第19話


「え?香燈ちゃん二階堂くんとまだ連絡先交換してないの?」












3人での勉強会中、のりちゃんがいつもより目を見開いて驚いた。












「のりちゃん、声が大きいよ・・」








「あ、ごめん・・。でももう交換してるかと思ってた」








「連絡先は知りたいんだけど、聞かれてから時間も空いちゃったしどうしたらいいかわからなくて・・」








「ちょっと気まずい、みたいな?」








「うん、二階堂くんからも何も言ってこないし、私も話せなくて・・・」














そっかー、と腕組みをして考えるのりちゃん。






すると、トイレから帰ってきた山田くんが会話に合流する。












「何の話?」








「香燈ちゃんと二階堂くんの話」








「あ!そのことで俺いい案思いついてたんだよね!テストで忘れてた!」








「忘れる程度のものなら、絶対いいことじゃないでしょ」








「まぁまぁ一旦聞けって。嘉神さんがまだ二階堂の連絡先聞けてないって話っしょ?」








「うん」








「それでさ、俺も何となく一回二階堂に探り入れたわけ。どうなの〜?みたいな」








「山田くんそういうの絶対下手くそじゃん」








「俺の批判しか言えないのかよ小鳥遊は。で、いつもだったらそういうの無視する奴なんだけど、その日は違ってさ」








「違う?」








「多分俺しかわからないくらいの変化なんだけど、一瞬寂しそうな感じだったんよ。何も言わなかったけど、俺はその表情を見逃さなかったわけ。で、俺の予想としては嘉神さんに連絡先をほしいって言ったのに今だにもらえてない現状に若干のショックを受けてんじゃねーかなって」








「遠回しに拒否された、って思ってるってこと?」








「そうそう。だって二階堂と嘉神さんって授業も被ってないから昼飯の時くらいしか会わないだろ?昼飯のときもあんま喋ってねーし」








「確かに山田くんがずっと喋ってるもんね」








「いやお前も喋ってるだろ!」














・・・寂しそうな表情。






私、遠回しに二階堂くんを傷つけてしまっているのかな。






だとしたら、申し訳ない気がする。














「俺は二階堂と嘉神さんがもっと仲良くなったらいいのにって思ってるから普通に応援したいって思ってんの。




で、俺になんかできることねーかなーって考えてたらあったんだよね、1つ」














確か前に放課後の教室で話した時も、『応援したい』って言ってくれてたな。










「山田くんのことだから、そんなに大したことじゃないでしょ?」








「いや、今の嘉神さんは俺にめちゃくちゃ感謝することになるかもよ?」














今の私が?






一体、どんなことなんだろう。












「勿体ぶらないで、早く教えてよ」








「俺が二階堂に嘉神さんの連絡先を送ればいいんじゃね?って思って」








「山田くんが、私の連絡先を二階堂くんに伝えてくれる、ってこと?」








「そう。嘉神さん自分から連絡先渡せないっしょ?」














こんなこと、人に頼んでいいのだろうか。






二階堂くんは自分から聞いてくれたのに、私は人伝でそれに応えるなんて。






でも、山田くんの言う通り自分から渡す勇気を持ち合わせていない。






進展させるためにも、今はその提案に甘えさせてもらった方が賢明かもしれない。






それを聞いていたのりちゃんも、










「香燈ちゃんが二階堂くんに教えたいって思ってるならいいと思うよ」と、








あくまでも私の気持ちに寄り添った返答をしてくれた。








「当然、俺も嘉神さんに無許可では教えねーよ。嘉神さんがその方が楽って言うならの話」








「だって香燈ちゃん。どうする?」














山田くんとのりちゃんの双方から視線を向けられる。






本当は自分から言った方がいいことはわかってる。だけど、どうしてもその勇気が出ない。






でも、私がウジウジしているこの瞬間も二階堂くんに寂しい思いをさせているのなら。
































「山田くん。本当は自分で伝えたいんだけど、今はどうしても勇気が出なくて。私の連絡先、二階堂くんに伝えてもらってもいいですか?」




































「了解!ちゃんと伝えておくわ!」








山田くんは快く快諾してくれた。






のりちゃんも、「よかったね」と笑ってくれた。






これで、今より少し前に進める。






この時はそう思っていた。












それなのに。




















結局、夏休みを迎えてもなお、二階堂くんからの連絡を私の携帯が知らせることはなかった。

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