第19話「社交界の華とリックのやらかし」



胸元の大きく開いた体のラインがはっきりと分かるスカートに大きくスリットの入ったデザインのドレスを着てパーティに参加すれば、わたくしのナイスバディに殿方はメロメロ。


色んな男性に声をかけられたが、特に年上の美丈夫との会話が特に楽しかった。


いままで同い年か年下の男性しか相手にしてこなかったから知らなかったけど、大人の男性ってこんなにも女性の扱いになれているのね。


彼らは女性が何を言われたら喜ぶかよく知っている、やぼてんのフォンジーとは大違い。


「可愛い」「美しい」「綺麗だ」「可憐だ」と耳元で囁かれ、わたくしは舞い上がっていた。


見目麗しい高位貴族の男性とダンスを踊り、一夜の関係を楽しんだ。もちろん周りにバレないようにうまくやったわ。


そんな生活が一年ほど続いたある日、学園のパーティでリックがやらかしたというニュースが飛び込んできた。


わたくしが歳上の殿方に夢中になっている間に、リックは男爵家の庶子の美少女に夢中になっていたらしい。


そして第二王子と一緒になって学園のパーティで婚約破棄を宣言し、そこでエミリーに罵詈雑言を浴びせたようだ。


わたくしはこのとき、リックたちより先に学園を卒業してしまったことを後悔した。


公衆の面前で婚約破棄され泣きべそをかいているエミリーの無様な姿を見損ねるなんて、一生の不覚だわ。


エミリーが泣き叫びリックにすがる姿を、ぜひ特等席で見たかったわ!


ザロモン侯爵家の次男であるリックのやらかしを知ったわたくしの父は、わたくしとフォンジーの婚約を破棄するべきか真剣に悩んでいた。


リックのやらかしのせいで侯爵夫人になれないのは困るわ。


でもリックのやらかしのせいで傾いた侯爵家に嫁ぐのはもっと嫌だわ。


しかし後日リックたちが男爵令嬢に魅了の魔法をかけられていたことがわかり、リックたちは軽い罰を受けるだけですんだ。


それどころか「魅了魔法にかかっていた人を責めるのは可哀想」と、リックたちに同情が集まっている。


リックに世間の同情が集まると、父は「ぜったいにフォンジーとの婚約は解消するな! 世間の同情にを利用し事業を拡大するんだ!」と言ってきた。


父は手のひら返しが早いし、利用できるものは何でも利用する性格だ。


しかも世間の同情の効果はわたくしが思っていたよりも大きく、リックの兄の婚約者であるわたくしにまで世間は優しくしてくれた。


今まで世間に同情されるなんて惨めだ、そんなふうに惨めに落ちぶれたくないと思っていましたが……これは、案外使えますわね。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る