合いだ。
奴は感情のない顔で僕たちを見ていた。
昔はもっと表情が豊かだったがいつの頃からか笑わなくなった。
奴の教育係は「王太子妃教育の賜物です」と言っていたが、笑顔の消えたブスは余計に不細工に見える。
澄まし顔というのは美人にしか似合わない。
それにしても今日はいつにもまして表情がないな。
まあそんなことはどうでもいい。俺は今からこいつを地獄に叩き落とすのだから!
「先日エルマは光魔法を失った!
よって今ここでエルマから聖女の身分を剥奪する!
そして竜神ルーペアトより光魔法を授かった伯爵令嬢のアイリーを新たな聖女に任命する!!」
会場は一瞬のどよめきのあとアイリーを称賛する声と拍手喝采に包まれた。
高位の貴族ほど、平民の孤児であるエルマが聖女の地位についていることを快く思っていなかった。
アイリーが新たな聖女に選ばれたことを皆喜んでいるようだ。
エルマを除いては……。
エルマはいつにも増して表情筋が死んでいた。
聖女の身分を剥奪するって言ったのに無表情かよ。
つまらない女だな。みっともなく泣きわめけばいいのに。
「聖女の任を解かれたこと承知いたしました。
新たな聖女となられたアイリー様にお祝いを申し上げます」
エルマは温度のない声でそう言うとその場でカーテシーをした。
「まだ話は終わっていない!
エルマ、貴様は俺の婚約者の身分を悪用し国庫の金を横領した!
その上貴様は聖女の職に就いていたとき当時伯爵令嬢でしかなかったアイリーを虐げた!
アイリーを突き飛ばしたり、アイリーの頭からお茶をかけたり、アイリーのドレスを破ったり数々の嫌がらせをした!
知らないとは言わせないぞ!」
横領は冤罪だが聖女の地位を失ったお前を庇う奴はここにはいない。
奴の名をとことん貶めてやる。
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