第17話 萌え妹

「おい、そこの兄ちゃん」

二人は振り返る。

そこには、ガラの悪い男が立っていた。

「何か用かい?」

アルヴィンは男を睨みつける。

「いや、ちょっと道を聞きたいと思ってな」

男はニヤリと笑う。

「なら、良かったら俺達が案内しようか?」

「そうしてくれるとありがてぇ」

久留洲はアルヴィンの方を見る。

「アルヴィンさん、どうします?」

「任せるよ」

「じゃあ、お願いできますか?」

「ああ、良いぜ」

「それでは行きましょう!」

3人の姿が闇へと消えていった。

翌日、久留洲は冒険者ギルドを訪れていた。

「依頼を引き受けて欲しい?」

受付嬢は首を傾げる。

「はい」

「でも、あなたはまだ子供だし……」

「僕は大人です」

「えっ?そうなの?」

「はい」

「ごめんなさいね。私、勘違いしてたみたい」

「いえ、慣れていますから」

「それで、どんな依頼を受けるつもりなの?」

「魔物退治の依頼があれば、受けようと思います」

「うーん……残念だけど、今は無いわね」

「そうですか……」

久留洲は肩を落とす。

「ただ……」

「どうかしましたか?」

「実は、最近、王宮の周辺で盗賊が出るという噂があるのよ」

「そうなんですね。気をつけないといけませんね」

「ええ、本当に困ったものね……」

「ちなみに、その噂について詳しく聞かせてもらえないでしょうか?」

「いいけど、どうして知りたいの?」

「実は僕、そういう情報を集める仕事もしているんですよ」

久留洲は適当な嘘をつく。

「へぇー。凄いわね」

「それで、何か知っていますか?」

「詳しくは知らないけど、何でも、その盗賊達は恐ろしい強さで、騎士団が何人も返り討ちにされたらしいのよ」

「それは怖いですね……」

「だから、絶対に夜に出歩いたりしないようにね」

「分かりました。肝に命じておきます」

久留洲は話を終えると、その場を離れた。

「どうするんですか?」

酒場に入ると、アルヴィンに話しかけられた。

「盗賊の事ですか?」

「そうだよ」

「とりあえず、調べてみる事にします」

「一人で大丈夫か?」

「平気ですよ」

久留洲は自信満々に答える。

「まぁ、君が決めた事なら、俺は止めないが」

「心配してくれているんですか?」

「一応な」

「ありがとうございます」

久留洲は微笑む。

「あっ!それと、もう一つ聞きたい事があるんですけど」

「なんだい?」

「昨日、僕道案内した男の人がいたじゃないですか」

「いたな」

「あの後、どこに行ったのか分かりますか?」

「さぁ、分からないな」

「そうですか……」

「だが、俺の記憶だと、かなり酔っていたように見えたぞ」

「なるほど。確かに、そうかもしれませんね」

久留洲は顎に手を当てる。

「もし、彼がまた現れたら、教えてくれないか?」

アルヴィンに頼まれると、久留洲は大きく返事をした。

「フィリア!」

名前を呼ばれて振り返った瞬間、私は抱きしめられていた。

「お兄様……!?」

突然の出来事に驚いている私の耳元で、懐かしい声が響く。

「会いたかったよ、僕の可愛い妹姫」

優しい腕の中に閉じ込められたまま顔を上げると、そこには愛しい妹がいた。

「……っ!!」

思わず息を呑んでしまうほど美しいその顔を目にした途端、胸の奥から込み上げてくる感情を抑えることができなかった。

「私もです。お兄様」

涙声でそう言うと、お兄様は少しだけ驚いたような表情を浮かべた後、「おいで」と言って再び強く抱き締めてくれた。

***

「そろそろいいかしら?」


フィリアが真顔で言う。


「ふざけないでください。久留洲」

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