第5話 わたあめの実とピケット

「わたあめの実とピケット」


 ある晴れた日、雲一つない青空のもと、真っ黒な体につんと尖った口をしたクリケット・カラアリ・ポポッコが言いました。

「ねえピケット、今日はわたあめの実を食べに行かないかい?」

「そうだねえ、こんな晴れた日は、きっと美味しいわたあめが食べられるよ」

 友人のカラアリ・ピケットは賛成しました。わたあめの木は、今日のようにうんと晴れた日にしか実をつけないのです。二匹は早速、わたあめの木のあるところまで走っていきました。

 わたあめの木には、雲のようにほこほことしたわたあめがたくさん生っています。もういく匹ものクリケットたちが集まっていました。ピケットとポポッコは木の高い所に座ると、ふっくらしたわたあめを食べ始めました。

「うん、これはおいしいねえ。お日様の味がするようだよ」

「わあ! これは雷が少し入ってたよ! ピリッと来た!」

 のんびりと食べていたポポッコは少し体が軽くなるのを感じました。

「おお、きたね。わたあめの実はこの体が軽くなるのが気持ちいいんだ」

「うん、でもポポッコ。ぼくはなんだか、体がどんどん浮いてきたように思えるよ」

 さっきからどんどん食べていたピケットは、体がふわふわと浮いていくのでした。ポポッコはステッキを取り出してピケットの手に引っ掛けました。

「おやまあ、君と来たらまたバカやったもんだね」

「バカとはひどいや。ちょっと食べすぎただけなのに」

「ちょっと食べすぎると体が浮いて飛んでっちゃうなんてみんな知ってることだよ」

 ポポッコはピケットをステッキに引っ掛けたまま、ひょい、とわたあめの木から飛び降りました。ふわふわと軽いピケットが一緒なので簡単に降りられます。

「これは雨林あめばやしにいってわたあめの成分を落とさないといけないね。」

「ええ! 僕、雨林は嫌いだな」

「好きとか嫌いとか言ってる場合かい。さあ連れてってやるから」

 ポポッコのステッキにふわふわ引っ張られていくと、雨がザアザア降っている林に着きました。ちいさなクリケットたちには大粒の嵐で川が降り注いでいる見えました。

 ポポッコはステッキにしがみついたピケットをぐいっと雨林に突っ込みます。

「ほら、ステッキをちゃんと持って、流されちゃうぞ」

「絶対、絶対はなさないでね!」

 ざあざあ、ざあざあ。雨の中じっとしていると、次第に体が重くなって、地面に足がつくようになりました。早速ピケットは林から飛び出して体をブルブル震わせました。

「ああ、びっくりした。さ、もう一度わたあめの実を食べに行かない?」

「君はまだこりてないんだね、いいけど今度は食べすぎないでくれよ」

 二匹はまたわたあめの木に走っていきました。

 そして結局、また二匹は雨林に行くことになったのでした。


おわり

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