第28話 子猫とクラータ
「子猫とクラータ」
ある日当たりのよい午後のこと、白い長い毛を生やしたクリケット・グラーモ・クラータが群れのみんなとまとまって寝ていると、なにかがごそごそ近づいてくるのが分かりました。分かりましたが、どうしても眠かったのでみんなそのまま仲間とすやすや眠ってしまいました。
そして日が傾きみんなが日影に入るころ、群れの一匹のグラーモが目を覚まして言いました。
「おやクラータ。その子猫はいったい何だい?」
クラータが寝ぼけ眼で起きてみると、ふわふわとしたクラータの白い毛の中に真っ黒の毛の小さな猫がうずもれて眠っていました。ぷうぷうと小さな小さな寝息を立てて黒いふわふわは気持ちよさそうに体を上下させています。
「おや、ううん。さっき何かが近づいてきたような気がしていたんだけれど、この小さなお客さんだったのか」
「小さな猫だねえ。お話は出来るかな?」
クラータは小さな子猫を軽くゆすってみました。子猫は目をしぱしぱさせるとちいさなあくびをして目を覚ましました。
「こんにちは子猫さん。お名前は言えるかな?」
子猫はクラータの話し声に傾けていたようですが、小さく「にゃあ」と一言鳴いてまたもぞもぞとクラータの毛の中に潜ろうとしました。
「おや、子猫さんはまだ話せないんだねえ」
群れの一匹、グラーモ・ユナータはくすくす笑いました。クラータは困った様子で黒いふわふわを取り出します。
「猫のことは森に住む猫のタマおばあさんのところに行ってみないとね。きっと何とかしてくれるよ」
「そうだね、そうしよう」
そうしてグラーモの群れは森の中のタマおばあさんのところへ出発しました。途中クリケット・カラアリ・ピケットと出会い、真っ黒の子猫はにゃあにゃあ泣き出しました。きっとこの子のお父さんかお母さんもカラアリと同じように真っ黒な体をしていたのでしょう。
「泣かないで、小さな猫さん。もうすぐタマおばあさんの家に着くからね」
ピケットと離れたがらない子猫をクラータが慰めながら群れと子猫はやっとの思いで森の奥に着きました。
「おやまあ、グラーモがこんなにたくさんと、小さなお客さんまで」
タマおばあさんは子猫を引き取るとすぐに体が大きくなるスープを作り始めました。
「このスープで少し大きくなれば、親を探すにしても役に立つだろう」
クラータたちは良かった良かったと一安心しました。そしてその日の晩はタマおばあさんの家に泊まりました。大きくなるスープをたくさん飲んで小さな宴会のようでした。もちろん小さくなるスープも飲みました。クリケットがたくさん飲むと大きくなってとまらなくなるからです。
少し大きくなった子猫はお父さんとお母さんの名前を思いだし、次の日には森の掲示板に出されていた人探しの看板からお家が分かりました。子猫の真っ黒なお母さんは子猫と一緒になって泣いて喜びました。
おわり
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