第33話 地引網
海に着くと、レイモンドは大きな杭を浜辺に打ち込み、網の端をそこに結び付けた。
「皆さんは、この網を抑えていてください」
そう言い残し、レイモンドは小さな船に乗った。船は沖の方に少し進むと、網を広げ海に投げた。固定していないほうの端を持った船が、ぐるりと回りながら浜辺に戻ってくる。
「さあ、皆さん今度はこっちに来てください。網を引き揚げます」
網はとても重くて、この人数で引き上げられるか俺は不安になった。
「重いね、健」
「ああ、そうだな、大翔」
俺たちは必死になって網を引き揚げ続けた。
しばらくすると、海の中で網の中にとらえられた魚たちの姿が見えてきた。
「あ! いっぱいいるね!」
「すっごい!」
他のお客さんたちも歓声を上げている。
「さあ、もう一息です! 頑張りましょう!」
レイモンドは大きな箱を三つ持ってきた。
みんなで力を合わせ、網を引き揚げると中にはたくさんのキスやイワシやイカに似た、小さめの魚たちが捕れた。
「さあ、箱に詰めて」
「うわ、ぬめぬめする」
「逃げるな!」
お客さんも俺たちも、大騒ぎをしながら、とれた魚を箱に移した。
「それでは、箱を持って宿に戻りましょう。申し訳ありませんが、お手伝いをお願いします」
レイモンドの指示で、俺たちは魚の入った箱を持ちホテルへと戻っていった。
「ただいま! ミナ、魚が捕れたよ!」
「おかえり、父さん! 皆さまお疲れさまでした!」
ミナは魚の入った箱を受け取ると、キッチンに持って行った。
「さあ、みなさん、お手伝い有難うございました。食事の準備が出来るまで、お休みください」
レイモンドは俺たちにそういってから、キッチンに入っていった。
「朝食、楽しみだね」
大翔が汗をぬぐいながら、俺に言った。
「ああ。でも、その前にシャワーを浴びないか? 汗でべとべとだ」
「そうだね」
俺たちは部屋に戻り、順番にシャワーを浴びて、水を飲んだ。
「皆さん、お待たせしました。バーベキューの準備が出来ました! 外でお待ちしております」
レイモンドの声を聞き、俺たちは部屋を出た。
「バーベキューなら、きっとおいしいよね? 健」
「まあ、そうだといいな」
玄関前には、バーベキューの台が三つ設置され、脇に置かれたテーブルには下処理がされた魚やイカのようなものがたくさん並んでいた。
「さあ、どんどん焼いて食べてください!」
レイモンドとミナの声が明るく響いた。
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