第21話 幕間・そして竜は親友と踊る
「やった! やったで! ようやっと見えるようになったんやなあ!」
「うわー……」
歌会での顛末を遠見の鏡で見ていた
治は小躍りしているが、順和は気の毒そうに眉をひそめている。
「なんやねん、友達甲斐のないやっちゃな。親友がもうちょいでずーっと恋焦がれていた女の子に会いに行けるんやで、ちったあ喜べや」
「そういう、向こうの気持ちを何にも考えないところが無神経だって言ってんの。だから顔がいい割にモテないんだよ」
「はあ? 人でなしみたいに言うなや! どこが悪いんか言うてみ、あぁ?」
そもそも竜族だから人ではないのはこの際置いておく。
「はいはい説明してあげる。あのね、人間にとって怪異は怖いものなの。鬼なんか見えたら怖いの。それにあの子はか弱い女の子でしょ」
「おん、お前みたいな一撃でダイオウイカもブッ飛ばすおっかない女とは
先日マッコウクジラに脳震盪を起こさせた平手が飛ぶ。
「デリカシーがございませんでした、すんません」
続きは頬に手形をつけ、正座して拝聴することとなった。
「しかも今見えちゃった鬼はさ、あの子への悪意で一杯の人間にくっついてた奴だよ? 自分に向けられる悪意が形になって見えちゃったら凄く怖いって」
「そんなもんかいな」
「人の悪意なんか目に見えないから普通にしてられるんだよ。見えたら怖くて暮らせないよ」
「俺は気にせんけどなあ」
「もはや人でなし通り越して無機物だよね」
順和は盛大なため息をついた。
「普通の女の子なら、夜なんかあいつが襲ってきたらどうしようって怯えちゃうよ。可哀想に」
「そないなもんが怖いやなんて繊細やなあ、震えて眠っとるんかいなあ、守ってあげたなるなあ」
「言ってなよ。もし怖がって護符でももらったら、種類によってはお前近づけなくなるかもよ」
「なんやて!? それを早よ言わんかい! ああ、下手打ったああああ! ここまでお膳立てしといてお触り禁止やなんて切なすぎるわああああ!」
竜族の美形が頭を抱えて床を転がり回る姿は、顔がいいだけに見苦しすぎる。
こうなるとちょっと可哀想に思えてしまうのが順和の弱いところだ。
「ま、そうなったら文ぐらい届けてあげる」
「女神か!」
「敬うように」
「ははーっ!」
打って変わってひれ伏す異性の親友に、順和は盛大なため息をついたのであった。
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