第7話 支配者と反逆者
山がそびえ立つ
依頼があった村は火に包まれていた。
「なにがあったんだ?」
「なんでもありだねぇ」
「そうだねぇ」
レオンとリオンが
このやり口について知っているようである。
「【星の
「ひどいねぇ……」
「それはありえない」
アリシアの生徒でもあったレオンとリオンの母
ケイオン=アルバス
【星の
行方不明になっていた。
「同期のあいつはどうしたんだぞ」
アリシアの同期というのは
レオンとリオンの父親である
アルント=リアルであり
母と同じく【星の
アルントの推薦でなったという噂もある。
しかしアリシアの予測は外れてしまう
村の中心でニコリと笑う女性を見つけた
それは明らかにケイオン=アルバスだった。
目をこすり
もう一度見てみるとそこには誰もいない。
「見間違いか?」
「生存者なんじゃない?」
アリスが依頼を切り替えながら
アリシアに提案する。
「報告は済んだか」
「ええ! 協会学園も戦力が揃ってるなら仕方ないって」
まずは現状の把握をと
レオンとリオン
アリシアとポロさん達
シオンとアリス達で
分散しながら情報収集となった。
村の中央にシオン達は向かっていった
その先に絶望があるとも知らずに
飛び込んでいく。
村の真ん中に位置する
村長の家にはふんぞり返る男が座っていた。
【旨い飯はないのか?】
村長に対して
尊大にも命令を下す大柄で筋肉質の男に
村長は何も言えずに正座している。
「あなた様は何者でしょうか?」
【何者? 人の名も覚えられんのか?】
「ひぃっ!」
【我が名は大罪のグリード】
「グリード様は何のためここに?」
ぎらついた笑顔を見せながら
よくぞ聞いたと言わんばかりに宣言した。
【タクド様の弟を試しに来た!】
「タクド様? まさか……」
【そのまさかだ】
「タナトスコード……」
【よくわかったな】
村長の顔はより青ざめていく
血も通っているのか怪しい。
村の中央に位置する
村長の家の前についたシオン達は
家屋の燃え広がり方が
中央に集中していることから
本懐が村長の家にいることを感じ取る。
「ほんとあんたはコードに好かれてるのねぇ」
「言われなくてもわかるんだがな…… 目の前にいるぞ」
「クラン! 構えて!」
「はい! アリス様!」
全員が構えたのを確認し
シオンが叫んだ。
「出てこい! 強欲のグリードっ!」
【我の名を知っているとはな】
ゆっくりと村長の家から出てきたのは
予想外のいで立ちである。
【この姿は初めてか?】
全員が驚くのも無理はない
かつて【星の
バング=タービュ
その人だった。
「お前が強欲の大罪種?」
【我を知っているのか】
「あなたは行方不明でタクドシェインにやられたはずじゃ……」
【ははっ! 確かに下された】
「なぜ兄さんにつく?」
【復元されたからに決まっておろう】
「復元? それは禁忌コードでしょ!」
【知らんわ】
御託は良いと
バングは構えて戦闘を促すように
挑発する。
【行くぞ? 小童ども】
バングはコードを一人で展開する
相棒はどこにも見当たらない。
アリシアたちは
村の中心にいた女性が向かっていった方に
調べに行っている。
「この当たりにいたはずなんだがな……」
【私のこと?】
ポロさんの方を向くが
何も言っていない。
「調査隊のみなさんも何も言っていませんか?」
「そうですね」
「なにか聞こえたんですか?」
隊員たちがアリシアに
質問を返す。
「何を言ってるんだぞ」
ポロさんが灼け崩れそうな
家屋の上を指さした。
そこにはにっこりと笑う女性が佇んでいた
そしてこちらに敵意を向けている。
【最初が女性とはねぇ】
「全員! 構え!」
会敵を果たしたアリシアとポロさんは
コードを展開した。
【先生? いつも通り孤独ねぇ】
「ん? なんで私のコードを知っているんだ」
【忘れたの? ケイオンの名を……】
不思議そうな顔で
こちらを覗きながらも
手にコードの刃物が展開されている。
【まさかタナトスコードも?】
アリシアの事情を知っているらしい
そして教え子の名前すらも知っていた。
すべての状況があることを指していた
タクドシェイン=ターグランは
裏切り者たちを復元し従えている。
なぜならケイオンは
アリシアの目の前でタクドに殺されていた。
【やっと気が付いたの?】
「ケイオン…… あの時はすまなかった」
【そういうのはお好みではないのだけど】
「今すぐに楽にしてやるからな……」
アリシアはコードを展開する
氷のコード【アリシアレイン】を
かつてケイオンを訓練したコードである。
【不利にしたのになぁ】
「行くぞ!」
アリシアの周りには氷の刃が
右に三本と左に三本ほど展開されていた。
二刃が勝つか無限の刃が勝つのか
あの日の続きが展開される。
レオンとリオンは
あることに気が付く
不思議な装置が至るところに仕掛けられていた。
「なんだろうねぇ」
「不思議だねぇ」
分析を行うコードを貰っていたため
使ってみると復元コードと認識される。
「壊しちゃおうかぁ」
「そうするかぁ」
この双子の行動が後に
重要になるとは誰も知る由もなかった。
業火の炎はあまりにも
鋭く力強いことを今になって知る。
目の前の男は
焔を纏いながら新参者が得た炎と対峙していた。
「なんだこいつは?」
「ぜんぜん通らないのはなんで?」
「私の防壁スマッシュも通らないじゃない!」
「ありえません! アリス様の攻撃を!」
【至極真っ当に通らんわ】
炎を纏う図体のデカい男は
にやりと笑いながらも手に纏う炎を
緩めない。
余裕がまだまだあるようだった
あまりに差が開きすぎている。
【タクド様の弟と聞いたから楽しみだったのだがなぁ】
「つまらんか?」
【そうだな】
ぐっと歯を噛みしめ
過去を思い出していた。
タクドは教師を務めていた
シオンにも誰に対しても優しく
そして何よりも強かった
コードの使い方をすべて叩きこんでくれている。
しかしコード使い達が
使い捨てされる
そんな現状にいつも苦言を成していた。
「まさか兄さんからもらったコードを使う時が来るとはな……」
「待って! 負荷がまだ大きいって言われてるでしょ!」
コード展開にはアリンの許可が必要だ
しかしアリスがそれを認めさせる。
「アリンちゃん? シオンはこういう時に決めてくれるのよ」
「そうですよ」
アリスとクランは
これまでの危機のことを思い起こしていた。
「あの時もどんな時もシオンは決めてくれたのよ」
「でも! 負荷が大きすぎて!」
「信じるのよ! シオンの相棒でしょ!」
「そうですよ」
アリンはシオンの方を見た
頷きながら促す。
「もうどうなっても知らないんだから!」
【アクセスオン!】
属性コードが入れ替わる
氷のコード【レイン】へと
これはアリシアが協力したおかげで
得た力だ。
【ほう…… そこまでタクド様に似ているのか】
「行くぞ!」
「バックアップは任せなさい!」
アリスが盾を展開しながら
氷の刃で戦闘を繰り広げる。
作戦を決めて飛び込む
これが功を奏すのかは
わからない。
【我の炎で溶かしてくれるわ!】
纏われる炎がより濃くなっている
それはバングが本気を出した証拠でだった。
氷の刃がことごとく割られる
届かないである。
まるで踊るように刃を走らせる
間合いを詰められることもなく
体中に切り傷だらけだった。
「なんで斬られている?」
【私は大きさを変えているだけよ】
「私も加勢したいぞ」
「ポロさんは危ないので下がっていてください」
「じゃあ勝手に加勢するぞ」
原初のコードと呼ばれる
防衛コードが展開される。
それは異能での発動だ
機械などを必要としない。
青い光に包まれる
アリシアは【
身に纏う。
【なにそれぇ】
「私に勝てるやつはいないんだぞ」
【おチビちゃんは無理しないでねぇ】
「ポロさんは私より強いぞ」
【おべっかを覚えたのねぇ】
余裕をかましていた
ケイオンの懐に蹴りが入った。
【はやっ!】
次に顔面とお腹の順に
打撃が入る。
アリシアも追撃を
氷の刃で上部と腹部に行った。
【どういうこと?】
劣勢が覆され
ポロさんの連続的な打撃が
何発を入る。
【ぐぅ…… 痛い……】
女性が膝をつき
トドメの一撃をアリシアが加えた。
「やったか?」
霧散した氷の白い煙が
女性を包むが
霧が晴れた頃には人形しかそこに存在がない。
「なんだこれは?」
「複製コードだぞ」
「コピーということですか?」
そんな会話をしながら
通信を受け取る
レオンとリオンからだ。
「どうした?」
「変な機械を全部壊したよ」
「変な機械? なんだそれは」
「復元コードを発動するためのものみたいだねぇ」
「がんばったねぇ」
労いの言葉より先に
ある事件が浮かぶ。
「まさか! 盗まれたコードじゃないか?」
「えっ? ちょっと照合するよぉ」
「待つんだよぉ」
照合した結果だが
見事にアリシアが当たっている
それをすぐに送ったシオンとリオンは
アリシアの焦った声を聴くことになった。
「まずいぞ!」
「どうしたのぉ」
「慌ててるのぉ?」
「それは【星の
それを使用したのは
禁忌とされるコードを作り
愛しい女性を蘇らせた
バング=タービュ
その人である。
「シオン達が危ない! レオン達もシオンの向かった先に集合だ!」
炎の前に膝をついていた
相手は
【星の
一番のパワータイプであり
タクドに勝利まであと一息だった
たった一人の豪傑だ。
例え属性の相性があろうとも
相手が悪すぎる。
「なんでよぉ…… 私の防壁を破るなんて……」
氷の弾丸と刃で
応戦しているシオンも抑えが利かなくなっていた。
「これ以上は持たんぞ」
アリシアが到着するまで
持つのかも不安なぐらいである。
希望は薄いが
まだシオンは立っていた。
バディコード:Access Device《アクセスデバイス》 あさひ @osakabehime
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