第25話
「二階堂くん」
「ん?」
「今日は一緒に来てくれてありがとう」
「山田がうるさかったから来ただけ」
「それでも、ありがとう。一緒に夏の思い出作れてよかった」
帰り道。山田くんはのりちゃんを、二階堂くんは私を家まで送ってくれることになった。
そんなに時間も遅くないし帰れると断ったのだが、
「ダメだよ嘉神さん。女の子は夜1人で外を歩いちゃいけません」
とお父さんみたいなことを言い出して聞かなかった。
これ以上断るのも申し訳ないので今日はお言葉に甘えることにした。
「そうだ、ちょっと会わせたい子がいるんだけど付き合ってくれない?」
「別にいいけど」
そのまま私の家の自転車置き場まで一緒に来てもらう。
前から会わせたいと思ってはいたんだけど、気まぐれだからなかなかタイミングが合わない。
しかし、今日の天使はご機嫌がよかったみたい。
「あ、いた!カリィー、おいで」
自転車の前輪に体重を預けて寝ていた天使に声をかける。
そのままいつも通り抱き上げ、彼の近くに寄せる。
「二階堂くん、猫大丈夫?」
「大丈夫。飼ってんの?」
「ううん。いつも私の自転車のとこにいるの。多分野良だと思うんだけど、勝手にカリィーって名付けたの。カリィー、友達の二階堂くんだよ」
そう言うとカリィーは彼の方を向き、彼の言葉で挨拶をした。
「あ、二階堂です」
挨拶が聞き取れたのか、二階堂くんも軽く頭を下げながら挨拶をする。
「抱っこ、してみる?噛んだり引っ掻いたりしないから大丈夫だと思うよ」
二階堂くんがそっと手を差し出すとなんの躊躇もなく彼の腕の中へすっぽり収まる。
何だかその顔がしてやったりと言わんばかりの顔だったので、猫相手にヤキモチを妬いた。
「大人しいんだな」
「カリィーはうちの家族も全員抱っこできるくらい警戒心がないんだよね。ま、ご機嫌次第なところもあるけど」
「ま、それが猫だしな」
そう言って二階堂くんはしゃがみ込み、カリィーを解放してあげた。
「会わせたい人って、猫のこと?」
「そう。カリィーも友達みたいなものだから。紹介したかったの」
すでにカリィーはフラフラとどこかへ行ってしまった。
だけど、友達に友達を紹介できて嬉しかった。
きっとあの子なら、私が応援してと頼んだ時の人だと分かってくれただろう。
「ごめんね、大したことじゃなかったのにここまでついてきてもらっちゃって」
「放って帰ったらまた山田に何言われるかわかんない」
「お父さんみたいだったもんね」
「さすがに引いたわ。言われなくても送ってくだろ普通」
「まーなにはともあれ今日は本当に楽しかった。ありがとう」
「お礼言われること俺は何もしてない」
「はいはい」
なんでここまでお礼言われることを拒否するのかわからないけど、彼の真面目なところがそうさせてるのかと思うと改めていい人だなと実感する。
「嘉神」
「ん?」
「もうちょっと、時間ある?」
「うん、大丈夫だけど」
「あの公園で、ちょっと話さない?」
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