第13話 約束とピケット

「約束とピケット」


「なにか約束をしないかいポポッコ」

「君はまた突然に、いったい何に影響されたんだい?」

「君ほどじゃないじゃないか」

 涼しい風が温かい日の中を通り過ぎる昼のこと、一匹でお茶を楽しんでいたクリケット・カラアリ・ポポッコのもとに突然カラアリ・ピケットが真っ黒で尖った口先を突っ込んで言いました。ピケットがなにかに影響を受けることは実はそこまで多いことではありません。むしろポポッコの方が読んだ本に影響されてなにか唐突に育てたり作ったりすることが多かったので。

 ですがその日はピケットの方から突拍子もないことを振ってきたのです。

「人間ってのは何かと約束ごとをして面白そうだからさ、何でもいいから約束をしてみたくなったんだ」

「じゃあ明日またここで会おうじゃないか。これって約束だろ」

「ううん、そうじゃなくって。もっと大切な約束だよ」

「よくわからないなあ」

 ポポッコは飲んでいたお茶を置いて頭をポリポリかきました。空を見て少し考えて、ピケットの方に向き直って言います。

「先生から習った、外の世界に出ないとかは? 大切な約束だろう」

「それは決まりやルールだろう。僕がしたいのは二人だけの秘密とか、そういうものを言っているんだ」

「君にしては難しいことを言うなあ」

 風がそよぎ、二匹の間を通り抜けます。約束を作るために色々考えてみますが、何も浮かびません。しばらくして、ポポッコは口を開きます。

「じゃあさ、こういうことにしようよ。なにか約束をすることを考えついたら、ちゃんと互いに言うんだ。そういう約束をすれば当面の間はいいだろう」

「約束を思いついたら互いに教え合うのが約束?」

「そうさ、それは誰にも言っちゃいけないんだよ」

 ピケットは小さな頭をぐるぐる動かして考えました。それはとてもいい考えのような気がしてきます。そしてもうそれ以外のことは考えられなくなりました。

「いいね! それはいい約束だよ」

「そうだろう、じゃあ約束だ」

 二匹は手を取り合って、約束を交わし合いました。ポポッコはどうもなんだかピケットを丸め込んでしまったような気がして少し考えましたが、やっぱり面倒になって考えるのをやめてしまいました。そしてその日は二匹でお茶を飲んで過ごしました。


おわり

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