第2話 冒険者ポール 異次元な村


 俺の名前はポール。

『太陽の風』という名前のパーティのリーダー兼雑用だ。


 謎の村にやってきた俺たちだったが、まさかお目にかかるとは思わなかった転移門を今

まさに潜った。


 むっわぁ!

 門を越えた瞬間、俺の体に真夏のような熱波が襲った。


「はぁああああ!?」


 そして次の瞬間、俺の目にはギラつく太陽と青い空が映っていた。

 心地よい風が髪を撫で、耳には活気が溢れた声が届く。

 それはまるで真夏のようなっていうか、真夏そのもの!?


「どうどう!」


 その声に俺はハッとした。

 手綱を引くのを忘れて、危うく前の馬車に突っ込むところだったのだ。

 それを屈強なオッサンが止めてくれていた。


「ようこそ、リゾート村へ!」


 そう言って俺に花びらをぶっかける謎の儀式をしてきたのは、俺が今まで見た女の中で一番綺麗に思える美女だった。しかもおヘソを出してる!


 いや、いやいやいや!

 道の先にはそんな美女がたくさんいて、みんなが花びらを撒いてアーガス商会を迎えているじゃないか!


「お客さん、手綱はしっかり持ってくださいよ。離しますからね?」


「あ、ああ。すまん。助かった」


 馬を抑えてくれた屈強なオッサンに、俺はやっとのことでお礼を言い、手綱を握りしめた。


 再び走り出した俺たちの馬車を、道に並んだ美女が花びらを撒いて歓迎してくれる。

 車列は緩やかな下り坂を下りていくのだが、美女たちの背景にはとんでもなく綺麗な海と大都市が広がっていた。


「ふぁああああ、綺麗ぇ!」


「なにこれ、すっごーっ!」


「おお、神よ!」


 女魔法使いと女狩人が歓声をあげ、女僧侶が創造神に祈った。

 その頭に、美女たちが投げる赤い花びらが降り注ぐ。


「俺は夢を見てるのか?」


 ははっ、昨日は少し酒を飲んだし、まだ寝てんだな。そうに違いない。


「……」


 んなわけあるか!

 何年冒険者やって、何回野営してると思ってんだ。夢と現実の区別くらいつくわ!

 となると、これ現実か? やっばぁ!


 長い坂を下りきると、そこはちょっとした広場になっていた。

 大量の馬車を一時的に停められるように工夫されており、アーガス商会の馬車もそこに停まっていた。


 俺たちもそれに倣って、馬車を停める。

 すると、すぐに少女の一人が俺たちの下へやってきた。


「どうぞ、この村の案内図でーす! お客様の人数は何名様でしょうか?」


「む、村? え、えっと6人だが」


「では6枚どうぞー! 楽しんでいってください!」


 少女はそう言って、俺に紙を6枚くれた。


「なになに!? なにもらったの!?」


「ちょ、おま!」


 女魔法使いがひょいと俺の手から紙の束を全部奪って、荷台に引っ込んでしまった。


「すっごーい! なにこれぇ!?」


「すげぇ、なんだそれ! おい、俺にもくれよ」


「これってまさかこの町の地図か?」


「これタダなの!? うっそぉ!」


「本当に貰ってよろしいのでしょうか?」


 仲間たちが荷台でキャッキャし始めた。

 俺は馬が勝手に走らないよう注意しつつ、後ろに文句を言った。


「おい、とりあえず降りろ! 話ができねえ!」


 俺たちは馬車から降りて、作戦会議を始めた。

 もちろん、女魔法使いがガメていた俺の分の案内図は取り返した。

 すっげぇ、なにこの地図!


