第16話 信頼

「久留洲君」

久留洲は振り返る。

そこには、アルヴィンの姿があった。

「どうしました?」

「少し話したい事があるんだけどいいかな?」

久留洲達は近くの酒場に入った。

「それで、お話というのは?」

「君の持っているスキルについてだよ」

久留洲は動揺する。

「どうしてそれを……」

「やっぱり、そうだったんだね」

彼は微笑を浮かべた。

「君は『神速』というスキルを持っているよね」

久留洲は黙り込んだ。

「なぜ、知っているんですか?」

久留洲は警戒しながら尋ねる。

「実は、俺はその能力を知っているんだよ」

「どういう意味ですか?」

「それはね……」

「待った!先に僕の方から話すよ」

久留洲は遮るように言う。

「僕が『神速』のスキルを持っていたら、どうするつもりなんですか?」

「別に何もしないよ」

「本当でしょうか?」

「勿論、疑う気持ちは分かるけど、安心してくれ」

アルヴィンの言葉には不思議な説得力があった。

「分かりました。信じます」

久留洲が了承すると、アルヴィンは語り始める。

「俺がスキルを知ったのは、ある事件がきっかけでね……」

「どんな出来事だったんですか?」

「俺は昔、魔王を倒すために旅をしていたんだ」

「へぇー」

「そこで、仲間と一緒に行動していたんだが、ある日、事件が起きたんだ」

「どんな事が起きたんですか?」

「突然、謎の集団に襲撃を受けたのさ」

久留洲は唾を飲む。

「そいつらは強かった。俺を含めて4人いたが、全員やられてしまった」

「えっ!?」

「そして、残ったのが俺一人だけになった時、奴らがこう言ってきたんだ」

「なんて言ったんですか?」

「お前の持つスキルを教えろってな」

「なるほど」

「教えなかった場合、命を奪うと言われてな……」

「それで、教えたんですか?」

「ああ、仕方がなかった」

アルヴィンは悔しそうな表情になる。

「それから、しばらくして、俺は解放された」

「一体、何のためにそんな事を……」

「分からない。しかし、確実に言えるのは、そのスキルを悪用しようとする者がいるって事だ」

「つまり、僕にも……」

久留洲の頭の中で最悪の想像が広がる。

「大丈夫だ。心配しなくていい」

アルヴィンは力強く断言した。

(この人は信頼できるかもしれない)

久留洲はそう思った。

「ありがとうございます」

久留洲とアルヴィンは再び歩き出す。

その時、背後から声をかけられた。

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