バディコード:Access Device《アクセスデバイス》
あさひ
第1話 バディたる由来
頭の割れるような事柄は世界に溢れている
例えば騒がしい連中は特にイラつく
心どころか物理的に響く声で話すからだ。
「俺たちで上級依頼を熟せるんじゃね?」
「いや…… そこまでは……」
学園に貸し与えられた家屋の前で
毎回だが会話の内容すら
酷似した状態で聞こえてくる。
「またお前か?」
三人組の中の一人に
見覚えがある少女がいた。
「げっ…… 【
「なんですか? バディ?」
「あいつは組んだ相棒がすべて失踪する呪われたやつなんだよ」
その言葉を聞いただけで苛立ちを隠せない窓から覗く少年
あからさまな殺意を込めた視線をぶつける。
「お前たちに言われたくないな」
ドスの聞いたような喉の奥からの圧力に対し
血の気が引いた二人は一人の少女を置いてけぼりに
逃げてしまった。
「また会いましょうねっ!」
ぺこりとお辞儀すると
二人組を追っていく。
「まったく……」
休日だったためベッドに戻って
もうひと眠りすることにした。
コードルーラー
それがこの世界につけられた名前であり
この世界を表す言語だ。
コードと呼ばれる技術の開発により
世界はとてつもなく進んでいく。
そして窓から殺気を込めていた少年の名は
【
コードにさほど頼らずに生きていた。
「窓を閉めた方がいいな……」
時間は夕方を過ぎようとしているのか
少しだけ暗闇に染まっている。
そんな夕闇の中で走ってくる少女がいた
アリンスエット=ラリアス
【
厄介ごとに巻き込まれる体質と記憶していた。
「あの! 助けてくれませんか?」
「助ける? またなにかあったのか?」
「最上位討伐対象が……」
「なに?」
その言葉を聞くなり
シオンは血相を変えて準備する。
「対象のレベルは何段階だ?」
「おそらくグリードクラスかと……」
「グリードクラス」
「協会学園への連絡は済ませてます」
「それじゃ足らん……」
「え?」
準備を終えたシオンはアリンに
道案内をしてもらいながら
目標地点に向かった。
洞窟のような遺跡は
支配者によって恐怖の館と化している。
「なんなんだ? あれは聞いてないぞ」
「俺もだ……」
アリンに救援を
要請しに行ってもらっている間にも
自分たちの身の防衛すらままならない。
《ぐらぁああぁああああッ!》
「ひっ!」
「早く来てくれ……」
《オマエタチハナニモノダ》
「喋った?」
《ソコダナ》
慌てて口を閉じるも虚しく
場所がバレてしまう。
ドシンドシンとグリードクラスが
近くに聞こえてきた。
《コレデオワリダ》
誰もが二名のコード所持者の
終わりを想像する。
ただ一人を除いて
シオンを除いてだ。
《アクセスオン…… 準備はいいか?》
青い光を纏った槍のような電子の塊が
グリードクラスに直撃する。
「どうだ? 悦に浸っていた化け物」
《グァアアアアァア》
グリードクラスの化け物は
全身に電気を走らせながら藻掻いていた。
「お前は【
「その名で呼ぶな……」
ぎっと睨みながら圧を加えて
ドスの効いた声を聴かせる。
《ぐおぉぉおん》
けたたましい声が響き渡ると
化け物が立ち上がっていた。
《キサマハナニモノ》
化け物は照準をあからさまながらエイドに向ける。
「てめえを倒しに来た若造だ」
憤然とそう答えて立ち塞がる。
「助けに来ました!」
「アリンちゃん?」
「なんでこいつなの?」
ありがとうより質問が勝ってしまっている
しかし質問に丁寧な説明を入れる。
「この人は協会学園の推薦なので……」
納得いかないのを
置いておいたのはそれほどの危機だからだ。
「まあいいや」
「こいつに任せて逃げよう」
アリンだけは責任者という名目で
残ることになる。
「お前はアリンと言うのか」
「はい! アリンスエット=ラリアスと言います」
「安全な場所で待っていろ」
「私も戦います!」
どうやってだという疑問ありありに
アリンを睨んだ。
「じゃあ見てます……」
アリンが隠れたのを見届け
化け物に集中する。
《メイドマエノユイゴンダナ》
「それはオマエだよ」
アクセスオンしたのは
汎用的に配られるアクセスコード
グリードクラスに勝つには役不足すぎた。
グリードクラスの見た目は
ティラノサウルスと呼ばれる
太古に生きた恐竜を
モチーフにされた個体である。
《グリードクラスはあの方の製造版》
機械音に切り替わった理由を
感覚で察知した。
「来る……」
口に赤い光が喉元からせりあがっていく。
《ブラスト放ちます》
「ご丁寧だな」
横に飛び込んだ
もと立っていた場所が焦土と化した。
「これでチャージに時間がかかる」
コードを少し操作し
身体能力を強化する。
「てめえの背中はどこまで耐えれるかな」
上空に飛んで
また最初の一撃を構えた。
《甘いな》
もう一度、赤い光がせりあがっていく。
「なんだと……?」
放たれる瞬間
体が下方向に引っ張られた。
引っ張れた先に
アリンがコードを使う姿を
捉えた。
「なんやってんの!」
意外な言葉を聞く
丁寧で礼儀正しいお嬢様という印象が
覆る。
「私とコードを……」
「いらん」
「もう強情なんだから!」
戦場に戻る頃には
頭上から太陽の明かりが覗いていた。
「まさかな……」
《わたしは大罪のグリード》
「大罪種?」
《そのとおり》
「関係はない」
飛び込んで
足を狙っていく
しかし読まれていたのか
空振る。
それを数度ほど繰り返すと
チャージまでの時間が過ぎようとしていた。
アリンの傍にシオンが
戻って来た。
「あなたって見た目に似合わないのね」
「すまない…… コードを結んでくれるか?」
「さっきから言ってるじゃない」
汎用コードでも生命認証は個別だ
一種の契約に近い。
「とりあえず三か月だけね」
「すまない……」
《コードクロス…… 認証しました》
個別コードが汎用コードに
組み込まれて本来の力が発揮される。
《身体最強化と最強化を認証しました》
「あなた身体強化型なの?」
「ああ…… そうだが……」
「なるほどねぇ」
「やはり脳筋か?」
「面白いと思う」
「は?」
「面白いよ」
「ふん」
じゃあ行くぞと
久々の笑顔になりながら
早さが尋常じゃなくなるのを確認した。
即座にグリードクラスを
凌駕するほどの戦闘を披露する。
あんなに苦労したグリードクラスを
右足と左足をも破壊し胴体すらも
貫通するほどのパンチを繰り出した。
身体能力に物を言わした
最高の打撃である。
《ふんっ! グリードクラスの我を倒したぐらいで》
「じゃあその上の連中はどこだ」
「答えるわけないでしょ」
《そうだな》
点滅の後
静かに反応がなくなった。
「すまなかったな……」
「バディロスト?」
「お前にも嫌なことがあるかもしれない」
「別にいいよ」
「ん? どういう意味だ」
「似たもの同士がんばろ」
「あっああ……」
協会学園のコード使いが
到着した頃には
二人はいなくなっている。
協会学園は速やかに
研究棟のコード使いを呼ぶ
グリードクラスはなかなか存在しない。
しかし中枢部分に大きな穴が開いていたのを
確認すると細部部品のみの要請をするしかなかった。
協会学園はある一人の人物を浮かべている。
「契約者を見つけたんだね」
シオンという名前をしみじみと
若い女性が呟く。
さきほどの二人組は後日
アリンへと謝りに来たが
驚いたこどにコード契約を求めてこなかった
隣にいたエイドのせいだろう
雰囲気が怖いのとコードは一人までと
決まっているのだ。
「私の相棒です」
「おまえ雰囲気がちが……」
肘鉄を横っ腹に食らう
無理やりに返事させられる。
「お二人は大丈夫でしたか?」
「大丈夫だよアリンちゃん」
「アリンちゃんこそ大丈夫?」
「ご心配ありがとうございます」
そんな挨拶をしている間
遠くから走る音が聞こえた。
「アリン!」
「おっ! リサ!」
「アリンちゃんの友達だね」
「まだ僕たちには敬語なんだね」
二人組はトホホと去っていくのを
見送るとリサと呼ばれた少女と会話する。
「新しいバディはバディロストなんてね」
「いや私はこいつが良いと思った」
いきなりのため口な理由がわからないが
バディロストと聞いてもどうじないのは
なぜなのだろうかはわからない。
「たぶんバカだから」
「バカ…… それでもありがたいが……」
「へえ…… アリンがねぇ」
どうやらリサは気が付いているらしい
最初から知っていたということ。
「よろしくねターグラン君」
「ん? なんか言ったか?」
「何にも?」
コードなしの最強とコード最強の二人が
今に手を組んだ
これは世界にとって歯車を動かすことに
それにはまだ気が付いてない
これにてバディコードの
プロローグを終了する
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます