第34話 バーベキュー

「じゃあ、焼こう!」

 大翔が魚とイカをバーベキューの台に乗せた。

 じゅうっと音がして、魚とイカが焼けていく。

「味付けは?」

「そこにある壺に入った塩を使ってください」

 ミナが指さした先に小さな青い壺があった。

 俺はこっそり、その壺の中身をつまんで、なめてみた。なんともいえないしょっぱさと苦さが口の中に広がる。


「大翔、お前、塩持ってるか?」

「うん」

「ここに用意されている塩は苦くてまずいぞ」

「それじゃ、部屋から塩を取ってくるよ」

「ありがとう」


 大翔は駆け足で部屋に戻って、少しした後塩を持って降りてきた。

「さあ、皆さん、そろそろお魚が焼けてきましたよ。お塩を振って食べてくださいね」

 ミナが言うと、俺たち以外の客は青い壺から塩を取り、焼けた魚やイカにそれを振って食べ始めた。

「美味しい」

「さすがにとれたては違うな」

 お客さんが口々にバーベキューをほめている。


 俺と大翔は、持ってきた塩を魚に振って食べた。

「美味しい!」

「ああ、うまい」

 俺たちは、青い壺に入った塩も試してみた。

「うーん、こっちはやっぱり、ちょっと苦みとえぐみがあるな」

 俺が言うと、大翔も頷いた。


「あら? 大翔さんと健さんは違う塩を使ってるの? 味見していい?」

 ミナが俺たちに気づいて、声をかけてきた。

「ええ、どうぞ」

 大翔がイワシに持ってきた塩をかけてミナに渡した。

「いただきまーす。……んんっ!? なにこれ、美味しすぎる!! なんでこんなに塩味がくどくないの?」

 ミナは目を丸くしている。


「たぶん、塩作りのときに、いらない成分をとりのぞいていないんだと思います。今日は僕、塩を作るつもりだから、ミナさんにも僕たちの塩の作り方を教えましょうか? もちろん、興味があればだけど」

「え? いいの!?」

 ミナと俺たちは、ミナが食事の片づけが終わったら塩づくりをする約束をした。


「塩作り、がんばろうね、健」

「ああ」

 俺たちは次々と焼けた魚介類を口に運びながら、その美味しさを味わった。

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