第26話 風の帽子とピケット
「風の帽子とピケット」
風がぴゅうぴゅうと吹き鳴ります。落ち葉はカサカサと音をたてて舞い踊ります。もうすぐクリケディアにも冬が訪れるでしょう。
そんな風の強い日にちいさないきもの、クリケット・カラアリ・ピケットは
「ううっ、寒くなってきたなあ。こんなに風が強いと飛ばされそうだ」
ピケットはやっとの思いでポポッコの家に着きました。ポポッコの家は海硝子で飾り立てられた美しい窓をしています。
「やあピケット、いらっしゃい。風が強くて大変だったろう」
「ポポッコ、本当にひどい風だよ。家に着く前に飛ばされちゃうかと思ったよ」
二匹はつぶつぶ話しながらお茶を楽しみました。しかし風は強くなるばかりで一向に止む気配がありません。
「困ったなあ、これじゃあ帰れないよ」
「別に泊まっていくといいよ。ああそうだ、あれを使うのもあったな」
ポポッコはそう言うとごそごそと帽子掛けをあさります。そうして取り出したのは、クリケット・カラアリの頭にすっぽり収まる形の、丸く柔らかな緑の帽子でした。きれいな青い飾り羽もついています。
「これは風の帽子と言ってね、これをかぶっている間は風の影響を受けないんだよ。これを貸してあげるよ」
「そんなすごい帽子どこで手にいれたの?」
「普通に帽子屋で売っていたよ。でも特別な作り方をするから数がないんだって」
なんでもその帽子は、強い強い風の中でだけ作られるのです。強い風と糸を編み針をつかって、一目一目に風を編み込ませて作るそんな帽子なのです。そうしてできるのは風の中必死になって、やっと一つという具合なので、帽子屋にもなかなか出回らないのです。
「そうなの、大変なんだね。この飾り羽はなにかな」
「この飾り羽を右に回すと温かく、左に回すと涼しくかんじるんだ。この羽根も雨林に棲む鳥からとってこないといけないからなかなか手に入らないんだって」
「こんな帽子を借りるのは悪いよ」
「いいんだ、こんな日くらいにしか使わないんだし、ぜひ使ってくれよ」
こうしてピケットはポポッコから借りた帽子を使って家に帰りました。飾り羽を右に回し、ポカポカと温かなそよ風を感じながら今度はいつポポッコの家に行こうと考えながら帰りました。
おわり
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