第20話


そんなとき起きた、夏休み初日の事件。






他の人が聞いたら大したことないんだろうけど、私にしたら大事件なのだ。










連絡先を人伝に伝えて、でもそこから何も連絡がなくて。






連絡を待ち続けた人から連絡先知らない、とまで言われて。






もう何がどうなってるのか、いろんなことがこんがらがって爆発しそうだった。
























テストが始まるとみんな忙しく、4人で会う回数も減っていた。






山田くんやのりちゃんがその後の私たちの進展を聞いてくることもなかったので、連絡を今だにもらえていないことを言えなかった。














そしてそのまま、夏休みが始まってしまったのだ。
















































あの日以降、彼は言葉通り、私を見かけると声をかけてきた。






かくいう私も、彼に会えるかもしれないと期待しながらなるべく同じ時間にコインランドリーに行っているのだから、タチが悪い。






コインランドリーからの帰り道、二階堂くんが買ってくれたアイスやお菓子、ジュースを2人で分けながら他愛もない会話をする。






今日来たお客さんの話、課題をどこまで進めたかの話、近所の猫の話。






自転車を彼が押してくれることも、最初こそ遠慮していた私もいつしか自然とハンドルを渡すようになっていた。






彼がコンビニ袋を私に渡し、それを受け取る。それと同時に自転車の運転を代わってもらう。






これが私たちの“帰り道のルール”になっていた。










ただ、お互いにあのことには触れないまま、時間だけが過ぎていった。






この時間だけでも、十分楽しい。






この夏休みでたくさんの二階堂くんを知ることが出来ている。






連絡先なんか知らなくても、いいのかもしれない。


























でも。






やっぱり、気になってしまう。






連絡先を山田くんからもらっているはずなのに、連絡をくれないこと。






それに、連絡先を知らないと言ったこと。






理由を、ちゃんと聞いてみたい。






だけど、やっぱり本当のことを知るのが怖い。






変わりたいのに、どうしても勇気が出ない。
















でもやっぱり、このままは嫌だ。






明日また会えたら、その時はちゃんと聞こう。






何を言われても、ちゃんと二階堂くんの気持ちを尊重しよう。






大丈夫。今日までたくさん話してきたんだもん。






二階堂くんは、人を傷つけるような言葉を選ぶ人じゃないはず。






きっと残念な返事だったとしても、ちゃんと理由を教えてくれる。


























彼を信じて、明日ちゃんと話そう。






そう心に決めて、目を閉じた。

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