「とりあえずだ。馬車が邪魔だ」


「「「異議なし!」」」


「あと、服が暑すぎる!」


「「「異議なし!」」」


 この町を見て回るのに、馬車は邪魔に思えた。

 というか、運転したくない。

 あと、俺たちの服は冬服なので、暑すぎる。


「なあ、君。ちょっと教えてほしいんだが」


 俺は先ほど案内図をくれた少女に声をかけた。


「うっわ、超可愛い!」


 女魔法使いがジロジロと少女を見る。やめろ。

 というか、男の俺たちが遠慮してるのに、女のお前がなぜグイグイいくんだよ。


「オススメの宿はあるか? 馬車を止められるところがいい」


「宿は全部オススメになっていますが、それぞれ特色が違っていますね。失礼ですが、ご予算と滞在期間はどのくらいですか?」


「とりあえず、1週間。予算はそうだな……3人部屋1泊銀貨12枚までで。それを2部屋取る」


 S級冒険者の俺たちの稼ぎは良いので、いつもは3人部屋銀貨10枚の部屋に泊まっている。それより2枚多く払うわけで、少しばかり奮発した。


 後ろから「けちけちせずに倍くらい払えよー」と文句を言われるが、金の管理してねえお前らが言うんじゃねえ!


「それですとー」


 少女は自分が持つ案内図に、筆でササッと丸をつけていく。


「この5つが良いかと思います。海沿いをご希望でしたら、こことここ。すぐに海で遊ぶことができますし、ベランダからの風景も最高です。プールも近くて楽しいですよ。ショッピングを楽しむのでしたら、この3つが便利です」


「え、海で遊ぶ?」


「はい。この村ではみんな水着を着て、海で遊ぶんです。プールもそうですが、実際に行ってみるとわかりますよ。村の住民が遊んでいますから」


 よくわからん文化だな。

 海は魔物の領域だし、危険はないのだろうか?

 だが、なぜだろうか、初めて聞くのに『水着』という物の名前は魂をざわつかせてくる。


「あと、案内図のこの青い線が、鉄道馬車という乗り合い馬車の親戚みたいなのが走っているルートなので、停車場で待っていれば遠くまで移動することもできます」


「ふむふむ」


 なんだろう、説明だけ聞いても全然わからんぞ。

 実際に町に行って見学してから、もう一度人に聞いた方がいいかもしれないな。


 俺たちは少女にお礼を言って、海の近くの宿に向かうことにした。


 真面目な女僧侶を隣に座らせて地図読みを任せ、馬車を走らせる。

 荷台の前と後ろでは仲間たちが外を眺めてキャッキャと大騒ぎ。


「こりゃ、馬糞を嫌うのもわかるな」


 馬の尻尾で揺れる魔道具のリングを見て、俺は言った。


「はい。町がびっくりするほど綺麗です。見てください、あのガラスの窓。格子の間がまるでないみたいです」


「たしかにな。俺はこの道に感動してる」


 俺たちが通っているのは大通りなのだが、道が歩きと馬車で目的ごとに分けられているんだ。

 これは王都も同じなのだが、王都の場合は境界があやふやなんだ。しかし、この町の場合は、交通の種類ごとに白い柵で分けている。あとで知るがガードレールというらしい。


 さらに道のど真ん中には、先ほどの少女が言っていた鉄道馬車っていうのが走っていて、なんと鉄の道を馬車が走っているんだ。

 ルートが決まっちまうだろうが、誰でも手軽に使えるので、町人からすればすげぇ便利だろう。


 そんな町にやってきた俺たちの馬車の、景観に合ってなさよ。

 内側こそ綺麗にしているが、旅の風で幌はくたびれており、荷台の外側は泥汚れでボロボロ。王都の貴族街に迷い込んでもここまで浮かないんじゃないか?


 さらに言えば、服装。

 俺たちもS級冒険者だからそこそこ良い服を着ているが、この町の人たちの服は圧倒的に綺麗だ。最上級の布地で町娘風の服を作ったという感じだろうか。

 女たちには、早めに服を買ってあげないとちょっと可哀そうだな。


 それからも驚きの連続を味わいながら町を進み、俺たちは宿がある海沿いに出た。


「「ふっわぁああああああ!」」


「なんて美しいんでしょう!」


「「「ふぉおおおおおお!?」」」


 仲間たちが歓声を上げるのは、道から見える海の景色だ。


 真っ白な砂浜に空が落ちてきたように青い海。

 女たちはこれにいたく感動している。


 一方の男たちはそこで遊ぶ女の姿に歓声を上げていた。

 みんな、過激な服装をしているのだ。俺は本能的にあれこそ水着なのだと理解した。

 少なくとも太ももと肩から先は全員が出していて、過激なやつだと胸の谷間やヘソまで丸見えだ。なんだよ、あの服装! えっろぉー!


 ひとしきり大興奮したあと、俺たちはその近くにある宿に入った。


 これがまた冗談みたいに綺麗な宿で、酔っぱらいのゲロで飾り付けられたような俺たちのよく知っている壁や床じゃないんだ。


 そんな宿が3人部屋で1泊銀貨10枚!

 俺が提示した予算が銀貨12枚だったわけだが、なんとこの町が開放された記念にこれから1か月間は少し値引きされているらしい。通常だと3人部屋で銀貨15枚の宿だな。


 さて、問題は部屋だよ。

 ここまでこの町を見ていると、否が応でも期待感は膨らむ。


「ふっわぁあああああ!」


 まずは女たちの部屋を見てみたのだが、これがすげぇんだ。


 3人分のベッドは当然あるのだが、これがどれもふっかふか。

「私ここー!」とベッドに飛び込んだ女魔法使いが、そのあまりのふかふか具合に30cmくらい空中に跳ね返ったほどだ。

 だが、それのせいでベッドに土埃がついた。

 女僧侶と女狩人は、これから服を買うのがわかってるから、自分のベッドは汚さなかった。


 それにしても、このベッドはどういう藁を使ってるんだろうか? もしかして、綿だろうか? なんにせよ、人が跳ね返るような弾力だし魔物素材なのだろうな。


 ベッドの他にはやたらと足が短いテーブルがあり、その周りには見たことのないタイプの椅子が置いてあった。これも後に知ることになるが、ソファという椅子らしく、もうこれだけで眠れちまうような代物だ。


「おい見ろ! 水が無限に出てくるぞ! しかもこの水うっま!」


 レンジャーが変な器具を触って、金属の筒から水をジャージャー出していた。お前はレンジャーなんだから用心しろや!

 ていうか、出し過ぎ禁止って書いてあるだろうが!


「この中に氷とでかいコップが入ってるわよ! しかもこの中、超冷たい!」


「なんだなんだ、前の客の忘れものか?」


「リーダー見て見て! ここおトイレみたいだけど、住めるよ!」


「お前はまたバカなこと言って……ホントにこりゃ住めるな!?」


 もうしっちゃかめっちゃかだ。

 王都に来た田舎者だってもうちょっと大人しいと思う。


「はぁー、なんて美しいのでしょう」


 そう言うのは女僧侶。

 俺は癒しを求めてそっちへ行った。

 おっと、盾戦士もいたか。まあ、あっちはうるせぇからここにいさせてくれ。


 2人がいた場所は風に揺れる白いカーテンの向こう側で、ベランダになっていた。

 そこには木組みに布を張って作られた面白い椅子があり、俺がいま目にしている光景をのんびり見られるようになっていた。


 そう、そこはまさに絶景。

 白い砂浜と青い海、真っ白な雲がゆっくりと泳ぐ青空は、まるで吟遊詩人が謡うおとぎ話の楽園のようだった。


 これが銀貨10枚の部屋。

 実際には15枚だが、どちらにしても平民だってちょっと頑張れば普通に払える金額で泊まれる。

 嘘みたいな町だ。


 男の部屋はゴミなんてオチはなく、同じ作りをしていた。

 女魔法使いのアホさを見ていた俺たちはベッドを汚さずに、そのまま部屋を出た。


 宿の受付の少女に話を聞くと、冒険者用の布の装備を売っている店もたくさんあるようだ。少女は、案内図へ印をつけていくつかの場所を教えてくれた。


「あっ、服を買いましたらその場では着替えないで、一度戻ってくると良いですよ。この宿には大きなお風呂がありますから、さっぱりしてから新しい服に着替えられますから」


「「お風呂があるの!?」」「お風呂があるんですか!?」


 女たちが声を揃えて歓声をあげた。

 少女に案内してもらうと、そこは男湯と女湯が分かれていて、女湯の先で女たちが「きゃぁあああ!」と嬉しそうな声を上げていた。


「ほら、早く行くわよ!」


 帰ってくるなり、入口で待っていた俺たちの背中を女どもが押してきた。


 再び町へ出たが、今度は歩き。

 しかし、女どもに急かされて、あまりゆっくり町を見られない。


「リーダー。予算は?」


 俺がパーティ資金を管理しているので、盾戦士が尋ねてきた。

 その言葉に、「金貨30枚!」とすかさず手を上げる女魔法使い。アホか。


「物を見てからだが、1人金貨10枚くらいまでだな」


 ちなみに、銀貨10枚で金貨1枚になる。どちらで言うかは状況によるな。宿とか半端な金額が出るときは、銀貨12枚とか言う。


 いまの布装備はアーマーキャタピラーの糸を使っているかなり良いものなので、冒険者用の服で良いものがなければ、この町で着るためだけの一般向けの服を買ってもいいだろう。その場合はもちろん、予算を下げるけど。


 そんなこんなで冒険者用の服屋に来ると、まず目に飛び込んできたのはガラス窓の向こうの商品。

 大通りへ向かって飾られているそれは、スタイルのいい人形が着る魔法使い装備一式だった。花の意匠も施されており、女性好きしそうなローブだ。


 素材は……は? い、イビルスパイダー? 

 しかも、その値段は、なんと一式金貨15枚という激安さ。イビルスパイダー製つったら、普通なら金貨20枚を下回らないだろう。


「ふわぁああ、可愛い!」


「ちょ、ガラスに触るんじゃねえ!」


 木枠がなければあることにすら気づけなさそうな綺麗なガラスに、女魔法使いは無遠慮にべたりと手をつけた。ほらー、手垢がついた!


「リーダー買ってぇ! お願い! お願いお願いお願ーい!」


 おねだりしてくる女魔法使いにたじろぐ俺は、はたとした。


 女狩人と女僧侶が、同じようにガラス窓にべたりと手をつけて、目を輝かせているのだ。

 見れば、そこには聖銀糸の僧侶服と隠密獅子の狩人服を着た人形が並んでいた。なぜ、狙ったように俺たちのパーティの女の服が並んでいるんだよ……っ。


「ねえねえ、リーダー。お願ーい。お願いお願いお願ーい!」


 ついに女魔法使いはその場に膝をつき、俺にウルウルした目を見せてきた。

 こいつの得意技だ。このまま無視し続けると、恥も外聞もなく、寝転がってジタバタし始める。俺の腕におっぱいをくっつけるとか、そういう手段を覚えろ。


「とりあえず、店主に話を聞こう。偽物かもしれない」


 俺は至極まっとうなことを言い、店に入った。


 全部本物だった。

 なにこの手触り。宿ってる力がヤバすぎる。


 しかも、店の中には店頭に飾られていた装備以上にやべえランクの魔物素材で作られた服もあり、女だけじゃなく男共もおねだりしてきた。


 パーティ資金がモリモリと減る予感がする。

 だが、パーティを強化するためのパーティ資金だ。

 だけど、金貨15枚……きつい……っ!


