第43話 向かう冒険者!
「『ミストルテイン』よ、次の依頼だ」
その日、俺たちは謁見の前に呼び出され国王の話を聞いていた。どうせ依頼の話だろうと思っていたのだが、本当に依頼の話だったみたいで。
「次はどこへ迎えば良いのでしょうか」
「北西だ」
「北西」
確かここから北に向かえば、そこには神聖国があったはずだ。その西に皇国がある。その先は確か……公国か。狭い土地に国が多すぎる。
「次は一体何の討伐でしょうか」
「うむ。『魔王』だ」
「『魔王』で、ございますか」
魔なる王。つまりは、人に害するものの王というわけだ。世界には魔王を自称する者も、魔王と呼ばれる者も含めて相当数がいる。その中でも、特に力を持ったものを“世界の敵”と呼んだりしているのだ。
「つい先日、公国が
「なる、ほど……」
『機骸の魔王』と言えば、その名前を知らない者はいないほどの有名人だ。“魔女”と同じく“世界の敵”であり、これまでに多くの人間、亜人を殺している。
それが、国を潰したと。
「あそこは雪と氷に閉ざされた大地……。だったはずだったのだが、幾分おかしなことが起こっているらしい」
「おかしなこと、でございますか」
「うむ。大地が『赤く』なったり、鬱蒼とした『樹』が生えたりしているらしいのだ」
「それは……」
「今回の依頼は『機骸の魔王』の討伐、あるいは拘束。そのどちらかだ」
「承知いたしました」
「頼んだぞ。『ミストルテイン』」
その言葉を最後に、俺たちは謁見の間を後にした。
すぐに俺たちは家に帰ると“征装”に着替えて出発、竜車を走らせて北西を目指した。
「……レグ」
「ん」
竜車の中でエマが静かに俺を見ていた。
「分かってる」
大地を
「で、でも樹って何?」
マリが走り続ける竜車の中で俺にそう聞いて来た。
「見てみないと分からん……。でも、もしかしたら『バルムンク』が討伐した『ヴァルク=ダルク』かもしれん」
「それも神様だったの?」
「ああ。【豊穣の神秘】って言って、どんな荒れ果てた土地もジャングルにしてしまえるらしい」
「……凄い」
「凄いんだけど、このジャングルの植物ってのが厄介らしいんだ」
「植物が? トレントみたいな魔物ってこと?」
「レンさんが言うには本当にそんな感じらしい。植物が動くから地図が使えないし、人が森に入ると攻撃してくるんだとさ」
「……それどうやって神様殺したの?」
「爆破したり、切り開いたり……。とにかく、真正面から突破したっぽい」
「じゃ、じゃあ。その消えちゃった公国……だっけ? 公国に生えてきた樹はその神様の影響かも知れないってこと?」
「かもしれない。断定は出来ねえよ」
そもそも『
「レグさん、『機骸の魔王』について教えてください」
「ん? フェリ、お前武器変えたか?」
「あ、はい。これは……先生のおさがりです」
「先生?」
「すいません。正体は言うなと言われてまして」
どっかで見たことあるような武器だな……。でもどこだっけ、思い出せんぞ……。
見ている限りは普通の片手剣だが、黒と茶色の間のような色合いでグラデーションを描いている。僅かに脈動している光は、剣が生きていると思うような感じだ。
「うーん、そうだな。俺だって別に知り合いってわけじゃないんだけど」
「はい」
「狂人だな」
「はい?」
「俺がまだ『ヴィクトル』の時に、ガランの大迷宮っていうダンジョンをクリアしたことがある」
当時は最難関と言われていたダンジョンだった。多くの冒険者がそれに挑み、命を散らした。若い俺たちは自分たちの実力を鑑みて、それでも攻略出来るとガランの大迷宮に挑み……そして、攻略した。
「ヴィクトルがSランクになった有名なダンジョンですよね。それがどうかしたんですか?」
「そのダンジョンを
「ヒイラギツバサ? 変な名前ですね」
「それは俺も思った。アイツは俺たちが攻略した後に姿を見せて、このダンジョンをあげる……とか何とか言ってカードを渡してきた」
「カード? それ今もレグさんが持ってるんですか?」
「サムが持ってるんじゃないか? いや、報酬の話はどうでも良くて。その後、俺たちは
「……いえ。分かりません」
「
「どんな……顔、だったの……?」
俺の中ではかなり上位にはいる気持ち悪い経験だ。生理的嫌悪感と言うのだろうか、生物としてあれは受け入れられない気持ち悪さだった。
「うへえ。思い出すだけでもちょっとあれなんだけどな……。髪の毛は金髪。作り物みたいな綺麗な金髪だ。そんでもって目が銀。顔は……。説明が難しいな、子供だったし。表情が無かったが、まあそれなりに可愛らしかったと思うぞ? それで胸のところに
可愛らしかった、と言った瞬間エマの顔が不機嫌そうになった。何でだよ。
「そのホムンクルスの名前は分かりますか?」
「名前なんて聞いてどうするんだ?」
「いや……。何かの手がかりになるかもと思って……」
「……フィオナ、だったと思う。作った奴は変な名前なのに、こっちは普通の名前だったからやけに頭に残ってるんだ」
「で、でも別に同じ顔のホムンクルスなら……
マリのシンプルな疑問。
確かに真理を求める
だが、俺が明らかに奴を狂人と判断したのは理由がある。
「アイツは
「……へ?」
「自分で妹の身体を分解して、パーツに分けてホムンクルスを作る様をアイツは
「じ、自分の妹を? 何でそんなことを……」
「
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