第18話
夏休みを目前に、周りが楽しそうな話題で埋め尽くされる。
しかし、学生の私たちにはその前に乗り越えなければならない高い壁があった。
「俺今度のテスト、マジで無理かもしれない・・・」
いつもの4人でお昼を食べながら、この世の終わりを迎えたような顔をしている山田くん。
きっと、テスト前はいつもこの顔になるんだろうな。
「山田くんが無理じゃないテストって今まであるの?」
「だから小鳥遊は俺を何だと思ってんの?」
「勉強不得意そうな人」
「そこまで言っておいて少し優しさ残すなよ」
お前はいつも遠慮がねぇな!とかなんとか言って2人で騒いでいる。
はじめこそ止めていたけど、今はこのやりとりが楽しいんだろうなと気づき放置している。
そんな騒音の中、相変わらずマイペースにパンを食べてる二階堂くん。
うるさい環境でも寝れるタイプかもしれない、なんてどうでもいいことを考えていたとき。
山田くんをねじ伏せたのりちゃんが提案する。
「放課後、残れる人だけで勉強しない?楽しい夏休みを過ごすためにも。どう?」
「まじ?!俺それ毎日参加するわ!!」
「先に言っておくけど、色々聞いたりしてこないでね、集中できないから」
「俺の夏休みはどうなるんだよ!?」
「そんなの、自分でどうにかしなよ」
またしてものりちゃんに惨敗した山田くん。
言葉は強いけど、きっとのりちゃんは山田くんを心配しているのだろう。
「香燈ちゃんは?来れそう?」
「あ、うん。私も参加したいな」
「それじゃあ決まりね。二階堂くんは?」
急に心拍数が高まった。
今はこうやってみんなでお昼を食べる時しか顔を合わせない。
もし勉強会に参加してくれたら、今よりもう少し話す機会が増えるかもしれない。
「あー、俺バイトある」
「へー、二階堂くんバイトしてるんだ。何のバイト?」
「コンビニ」
二階堂くん、バイトしてるんだ。すごいな。まだ1年生の夏前なのに。
私が知らないだけで、結構アルバイトしてる子多いのかな?
でも、放課後話せる希望は消えちゃったな。
最近感情がジェットコースターみたいに動くから少し疲れる。
「じゃあ私と山田くんと香燈ちゃんの3人だね。もし二階堂くんもバイト休みの日とかあったら来てよ」
のりちゃんをチラッと見て、頷く二階堂くん。
あの日以来、変に意識をしちゃってまともに喋ることが出来ないでいる。
二階堂くんから話かけてくることもない。
もどかしい時間がしばらく続いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます