第30話 飴色水晶とポポッコ

「飴色水晶とポポッコ」


 クリケディアに雪が積もり始めました。寒くて身も凝りそうな日のことです。クリケット・カラアリ・ポポッコは友人のカラアリ・ピケットの家に遊びに来て来てました。ピケットの家は古い洋服ダンスを改良して作った洒落た家でした。

 洋服ダンスの一番下の段を叩くとそっと隙間が空いてピケットが顔を出しました。

「やあポポッコ、いらっしゃい」

「ピケット、まったく今日は寒い日だね。さっそく中に入れてくれないかな」

「もちろんだよ。さ、はやくはやく」

 ぱたりと引き出しを閉めると中のランプがつきました。ランプに照らされて色々なガラクタがきらきらと輝きだします。虹色の香水の入った瓶。ピカピカに磨かれた釣り針がたくさん。まんまるな河原の小石たち。その一つ一つが宝物のように輝いておりました。

「今日はどんな用事なんだい、ピケット」

「うん、僕は前に夜光街に行っただろう。その時のお土産がまだもう一つ渡し忘れて残ってたからね」

「ということは食べ物じゃないな、だったら夜光街にいるうちに食べちゃうだろう」

 ピケットはそれを聞いてにんまりしました。ポポッコの言うことは半分は当たっていましたがもう半分は外れていたからです。

「これはね、飴色水晶って言うんだ」

「飴色水晶?」

 見ればなるほど、美しく飴色に光るきれいな水晶がこれまたきれいな宝石細工の箱の中にチカチカとたくさん輝いておりました。よく見るとうっすらとした丸い水晶の中に、飴色の火花がぱちぱちと光っていて、それが箱の内側から赤や青や橙の宝石を通して照らしているのでした。

「これは綺麗だねえ、宝石かい?」

「これを口に含んでごらんよ。食べちゃあだめだよ」

 ポポッコがその飴色水晶を尖った口に含むと目のまえがぱちぱちと光りだしました。水晶の中の飴色のようにキラキラと金色の輝きが目の奥から外に飛び出し、部屋中に広がりました。ポポッコが驚くうちにぱちぱちとしたひかりは小さくなり、あとは口の中に透きとおった清水のように輝く水晶だけが残ったのでした。

「これは……すごいものだなあ。ぴっくりしたよ」

「そうでしょう。僕はこれが楽しくってもう半分も使っちゃったんだ。だからこれは君の分だ」

「本当にいいのかい?」

「もともとお土産のつもりだったのに半分も使っちゃったんだ。僕は君に謝らなくっちゃ」

「半分といってもまだたくさん残ってるさ。これを楽しむんなら二人で楽しまなくっちゃ」

 そう言ってポポッコは飴色水晶をピケットの口に放り込みました。ぱちぱちと部屋中に火花が散ります。ポポッコももう一つ口に含み、二匹で一緒にぱちぱち楽しみました。


おわり



※21~30話覚書

https://kakuyomu.jp/users/kiyato/news/16817330656169222885

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