第22話 手紙とポポッコ

「手紙とポポッコ」


 空に浮かぶ町、夜光街に着いたクリケット・カラアリ・ピケットが目にしたのは数々のお店でした。『夜光水の香水瓶』、『夜光酒あります』、『光り星のビスケット』などなど……。そのどれもこれもがピケットの目を引きます。ピケットは大きな目をらんらんと輝かせました。

「うわあ、すごいや。想像以上だよ」

 道行くどの人も楽しそうに騒いでいます。夜光街の空には月が浮かんでおりました。

「おや、そろそろ月も沈むころだと思ったけど」

「君、夜光街は初めてかい?夜光街では月が沈まないんだよ」

「そうさ、ここではずっと夜なのさ」

 ずっと夜だというのに昼間のように明るい夜光街のように、街の人びとは明るく話しかけてきます。ピケットはどんどん楽しくなって、お酒を飲んだり踊ったり、街の住人のように楽しく騒ぎます。

 そのうち、ピケットはあるお店に気づきました。その売り物は夜光街に来れなかったポポッコのために送るにはとても良いものだとピケットは思いました。

「ねえおじさん、これをクリケディアにいる友達に送りたいんだけど大丈夫かな」

「クリケディアだね、今なら近いからすぐに送れるよ」

 ピケットはさっそくそれを買い、おじさんと一緒にポポッコに送る準備をしました。

「これでよし、ポポッコはきっとびっくりするだろうなあ」


 ピケットを夜光街に見送ってからあくる日の昼、カラアリ・ポポッコの元に手紙が届きました。薄緑の封筒に赤い封蝋で閉じられた手紙でした。

「ふうん、こんな手紙をくれる友達なんていたかな」

 封蝋の印にも見覚えがありません。けれども宛名には確かに『クリケディア 待宵沼近く クリケット・カラアリ・ポポッコ様』と書かれていたのでした。封蝋をはがし、中の手紙を開くと、そこには小さなピケットがおりました。

「おや、ピケット! どうしてこんなところに?」

 ポポッコが聞き終わる前に小さなピケットはしゃべりだします。

『やあポポッコ。僕はいま夜光街からこの手紙を書いているよ。今度お土産を持って帰るから楽しみにしててね!』

 小さなピケットはクルクルと踊りながら小さくなってパチンとはじけて消えました。あとには普通の手紙に書かれた文字だけが残ります。ポポッコが驚いてもう一度手紙を閉じて開くと、また小さなピケットがしゃべりだしました。

「なるほど、これが夜光街の手紙か。おもしろいもんだなあ」

 ポポッコは何度もその手紙を閉じては開いて、ピケットが帰ってくるのを楽しみに待ちました。


おわり

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