第6話 グラーモとピケット

「グラーモとピケット」


 ある日、真っ黒で口の尖ったクリケット・カラアリ・ピケットとカラアリ・ポポッコが歩いていると、白くふわふわとした毛並みのクリケット・グラーモを見つけました。グラーモはカラアリやエガアイと違って、よく友達と群れて過ごすものなのですが、ピケットが見つけたグラーモは一匹だけでした。

 おろおろと困った風にあっちこっちを見渡すそのグラーモを見て、ピケットとポポッコは顔を見合わせ、彼に話しかけることにしました。

「こんにちは、僕はカラアリ・ピケットとポポッコ。君の名前は?」

 ピケットは礼儀正しく問いました。

「こんにちは、ピケットさん。私はグラーモ・クラータですよ」

 クラータも礼儀正しく答えます。ふわふわの白い毛を綺麗になでつけ、黒い口ひげをつけているクリケット・グラーモ・クラータは、すこし困ったふうでした。

「どうしたの? 他のみんなはどこに行っちゃったの?」

「それがどうもわからないのです。木の実を食べていたらいつのまにかひとりぼっちになってしまったんです」

「それならご友人を見つけるのは簡単ですよ。」

 ポポッコはステッキをトン、と一突きして言いました。

「今まで食べてきた木の実の跡をたどれば、はぐれたとこに付きます。あなたの仲間も探しているでしょうからすぐに見つかりますよ」

「さすがだね、ポポッコ」

「ありがとうございます。ポポッコさん」

 それからが大変でした。木の実の食べた跡をたどるうちに食べ残した木の実を食べたり、新しい木の実を見つけて道をそれたり。ポポッコが二匹をぐいぐい引っ張らなければとうてい真っ直ぐに戻ることなどできなかったでしょう。

 すると少し遠くから三、四匹のクリケット・グラーモがぞろぞろとこちらに向かってきます。

「おや、みんな! 私を探してくれていたのかい?」

「まったくクラータときたら、いつもはぐれてばかりで」

 がやがや、がやがや、大勢のクリケットが集まって、まるで小さな宴会のようです。

「よかったねえポポッコ、仲間が見つかって」

「仲間の方も心配しただろうに、あの調子だとまたいつはぐれるかわからないぞ」

「そうしたらまた探してもらえるよ」

「そうだねピケット」

 二匹のカラアリはグラーモたちと分かれて、木の実を食べ始めました。空紫の熟した青い実や、銀空豆なんかを食べていると、なるほど、ついはぐれてしまうのもわかる気がするのでした。


おわり

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