第13話 刑事は若き経営者の裏の顔を探る⑴
「カロン、『ぽぴいしーど』のオーナーの正体がわかったぜ。
非番開けの俺を一課に呼びだしそう切りだしたのは、百目鬼刑事だった。
「大学院生?現役の学生がやくざから店を任されてるってのか?」
「そうだ。……もっとも学内では奴のビジネスはほとんど、知られていないようだがな」
「奴と『子供使い』を結びつけるような証拠はありそうか?」
「経営に関する指示は主にSNSを通じて行っていて、店に顔を出すことはほぼないらしい。お前さんに姿を見られた事はある種、不覚を取ったと言うことなのかもしれない」
「どうにか『子供使い』との繋がりを暴き出せれば、逮捕につなげられるかもしれないな」
「まあそれには本人と接触するのが手っ取り早いだろうが、そう簡単には認めないと思うぜ」
「とりあえずそいつがよく行く場所を調べて、接触してみるさ。……それにしてもよく、身元がわかったな」
「うちの課にいるベテラン刑事の甥がN大の学生らしくてね。学生の中にやばい店のオーナーをしてる奴がいるっていうSNSの噂を拾い集めてくれたらしい」
「なるほどな。一課のベテランより現役学生の方が情報の収集にたけてるってことか」
「まあそういうことだ。ネットの扱いに関しちゃ、俺たちは学生の足元にも及ばないよ」
「ありがとう、これで捜査が多少、やりやすくなった」
俺は苦笑しながら百目鬼に礼を述べると、一課の隣にある吹き溜まり部屋へと戻った。
※
「烏羽田圭さんですね?」
「……そうですが、何か?」
自然食カフェ『てんだねす』の窓際席でタブレットを操作していた青年は、俺たちが声をかけると耳からイヤフォンを外し怪訝そうに首を傾げた。
「おくつろぎのところ、失礼します。我々は三途之署捜査一課特務班の者です。……少しお話、いいですか?」
「はい、構いませんが」
圭はタブレットを脇に避けると、俺と沙衣の方に向き直り如才ない笑みを浮かべた。N大OBが経営するこの店に烏羽田圭がほぼ毎日通っているという情報を寄せてくれたのは、N大に甥がいるという一課のベテラン刑事だった。
帰国子女で一年生の時から秀才の誉れが高かったという圭は一見すると、内気そうな目立たない学生と言う印象だった。
だが俺は先日、笹原瞳を得体の知れない「もや」で取りこもうとした姿を目撃している。いかにも好青年と言った見かけにそうやすやすと騙されるわけにはいかないのだ。
「これから我々がお尋ねする事柄の中で、思い当たることがあったら教えて下さい。……もちろん、違うと思う点があれば遠慮なく指摘していただいて構いません」
俺がそう前置くと、圭は「どういった質問でしょうか……」と不安げな表情を見せた。
「
「……僕がオーナーをさせて頂いているお店です。それが何か?」
刑事相手に下手に誤魔化すのは得策でないと判断したのか、圭は意外にあっさりと自分がオーナーであることを認めた。
訝ることもなく即答する圭を見て俺は一瞬、この学生が店のオーナーと同一人物であることを疑いそうになった。どう見てもこの学生の方が『子供使い』に操られそうな雰囲気だったからだ。
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