第2話 バディロスト

 これで何度目だ

耐えられるずに逃げていくのは

何度目だ。

 俺の何が悪いかはわかってる

さすがに酷じゃないか

この世界で俺は生きるのが苦しい。

【さすがだなバディロスト】

 お前は新たな相棒さえも

失うんだよ

俺たちみたいにな

周りの全員が指を差してくる。

 にじり寄ってくる

悪夢だとわかっていても苦しい。

「すまなかった」

 ぐるぐると景色が歪み始めて

目が半開きになっていく。

「バディロスト……」

「ん? どうした?」

 アリンが横で座っていた。

「なんでここにいる」

「部屋汚いね」

「待て……」

「大家さんが妹だって言ったら部屋に」

 絶句している。

「何の用だ?」

「相棒は同室にいるべし」

「そういう決まりがあったな」

「知り尽くしているくせに」

 悪夢のことを一切忘れてしまった

なんだか懐かしい感覚だ。

「今日の授業はサボりか?」

「バディがサボってるんだもん」

「すまないな……」

「授業出てみる?」

「いや俺には資格が……」

「このままじゃ単位取れないなぁ」

 シオンには単位と言う概念が関係ない

しかしアリンは単位を取らないと卒業できない。

「仕方ないな」

「明日からちゃんと同じ授業受けてね」

「申請があるだろ」

「大丈夫しといた」

 用意周到というより

最初からそれが目的のために来たのだろう。

「それは置いといて……」

「コード契約の三か月間は」

「依頼を受けなければならない」

 シオンが喋る前にアリンが言葉を完結させた。

「依頼はなんだ」

「簡単なものなんだけどね」

 依頼の書いた用紙をベッドに三枚おいていく

一枚には討伐の判が押されている。

「まさかまた大罪種じゃないだろうな」

「噂以外は違うよ」

「噂?」

「人形の大罪種が出るんだって」

「まさか【憤怒のドール】か?」

「せーかい!」

 大罪種がこの頃だが

頻繁に出現しているのは

学園の情報では

あからさまに注意勧告されている。

「なぜ大罪種を狙う」

「狙うだなんてそんな……」

「過去を見せる大罪種か」

「なんかあるの?」

「いやなにもない」

 ぎこちない空気を纏いながら

準備を整えて

部屋を後にする。

 太陽が一番上で笑っていた。


 協会学園

コード協会東学園の略称

その協会学園は色んな意味で

騒がしい。

 特に今日みたいな日は

何よりも喧騒が渦巻いた。

「まさかバディロストが?」

「見に行こうぜ」

「やめといたほうがいいよ」

 生徒という扱いのコード使い達は

何より不可解な失踪を起こす

バディロストの噂で持ち切りである。

「だから言っただろ」

「単位のためだよ」

 即答であっけらかんに答えられる

それにしぶしぶ承諾せざる得ない。

 しかしいつも通りな見覚えのある一人を

見つける。

「リサ!」

「おっ! バディロスト君とアリン」

「その呼び名はやめてくれ」

「じゃあシオン君とアリン」

 普通なら忌み嫌うために

バディロストから変更されないが

リサだけは違った。

「今日の授業は終わりだよ」

「わかってるよぉ」

「いまからは依頼だもんね」

 いつも通りの会話なのか

話がすぐさま噛みあい

手を振りながらまたねと

どこかへと去っていく。

「お前もお前の友達もいいやつだな」

「いいやつなのかな」

 一応にも教室に着いた

シオンは外で待機だ

先生はおろか生徒全員が驚いていたが

これは編入前にお別れの挨拶に来た。

「この度はまさかの問題児クラスに

あなたが行くとは……」

「いえ自分が選びました」

「そうですか……」

 机から荷物と後ろの棚から

色々とを鞄にしまい込んで

ぺこりと挨拶をしてシオンと外で落ち合う。

「すまないな」

「何の話?」

「いやじゃないのか?」

「ううん」

 微笑むような顔で

エイドを見ていた。

「よく顔をみてるよね」

「そうか?」

「気使い過ぎだからね」

 意外にも説教を受けた

普通はそんなことほったらかす。

 廊下でそんな会話をしていると

噂話が聞こえてきた。

《【憤怒のドール】って死者と戦わないと

出てこないんだって》

「死者……」

「会いたい人でもいるの?」

「さあな」

「答えてよ」

「いるといえばいる」

 へえと会話が途切れた

それは人とぶつかったからである。

「ごめんなさい」

「いえっ」

 気が弱そうな少女だった

そそくさとどこかに消えてしまう

悪いことをしたなと思いながら

学園を後にした。


 問題児学級とは

稀有だったり

能力的に優れているが

問題がある生徒しか集めてない。

「久しぶりだなバディ」

「相変わらずだな先生」

 バディロストとは呼ばずに

バディと呼んでいるのは

この女性教師が恩師だからだ。

「おまえがまた来てくれるとはな」

「こちらも驚いている」

「引っ張り出してくれたのはお嬢さん?」

「シオンの担任であり今から君を担任する」

「アリシア先生ですよね」

「知っているのか?」

 結構、有名な先生ですよと

説明を加える。

「なら話は早いぞ」

「依頼を熟すことで単位を認める特殊クラス」

「そうだ」

「俺の単位はもう大丈夫なんだが……」

「ああ…… 話は聞いているぞ」

 今からがうちの時間だ

教室の面々が立ち上がりだした。

 無口ながらも全員が

依頼をミスがない猛者であることを

確認する。

「絶対防壁のアリス」

「私のこと知ってるの?」

「嬉しいですね」

「防壁のアリスさんは有名超えて英雄ですよ」

「わかってるじゃない!」

 じゃあねと防壁のアリスと呼ばれた

ツインテールの少女は去っていった。

 その他にも二つ名を持つものばかり

なんで毛嫌らわれるかは

性格に難があるからである。

 すべての生徒が出ていくと

私たちもとアリン達は出て行こうとした。

「ちょっと待ってくれ」

 先生から呼び止められる。

「【憤怒のドール】の依頼書は今もってるか?」

「ありますけど」

「先に討伐から終わらせてくれないか?」

「なんでだ」

「あいつが出てきたんだよ」

「まさか……! キリサキが?」

「ああ…… 残念ながらな」

 キリサキと言う名前は聞いたことがある

執拗に原初のコードを狙う一人で

勘違いでシオンのコードを狙いに来たことがある

そう学園の議事録にも記載されていた

だれもが聞いたことがあった。

「なんで【憤怒のドール】なんだ」

「それがわからないんだよ」

 謎が残ったまま

対象がいるという噂の依頼書の場所へと

向かうことになる。


 コードルーラーは

四つの大陸からなる世界で

この大陸は第一大陸と呼ばれている

中央に存在する大陸で

右に第二大陸

左に第三大陸

下に第四大陸がある。

 その他にも上に大陸があるが

未踏の大陸なために大陸と扱われていない。

 この第一大陸には

三つの大国が存在する。

 その中でアリン達がいるのは

中央国家【コール】

 依頼中心で回っている

いわば下請け国家だ。

 下請けといえど地位は

一番上である。

 そんな【コール】で

頻繁に依頼が来るのが

【右舷の森】

 中央大陸の第二大陸よりに

存在する森のフィールドと

管轄される場所だ。

「すごいこれが依頼用の移動コードなんだぁ」

「普通だぞ」

「憧れだったんだぁ」

 移動コードとは

大陸に設置されたポータルに接続するための

認識コードの一つで

遠い距離への依頼のみに使用される。

 いくぞという合図で

《アクセスオン》

 光に包まれて

体が消えていった。


 【右舷の森】

厄災戦と呼ばれる

コード術師たちの戦争をおりに

魔物たちが蔓延る

密林ほどではない森

と辞書には表記される。

 そんな場所のポータルに

光が集約し二人のコード術師が

現れた。

「ここが右舷の森なんだぁ」

「遠足ではないぞ」

「わかってるよぉ」

 会話していると

管理術師が免許の提示を求めてくる。

「免許?」

「移動コードを表示するんだよ」

「なるほど…… どうぞ」

《確認いたしました》

「依頼書の場所ってどうわかるの?」

「依頼書にコードが仕組まれているから……」

 依頼書に移動コードを組み込むと

依頼書が地図に変化した。

「すごぉい」

「感動ばかりだな」

「うん! ありがと!」

「そっそうか…… よかった」

 笑顔を向けられ照れてしまう

《お気をつけて》

 管理されている四方系の

領域コードから一歩出ると

半透明になる管理された領域コード

それを後目に地図通りに進んでいく。

「この点滅しているのが私たちで」

「この大まかな円が対象区域だ」

 歩いている場所から

そう遠くないようだった。

「結構近いね」

「戦闘音はないな」

「ん? ちょっと待って」

 耳を澄ますと

戦闘音ではないものの

不思議な音が聞こえる。

「この音は?」

「頭がぐらぐらする」

「まずい解毒コードを……」

《アクセスオン》

「なおった?」

「解毒コードを持っておいてよかった」

「解毒コード?」

「移動コードの内訳を見てみろ」

 解毒コードというものが

移動コードに含まれており

その他のコードも表記があった。

《すごいですね》

「誰だ?」

《ひどいなぁ》

「ぶつかった人……?」

《せいかーい》

「まさか協会学園の生徒か?」

《ふせいかーい……》

「紛れ込んでいたってこと?」

《またもや正解》

《私は【憤怒のドール】でーす》

「まさかキリサキか?」

《ちがいまーす》

《待ってたのにひどくないですかー》

「待ってたの?」

 にひひと笑うと女生徒は

白い人形へと変化する。

《依頼したの私ですもん》

《人形が欲しくてー》

 依頼者は

【憤怒のドール】自身であった

この情報により不審だという先生の勘が

過った。

【この依頼書は達成されたことがない

そして失踪者が多い】

【お前の体質の件もある】

「コードに好かれる性質か……」

《ん? まさか【無強化者ノンコード】さま?》

《おおあたりー》

「まさかバディロストの原因って……」

《せいかーい》

《みんなーごあいさつはー》

【へーい】

「ユーゴにクレットとアイシア?」

《きがつかないとは可哀そうにー》

《新しい相棒もいただきまーす》

「絶対に守るッ! で取り返す!」

「ターグラン君……」

《アクセスオン》

《身体強化と最強化を認識しました》

「いくぞ!」

「ええ!」

 目の前のゆらゆら揺れる

白い人形型の大罪種

【憤怒のドール】は不気味に笑う。


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