地獄の王にも恋の花?!
第69話 図書館開設前の大問題
忠子は頭を抱えていた。
(ううう……どうしよう)
右大臣から文庫つまりは図書館開設の催促が来てしまったのだ。
企画から建物の建築まではあっという間に進んだ。
元々が忠子がため込んだ本の収納場所という問題から始まったので蔵書数は充分だったし、噂を聞きつけた人々が寄贈してくれている。
(寄贈してくれた人のためにもそろそろ開館しなきゃ。私の物語……その問題さえクリアできれば……)
忠子の私設図書館の名前は忠子の通り名を取って
宮廷内の文書管理部門である
しかし宮廷に入るきっかけとなった『竜宮の姫』をはじめとする自分の本を収蔵することにどうしても抵抗があったのだ。
(だって……全部パクリだもんね……)
『竜宮の姫』は登場人物のモデルを
知り合いの間で回し読みされ、いつか消えていくならいい。
(名作のパクリだから語り継がれるポテンシャルや普遍性があるんだってば、もし万が一後の世に残っちゃったりしたら……!)
後世の歴史家がおおいに頭を悩ませることになる。
盗作で宮廷に上がってしまっただけで申し訳なさすぎるのに、そんなことになったらどうしたらいいか分からない。
考えても考えても答えが出るわけではなかった。
そこへ持ってきての、右大臣からの催促である。
(織子様のことがあったからだよね……)
織子は順調に快方に向かっているらしいが、東宮妃にという話は頓挫している。
とにかく帝位を狙える人物に娘を嫁がせることに血道を上げる平安政界、蹴落とし合いも凄まじい。精神の病の気ありとケチを付けられ余所の姫君に東宮妃の座を奪われてもおかしくはないのだ。
ここでひとつ華やかな功績を上げて話題を逸らしたいというのが目論みなのだろう。
考えに考え抜いて、煙を吹き始めた忠子の頭の中で何かがぶつんと切れた。
「ちょっとよろしいですか、
「あら、どうしたの?」
「薬師如来のお札をいただきたいのですけど、どなたかご存じありませんか?」
かつて物語が読みたくて読みたくて仕方なかった
そのご利益かどうかは分からないが、
(困ったときの神頼みって虫が良すぎるけど、もう私の頭じゃ解決策を考えつかない!)
各所に人脈を持つ明式部にお願いして薬師如来のお札を手に入れてもらい、房に飾って毎朝祈った。
人が宗教にハマるのは、こういうときなのかもしれない。
-------------------------
読んでくれてありがとうございました!
少しでも琴線に触れた方、続きに興味ば持たれた方は、よろしければ「作品フォロー」「おすすめレビュー★評価」「応援♥」ばお願いしとーとです。
◆お帰り前にタイトルページばお寄りいただくと「フォローボタン」と「おすすめレビューボタン」があるとです。
「レビューボタン」はちくと離れとって「目次」の下方向にありますけん、お見逃しなく!
◎作品フォロー:https://kakuyomu.jp/works/16817330649763580163
◎おすすめレビュー:https://kakuyomu.jp/works/16817330649763580163/reviews
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます