第6話



「よいっしょ・・重・・・」








袋にパンパンに詰められた洗濯物をかごから引っ張り出して店内へ入る。






自動ドアが開くと、途端に隙間から冷気が漏れ出し思わず溜息が零れた。






夜とはいえ、まだまだ蒸し暑い。少し動いただけでじんわり汗が肌に膜を張る。












壁に沿って並んでいる洗濯機のなかで、なんとなく真ん中を選んだ。






洗濯物を放り込み、洗剤を入れ、小銭を入れる。






水が注がれ、ウィン、ウィンと機械的な音がし始めた。








「よかった。動かせた。」








無事動かせたことに安堵し、無造作に置いてあるボロボロの椅子に腰掛ける。






そのまま携帯を取り出したが、なんだか嫌になってまたポケットへ戻した。






なにをするでもなく、ただしばらく目の前で回り続ける洗濯機を見つめた。


























洋服やタオル、いろんなものが絡み合いながら回る。












時折水を叩きながら、さらにいろんなものを巻き込んでいく。












一度絡むと、小さな洗濯槽の中では自然にほどけることは難しい。




























思わず、今の自分を重ねてしまった。








今の私も、いろんなことが絡まってしまっている。








気づかないうちにどんどん絡んで、たまに打ち付けてくる水しぶきに、息が止まりそうになりながらもなんとか耐えている。








この小さな世界で絡まらないように生きるなんて、誰ができるのだろうか。








































そんなことを考えていると、終了を知らせるブザー音が鳴り響き、我に返る。






フタを開け、大きな塊となったものを1つ1つほどきながら持ってきた袋へ戻していく。






水分を含んでいるせいか、固く結ばれてしまっているものもあった。








「全然取れないんだけど・・・」








額にやんわり汗をにじませながら格闘すること数分。






なんとか全てを袋に戻すことができた。
















「・・・!っ・・重すぎなんですけど・・・」








勢い良く肩にかけたせいか、反動で身体が持ってかれそうになる。






必死に踏ん張りながらいろんなチラシが貼られている扉をくぐり自転車へ向かった。










ここに来てからそんなに時間が経っていないはずなのに、外はすっかり暗闇だ。










「こんなの毎日やってたら、いつかどっかを痛める気がする・・」








最後の力を振り絞り、自転車の前かごに乗せて、一息つく。








たったこれだけの動作なのに、すでに筋肉痛になりそうだ。








肌にあたる夜風が生ぬるくて、鳥肌が立った。


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