第23話 夜行星座とピケット
「夜光星座とピケット」
空に浮かぶ町、夜光街はいつまでも昼間のように騒がしい夜で、とても楽しいところです。楽しすぎてお金を使いすぎてしまったクリケット・カラアリ・ピケットはしばらくの間、夜光街の喫茶店で働くことになりました。ピケットは真っ黒で小さな体でくるくると一生懸命に働きます。そしてお金をもらえるとまた夜光街の楽しいお店で使ってしまうのでした。
「まいったなあ、夜光街は楽しすぎるよ」
ピケットは灯かりをつけるたびに影の形の変わるランプを見ながらため息をつきました。このままでは友人のカラアリ・ポポッコにお土産を持ってクリケディアに帰れそうにありません。ピケットは喫茶店の店主さんに尋ねます。
「店主さん、すみませんがもう少し稼げる仕事ってないですか?」
「そうだねえ、クリケットの皆さんにできて稼げる仕事となると……」
店主は新聞の求人広告を見てくれました。そしてそこからいくつか拾って、ピケットに紹介してくれました。
「夜光星座を作る仕事なんかどうだろう」
「夜光星座? なんですかそれ」
「行ってみればわかるよ。そこの角を曲がってすぐ看板が出てるから」
ピケットはさっそく店を出て角を曲がります。すると『夜光星座つくります→』の看板があったので、その通りに進んでとうとう夜光星座のお店に着きました。扉をノックすると一匹の灰色の猫がでてきました。
「こんにちは、求人広告を見てきました」
「はいこんにちは。ここは夜光星座を作る店ですよ。夜光星座はご存じですか」
「わかりません。教えてください」
「夜光星座は作る人の楽しい思い出や嬉しい記憶を星座にして打ち上げるんですよ。クリケットさんにならぴったりの仕事ですね」
夜光星座屋の猫は丸くて大きな機械のところにピケットを連れて行きました。機械に手をあてるとそこからぴゅうと光が立ち上って夜空にピケットの姿が星座となって浮かびました。夜光酒を飲んで楽しく踊っている姿です。
「へえ、これはすごいや」
「この星座は夜のクリケディアにも届きますよ」
「本当に? じゃあポポッコも見てるかなあ」
ピケットは次々と機械に手を当てました。夜光街での思い出のほかにクリケディアでポポッコと楽しく遊んだ記憶も星座になります。その様子は夜光街の人びとにもたいそう受けました。お金がたくさん手に入り、ポポッコへのお土産も買えました。
そのころポポッコは夜空を見上げておりました。今日の星はいつもよりも輝いて見えて、なんだかピケットが笑っているように見えると思いました。
おわり
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