「現在は村のオープン記念セールを行っております。金貨12枚以上のお買い物をしていただいたお客様には、ご購入いただいた商品に、こちらの一覧にあるお好きな付与魔法を3つ施す無料サービスをしております」


「え、ふ、付与魔法を施してくれるのか? しかも3つも?」


「はい」


 付与魔法は装備に能力を永続的に付与できる魔法だ。

 超強くなるということはないが、実感できる程度の効果はある。

 これをやってもらうとなると、金貨3枚はかかる。というか、普通の装備だと相当腕のいい職人でなければ、付与魔法を3つもつけることはできない。


「買おう!」


 やべえ、なんだこの店。


 王都のなじみの店が潰れちゃわないか、心配になってきた。

 でも仕方ない。だって、仕立ての質が違いすぎるし。


 なじみの店の服は裾とかがちょっとガタガタしているんだよな。

 今まではそれが普通だったが、ここの店の商品を見ると、技術さえあればまっすぐになるのだと気づけた。


 オススメの付与は『耐寒暖』だというので、全員がそれを付加し、あとの2つは役割ごとに好きなものを選んだ。


 その後、一般の店で下着を買い、宿に帰る前に、腹ごしらえに飯屋へ入った。


「「「う、うっまぁ!?」」」


 メニューにある料理は聞いたことのない物ばかりだったが、とんでもなく綺麗な絵が描かれているので、各々が気になる料理を頼んだ。

 酒については給仕の女の子のオススメだ。


 そうして、まず手始めにやってきたビールなる酒が、神の飲み物だった。

 キンキンに冷えている大きなガラスのコップに入っており、めちゃくちゃ贅沢だ。なんでもジョッキってタイプのコップらしく、触るのが怖いくらいに綺麗だが、存外に丈夫な品のようだった。


 安い酒場にありがちな安物のコップだと、口をつけると木の味がするのだが、このガラスジョッキはすげぇんだ。飲み物だけの味を楽しめ、口触りも滅茶苦茶いい。


「ビールのおかわりをお願いします! ジョッキで!」


 女僧侶の持つジョッキからビールが消えていた。

 こいつはパーティ一の酒飲みなのだ。


「おい、まだ町を散策するんだから酔っぱらうんじゃねえぞ」


「大丈夫です! うっくうっく! ぷはーっ!」


 心配しかできねえ……っ!

 だが、そんな心配も次々運ばれてくる料理を前にして、消し飛んだ。


 エビチリにハッポウサイ、バンバンジーにチャーハン、ギョウザにカニタマ!


 平民はガキの頃は薄味を好む傾向にあるんだが、冒険者になるとなぜか濃い味を好むようになる。聞いたこともないここの料理は、そんな俺たちの嗜好に直撃していた。


 遠くの国に料理人の英雄結晶があると聞くが、そこではこんなに美味いものが溢れているのだろうか?


 そんな中で、女魔法使いの前に運ばれてきたのは、牛肉鉄板焼き。

 名前や絵でなんとなく料理の内容は理解できたが、まさか本当にこんな形が出てくるとは夢にも思わなかった。


 そう、小さな鉄板に、魔物の肉と野菜が炒められたものが乗っかって出てきたんだ。

 鉄板は熱々なようで、料理が油を飛ばしながらジュージュー鳴いてんだよ。

 女魔法使いは派手好きだから、ふぉおおおおっつって目を輝かせている。


 ここの料理はみんなで分けて食うタイプの店らしいので、感激している女魔法使いを無視して俺たちは牛肉鉄板焼きに群がったんだけどな。


「やめてよ、やめてよ! あっつぅ!」なんて大騒ぎしているが、知るもんか!

 ていうか、うっまぁ!?


 王都の大衆食堂よりも若干高めな値段でこんなに美味いものが食えるとは。

 俺たちは椅子にもたれて、放心していた。


 そんな俺たちの前に、白いプルプルしたのが配膳された。


「村のオープン記念のサービス品です。杏仁豆腐という甘いデザートです」


 ここでもサービス!?


「もう食べられない」とかぬかしていた女魔法使いが復活して、アンニンドウフなる白いのをもしゃついた。そうして、ペカーと顔を明るくする。


 一瞬で食べ終わった女魔法使いが、俺のアンニンドウフを凄まじい速さで奪い取り、口に流し込んだ。


「信じらんねえ。普通、そういうことする?」


 文句を言う俺に、女魔法使いはもじもじしながらコテンと首を傾げて見せた。可愛い仕草をしても口元に流れ出ている汁で台無しだよ!


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