第18話「領地に行くフォンジー、王都に残るデルミーラ」



それから何年かして、わたくしとフォンジーは学園を卒業した。


わたくしたちが卒業した翌年、リックとエミリーが学園に入学した。


本当は卒業後すぐにフォンジーと結婚する予定だったが、昨年ザロモン侯爵家の領地が水害に見舞われ、彼が侯爵の代わりに領地の復興事業の指揮を取ることになったのだ。


ザロモン侯爵は魔術師団長の職にも就いているので、とても領地の復興までは手が回らないのだ。


フォンジーから「君との結婚を二年延期したい」といわれた時は婚期が遅れることに腹が立った。


しかしこれはある意味チャンスだ。


フォンジーは良く言えば質素倹約をむねとし慈善事業が大好きなお人好しの節約家、悪く言えばしみったれている。


口を開けば「誕生日プレゼントはいらないから孤児院に寄付してほしい」とか、「今年は日照りが続いて民が困窮しているからパーティへの出席を控え、華美な装いも慎もう」とか、貧乏くさいことばかり言う。


そんな質素倹約が服を着て歩いているようなけちくさいフォンジーから離れ、二年間も王都で過ごせるなんて天国だわ!


二年間遊んだあとは、フォンジーと結婚して侯爵夫人になる!


わたくしの人生設計は完璧だわ! 人生はバラ色ね!


フォンジーが田舎に引っ込んだら、おしゃれをしてパーティやお茶会に参加しよう!


フォンジーが着るなと言っていた露出度の高いドレスは着放題!


身に付けるのを嫌がっていた派手なアクセサリーも付け放題!


民の困窮してるだの、孤児の住居がどうたらだの、ノブレス・オブリージュの精神だの、「君も誕生日プレゼントも教会に寄付して見るというよ心が安らぐから」だの……善意を押し売りされることにも、道徳の精神を説かれるのにもうんざりしていたのよね!


これからはフォンジーの目を気にせず、豪華なアクセサリーを沢山買えるわ!


「そのアクセサリー代で孤児の食事何食分が賄えるのか……」とか、嫌味を言われることがなくなるのね!


うんと飾り立てて、わたくしの美しさを貴族の令息たちの目に焼き付けてやる!


フォンジーがいない間に、ひとときのアヴァンチュールを楽しむのも良いかもしれないわ!


わたくしはフォンジーがいない間、王都での生活を楽しむことにした。




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