第25話 剣聖の過去

「さっきの話の続きを聞かせてくれ」

久留洲は尋ねる。

「うむ。あれはもう二十年も前のことだ」

受付の男は口を開いた。

「その前に、うんこをさせてくれないか」

「え!?」

アルヴィンは困惑した。

「ああ、すまなかったな。最近、便秘気味でして……」

「いえ、大丈夫です」

アルヴィンは苦笑いを浮かべる。

「では、失礼して……」

男は立ち上がり、トイレへと向かった。

「フィリアもしたい」

「え? さっきしただろ?」

「またしたい」

「まったく……」

久留洲はため息をつくと、ミリーに話しかける。

「ミリーはここで待ってるか?」

「嫌!私も行く!」

「そうか。なら一緒に行こう」

「うん!」


***

数分後。

「ふぅ、スッキリした」

「良かったな」

「ありがとうございます」

「それで、話の続きは?」

久留洲は再び質問する。

「私は元々この街で商売をしていたのだが、ある時、冒険者に騙されて借金を負ってしまったのだ」

「それはどうしてですか?」

アルヴィンは質問する。

「私にも分からない。だが、おそらく、その冒険者は私の能力に気づいたのだろう」

「それって……」

「ああ、私は商人としての才能がなかったらしい」

「なるほどな」

久留洲は腕を組む。

「それで?」

「私は金を借りた相手に奴隷商へと売られてしまった」

「酷い話だな」

「ああ、本当にそうだ。そして、それからというもの地獄のような日々が始まった。毎日のように暴力を振るわれ、食事もまともに与えてもらえない。そんな生活がずっと続いたある日、カドカワが現れた」

「それがどう関係あるんだ?」

久留洲は尋ねる。

「実はその時、私はカドカワを買い取ったのですよ。私の命と契約して」

「なるほど、そういうことだったのか」

「はい。しかし、彼の力は想像以上だった。あの時、彼を解放しなければ、今頃は……」

「だが、あんたは間違っていないと思うぜ」

久留洲の言葉を聞いた男は目を見開く。

「そう言ってもらえると嬉しいな……」

そして、少しだけ笑った。

「じゃ、カドカワを雇わせて下さい」

久留洲が言う。

「分かった。契約成立だな」

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