第24話 帰ってきたピケット

「帰ってきたピケット」


 その日の夜は、夜光街に行った人たちが帰ってくる夜でした。もちろん、夜光街に行ったまま帰ってこない人もいたりするのですが、クリケット・カラアリ・ポポッコは友人のカラアリ・ピケットが帰ってくるのを楽しみに待っていました。

「夜光街からなにかお土産があるって言ってたけど、なんだろう。楽しみだなあ」

 すると夜空の彼方から、キラキラと光る風にのって、数匹のクリケットたちが夜光街から降りてきました。その中にはもちろんピケットの姿もあります。

「ポポッコ、ただいま!」

「やあ、ピケット。おかえり!」

 地面に降り立ったピケットにポポッコが駆け寄りました。二匹で手を取り合って再会を喜びます。

「手紙をありがとうピケット。夜光街はどうだった?」

「最高だったよ! 途中でお金が無くなっちゃって働いたりもあったけど……。あ、そうだ! 夜光星座屋ってところでね、星座を作る仕事もしたんだよ。クリケディアにも見えるって言ってたけど、ポポッコわかったかなあ」

「ああ、星がやたらに光る日があったんだよ。きっとその日だね」

 二匹で夜光街の話をしながらわいわい盛り上がります。夜光酒のきらきらと輝く口当たり、光り星のビスケットのぱちぱちとした食感。食べ物の話が多いのはやっぱりピケットだからでしょう。しかし仕事の合間に見に行った、灯りをともすたびに影の形の変わるランプは格別に面白かったようでした。目をきらきらさせて夜光街の様子を語るピケットを、ポポッコは楽し気に頷きながら聞きます。

「あっそうだ、ポポッコにお土産を買って来たんだよ。すっかり忘れてた」

「話だけでも十分楽しかったから別に良かったのに」

「ううん、やっぱり夜光街まで行ったんだもん。お土産は大事だよ」

 ピケットは持っていた荷物を下してごそごそ探りました。

「食べ物がいいかなと思ったけど、やっぱりポポッコにはこれがいいかなって」

 ピケットがとりだしたのは小さな箱でした。ポポッコがその小さな箱を開けると中には小さな小さなクリケットが四匹入っていました。よくみるとその小さなクリケットたちはポポッコとピケットと、そして先生といなくなってしまったピチットだったのです。

「ピケット……これは?」

「これはね、開けた人の一番大切な思い出をしまっておける箱なんだって。ポポッコはやっぱり昔のことだったね」

 箱の中では先生に歌を習っているポポッコたちがちぃちぃと鳴いておりました。それを見たポポッコは泣き出しそうになりました。

「ポポッコはピチットのこと忘れるのが怖かったんでしょう。だからこれを選んだんだけど……いやだった?」

「いや、ピケット。本当にありがとう。本当に、嬉しくって、嬉しくって……」

 ポポッコはピケットに抱き着きました。ピケットの黒い体に涙が染みます。

「ピケット、戻ってきてくれて本当にありがとう」

「何言ってるんだいポポッコ。当たり前じゃないか」

 二匹はしばらくそうしていました。そのあとはまた、ピケットから夜光街の話を聞きながら過ごしました。小さな思い出箱はポポッコの宝物になりました。


おわり

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