第41話 流れ星とピケット

「流れ星とピケット」


 しんと澄み切った風の巡る夕暮れのクリケディア。クリケット・カラアリ・ピケットは洋服ダンスを改築した家の、両開きの扉に作った窓からひとつ、またひとつと増えて行く星を眺めておりました。雲一つない、良く晴れた星空でした。

 夕日の名残の残る遠くの山に目をやったとき、タンスの下の方からトントンと引き出しを叩く音が聞こえました。窓から下を覗き込むと、ピケットの友人、カラアリ・ポポッコが立っていました。

「やあポポッコ」

 ピケットは窓付きの扉を開き、頭を出して挨拶をしました。ポポッコはすぐに気がつき、帽子トップハットをあげて挨拶を返しました。

「こんばんは、ピケット」

「どうしたのこんな夜に?」

「今日の天候予想のこと忘れたの? 流れ星がたくさん降るから捕まえに行こうって言ってただろ」

「あっそうだった! すっかり忘れてたよ。ごめんねポポッコ」

「いいから、さあ、行こう!」

 二匹は柄の長い虫取り網と空の瓶を手に取り、流れ星がよく降ると予想されていた大尋ノ河おおひろのがわの岸辺へ急いで走りだしました。

 大尋ノ河ではもうたくさんのクリケットたちが集まっておりました。川の中をボートに乗っている者もおります。

「そろそろ時間だ。さあ降るぞ!」

 誰かがそう叫んだ時、遠い空の上から一筋の光がひゅうっと落ちてきました。流れ星の第一弾は地面にぶつかり、パンと弾けて少しの間きらきらしたものを残して河原の石に混じりました。それにつられるように、次々と空から光の筋が落ちてきました。

 ピケットとポポッコも空を見あげながら一生懸命に網を振り回しました。星捕りに夢中になるあまり、みんなぶつかり合ったり、頭に流れ星が当たって体をきらきらさせたままひっくり返ったクリケットもおりました。

 空から降り注ぐ光が段々と減ってきました。その頃にはピケットもポポッコも疲れ切ってしまって川岸から少し離れた所で少なくなっていく流れ星を眺めて言いました。持ってきた瓶の中身はきらきらと輝く流れ星たちがいっぱいで、二匹の周りを照らしておりました。こうして瓶の中で空気に触れないようにしておくと、流れ星の輝きは長持ちするのでした。

 それからの数日間、よく晴れた星空の下で、二匹は捕まえた流れ星を空に向かって投げてぶつけ合いました。ぶつかり合い、細かな光の粒になった流れ星はきらきらきらきらと二匹に降り注ぎ、まるで天の川の真ん中に立っているような気持ちになるのでした。


おわり

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