第34話 風邪をひいたピケット
「風邪をひいたピケット」
「まさか君が風邪をひくとはねえ」
クリケット・カラアリ・ピケットの家に、友人のカラアリ・ポポッコがやってきました。ピケットのがらくた部屋には明るいランプがついて、あちこちにある真鍮の磨かれた燭台だの、アメジストの飾られたブローチなどが反射してキラキラとした光が色とりどりに壁に映し出されていました。
「そんなこと言わないでよ、僕だってひくときはひくさ」
「今までだってひいたことなかったじゃないか。それともひいてて気づいてなかったのかな」
「ひどいなあ」
ピケットはくしゅんとひとつくしゃみをしました。先日、冬のさなかに暗くなるまで外で眠ってしまったので風邪をひいてしまったのです。頭はぼうっとしているのにガンガン響き、体中がぎしぎしとなります。それでもピケットはあの体の中でリン、リン、と鳴る音が綺麗に残っていたのでそれほど苦ではありませんでした。
「まああんまり気にしないでさ。今日はいいものを持ってきたから」
ポポッコはそう言って一抱えもある石を持ち出しました。その石は黒くてすべすべとしていて、ランプの光にキラキラ輝いていました。
「なんだいそれは?」
「布団の中にいれればわかるよ」
ポポッコはピケットの布団をめくるとピケットの足元に石を置きました。石が足に触れた瞬間にピケットが騒ぎだします。
「ひゃああっ冷たい! この石冷たいよ!」
「こら、おとなしくしなって。じきにわかるから!」
じたばた暴れるのを無理やり押さえつけられたピケットは冷たい石に足をくっつけながらうーうーしばらく唸っておりましたがやがてだんだんと静かになりました。
「なんだろう……この石、だんだんポカポカしてきたよ」
「この石は最初はすっごく冷たいけど体をくっつけてると温まってくるんだよ」
「最初に……言ってくれればいいのに……」
「いっても信じないだろう? じゃあもうおやすみ」
「うん……おやすみ……」
ピケットが眠りにつきました。ポポッコはピケットの様子をしばらく見ると、ピケットが起きたときに食べるスープだのを作って、温めるだけにしておくとまた一度ピケットの様子を見に行って、それから家に帰りました。
ピケットの具合はどんどん良くなり、次の週にはすっかり元気になっていました。そしてよく冷える晩はあの石を抱いて眠りに着くのでした。
おわり
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます