第5話



「あ、カリィーだ」








いつも私の自転車の近くで休んでいる近所の猫に声を掛ける。






本当の名前はわからないので、勝手に名前をつけた。








「カリィーは夏休みどう過ごすの?私はしばらく洗濯当番になっちゃったよ」








私の足元にすり寄ってくるカリィーを撫でながら、彼に話を聞いてもらう。








「でもね、ずっと家にいてもつまらないし、少しは気晴らしになるかなって。私、夏の夜ってちょっと好きなの」








彼は私の話に独自の言葉でしか相槌をしてくれない。






だけど、今はそれが心地いい。






このまま彼に話を聞いてほしい気持ちを抑えて、洗濯物がぎゅうぎゅうに詰め込まれた前かごを押さえながら自転車に跨る。








「じゃあ行ってくるね。お互い夏を楽しもうね」








そう声を掛け、私は勢いをつけてペダルを漕ぎ出した。






























5分ほど走ると、蛍光灯がチカチカしている目的地が見えてきた。






所々電気が消えていて、正しい店名がわからない。






それに、夜だから虫もたくさん集まっている。








自転車を店前に止めて、中を覗く。






自動ドアの中には、誰もいなかった。






この時間は比較的空いているのかもしれない。






当分の間は毎日来るだろうからこの時間を狙って来よう。

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